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狩られる 2

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ニヤニヤと笑う底気味悪い視線を受けながら、体を覆う最後の1枚を脱ぎ捨てる。

「まだ若いというのは素晴らしいな。何も変わらないじゃないか・・・いや、より一層美しくなった」

同じ様に一糸纏わぬ長澤が近付き、首から臍までじめっとした手の平が滑り降りる。

ゾワッと全身が粟立ち、吐き気すらしてくる。
気持ち悪い。
嫌悪感しか湧いてこない。

以前の俺なら、この先の快楽に溺れたくて、それに付属する金に目が眩んで、自分から手を伸ばしていたかもしれない。

だけど今はもう、夏に対する気持ちの意味を知ってしまった。
夏以外に触れられる事がこんなにも不快だなんて。

「・・・どうした?上品ぶる様な体じゃないだろう?あまり手荒な事はしたくない。早々に乱れてくれると助かるんだがな」

長澤が他の二人に顎で合図をすると、1人が背後に回り 立たされたまま後頭部で両手を組むように抑えられ、もう1人が俺の前に跪き 中心部を生温い舌が這う。

気持ち悪い・・・。
そう思っても、思考を裏切った本能が 与えられる快感に身を委ねろ、と訴えてくる。

嫌だ。こんなヤツらに感じたくなんてない。

「・・・っ、こんな事しなくても、早く、突っ込めばいいじゃないですかっ」

「有意義な時間にしたいと言っただろう。凛々しくなった君が堕ちて行く様をじっくり見せてもらう」

この・・・俗悪趣味オヤジ・・・!

「ふ・・・っ」

反応したくないのに、前を咥内に深く咥え込まれて思わず下半身が震える。

「まだまだ足りなさそうだ。そう言えばミナトはここも好きだったな」

「はっ・・・あ、ぁ」

伸びて来た長澤の指に、円を描くように胸の突起を触れられて声が漏れてしまう。

嫌だ、と言ってしまいたい。だけどその一言は絶対に言えない。
これは自分がやってきた事のツケだ。

「いい反応になってきた。ああ・・・その顔、男を咥えたくて堪らないって顔だな」

くそ・・・
乳首と男性器への執拗な愛撫で、嫌悪感より快感に支配されてしまいそうになる。

「早く、挿れて、く・・・ださい」

じゃないと、おかしくなりそうだ。
このまま、まだ理性があるうちに全て終わらせて欲しい。今 この体に触れている手が、舌が、夏のものじゃない、と理解できている間に・・・。


長澤が自分の手にチューブから絞り出したジェルを丁寧に馴染ませているのが目に入った。

背後の男に上体が倒れるように抑えられ、腰を後ろに突き出した体制になる。

ジェルで滑りが良くなった長澤の手が、俺の臀部を揉みしだく。
時折 指が秘部を掠めて、その度に小さく腰が跳ねてしまう。

声が出ないよう強く下唇を噛み締める。

「前々から、二輪挿し、というものに興味があってね。しかし首を縦に振ってくれるいい子がいなくてがっかりしてたんだ。ミナト、君ならできるだろう?」

長澤の言葉と ゆっくりと差し込まれた太い指の感触に、膝がカタカタと震えた。
口と後ろを同時に塞がれた経験はあっても、2本同時に挿入された経験は、さすがに無い。

嫌だ。嫌だ。気持ち悪い。怖い。誰か・・・。

夏・・・・・・!

届かないとわかっていても、その名前を呼んで、助けて欲しい、と叫んでしまいたい。

そんな事、許されない。俺は夏よりも大人で、あいつを守ってやらなきゃいけない。
こんな事くらい、いくらでもやってきた。されてきた。少しくらい乱暴にされてもきっと大したことじゃない・・・。


もし俺が、夏と同じ歳だったなら・・・
違う『今』があったんだろうか。
純粋に恋に落ちて、夏だけしか知らずに今日を迎えていたら、俺はここにいなかったのかな。

きっと違う。あの事故があったからこそ夏と出逢えた。
いつか夏が言った通りだ。誰かの不幸の上に誰かの幸福がある。

俺自身の不幸の上にも二人の幸せがある。
だからきっと、これでいいんだ。
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