美人が得って本当ですか？

２２

その後屋敷に帰った私を見て使用人の皆、勿論両親も呆然としていた。
行きとは違う髪、眼鏡も外している。まぁこれが本来の姿であるわけだが。しかし今までこんな事が無かっただけにそれはもう驚かれた。
「まぁまぁ、どうしたのミリア」
お母様が心配そうにこちらに来てくれる。

「どうしたんだい？大丈夫かい？」
お父様も心配して来てくれた。
先程イザベル様に言われた事が頭に甦りまた苛立った。こんなにも心配してくれる両親が私の本当の親じゃないなんて。
……なんだか鼻の奥がツンとした。
気付けば私は泣いていた。声も無くポロポロと涙を溢す私に皆狼狽えていた。
それを見て幸せだなぁなんて少し泣き笑いになった。


ちょっと泣いたら落ち着いた。


前世では小さい頃はよく泣いていた。
男の子にモテて女の子に嫌われてるからイジメられてるなんて、何だか恥ずかしくて親には言えなかった。けどいつも何も言わず頭を撫でてくれてた両親。結局あんな死に方して、親孝行も出来ずろくでもない人生だったって思ってた。可愛くったって何にも良いこと無いって思ってた。でも、こんな可愛い子供で嬉しいって両親は思っていたのかもしれないってなんだかそんな気がした。だって可愛らしいお嬢さんですねって言われる度おかあさんはとても嬉しそうにしていた。

「ふふっ、何だか急に思い出したなぁ」
ここは自室のベッドの上。
あの後、泣いた私を見て皆大慌て！
何だか何だ、どうしたどうしたと質問攻めにあい私はお茶会であった事をそのまま包み隠さず打ち明けた。
お父様、お母様……微笑みながら怒っていた。ブルッ！怖っ！
ビアンカも笑いながら青筋たてていた。
そして私は今までの事を謝った。

「お父様、お母様ごめんなさい」
「どうしたんだい、ミリア」
「今まで好き勝手させて貰って……私がしっかりマクシミリアン家の令嬢らしくしていたらこんなこと言われる事も無かったのに」
悔しさに唇を噛む。それを見た両親は顔を見合せ
「謝る事はないよ。確かに少し変わった子だなって思うけどね」
と茶目っ気たっぷりにウィンク☆された。
今度は私がポカンとしてしまった。
「引きこもり気味になってしまって、ちょっと困ったなぁって思った時もあったけどね。でも、ちゃんと家の事考えてくれてたでしょ？」
お母様。
「そうだよ。色々開発してくれて家はとても豊になった。まぁもともとうちは豊だけどね！」
胸をはり冗談ぽくそう言ってくれるお父様。
困ったなぁ。また涙出てきちゃうな。
「だからね、ミリア。貴方は今までどうりの貴方でいいのよ」
そう言って微笑んでくれるお二人に私も心からの笑顔を返した。

そして私は自分の前世の記憶を話した。
初めは何の話をしているのかと不思議そうにしていた両親だったが、私の真剣な様子と今までの色々な事。例えばそれは髪を染める色素だったり、フレーバーティーだったり、かつらだったりそんな今までの諸々が前世の記憶だと言うとそれに納得したのか信じてくれたようだった。 

「可哀想な最後だったのね」
お母様は涙を流して前世の私の為に泣いてくれた。
「どうであれミリアは私達の可愛い娘だよ」
お父様はお母様の肩を抱き私にそう言ってくれた。
そんな風に感じた事無かったと思うのにやっぱり少し今の両親に遠慮があったのかもしれない。これでやっと本当の親子になれたような、そんな清々しい気持ちになった。