美人が得って本当ですか?

きんのたまご

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やっとのことで壁へと移動した私はカーテンの影に隠れて会場を見渡していた。
色とりどりのドレス!
やはり私も女の子なので心が浮き立つ!
あー可愛い女の子を見ているのは楽しいわぁ。
すっすら微笑みながら立っていると
「そんなところで何をしておられるのですか?貴方のような可憐な方がこのような所にいては勿体ないですよ」
とカーテンの向こうから声が聞こえた。ん?可憐?誰のことだ?
私は首を傾げながらも、まぁ私ではないなとそのままにしていたらクスクスと笑い声
「そこのカーテンに隠れておられる貴方ですよ」
私は構われたくなくて
「どうかわたくしのことはお構い無く」
と素っ気なく返したのだか、なぜかまた笑われた。
そもそも向こうからはこちらの顔は見えてもいないはずなのに可憐な方なんて明らかに嘘なのである。きっと誰にでもそう言って声をかけているのだろう。
どの世界にもこういうナンパなやつはいるんだなと思いつつ
「あら、あちらにピンクのドレスのとても素敵な方がおられますわよ!」
と全然知らない令嬢をすすめてみた。
こういった輩は可愛い女の子なら誰でもいいだろう!
しかしその方はそこから動く様子が無い。
「貴方はここで何を?」
また話かけられた。
「……」
まぁ顔を見られている訳ではないから話くらいはいいか。はぁ。
「可愛いご令嬢達を愛でておりました」
私はさっきまで、いや、今も女の子を眺めていた事を素直に話した。
こんな怪しいことを言う令嬢なんて興味無いでしょう?早くどこかへ行って!っという思いを込めて。

「貴方もあちらに参加されてはいかがですか?」
どうやらまだ話は続くらしい。
私は諦めて暫く相手になるかと諦めた。
「わたくしこういった場所は初めてでして、お友達とお呼びするような方はおりませんので話をする方もおりませんの。もともと社交などはあまり乗り気ではありませんから始めからわたくし壁になりきろうと思い参ったのです」

「ふっ…あはははは!」
何が面白かったのかカーテンの向こうの方が笑い出しました。
このままではこちらに注目が集まりそうな予感がします。
時間を確認するとそろそろ帰ってもいいお時間!
「わたくしそろそろ失礼致します」

私はそそくさとその場を立ち去り出口へと向かったのだった。

振り返ることもしなかった私はカーテンの向こうの方がずっとこちらを見ていた事には気付かなかった。

「面白いご令嬢だ。あの娘なら……」


あーーー!疲れた!
私は馬車に乗り込む。
「ずいぶんお早いお戻りですね」
使用人に苦笑まじりにそう言われ
「もう、十分よ。私には社交はやはり向いてないわ。明日からまた思う存分引きこもるわ!」
と力一杯返事をするとまたしても苦笑されたのだった。
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