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「ところで…貴方達の夫婦生活はどう?」
唐突にそんな事を聞かれる。そんな普通の夫婦のような事を聞かれるとは思っていなかった。
「…それは、普通の夫婦として…ですか?そもそも私達は普通の夫婦ではありませんので…」
「あ!いえ、大丈夫!それは分かっているわ!ただあの子が貴女に迷惑をかけていないか、仲良く出来ているか気になって…」
「ああ、そういう…」
私は頷いた。
「それへの回答と致しますならまあまあ良好と言えるのではないかと私は思っておりますが、フランツの方が私をどう思っているかは分かりません。ですが私に教えを乞うフランツの姿勢は素直ですから大きな問題も無く概ね良い関係を築けているのではないかと思います」
「そう、それは良かったわ…。あの日からなかなかフランツと顔を合わせる機会も無かったし……何よりもうあの子に合わせる顔が無くてね、本当に恥ずかしいわ」
まあ、家のあれこれが息子にバレて恥ずかしい気持ちも分からないでは無いが……それはほとんどあの出来損ない侯爵のせいな訳で…政略結婚の相手との間にしっかり跡取りとなる息子を産んで育てた侯爵夫人がそこまで……自分の息子と顔を合わせることを恥ずかしいと思い疎遠になる事は別に私は求めていない。
それに私がこの家を去った暁には侯爵家を家族皆で協力して盛り立てて行かなければならないのだから是非とも家族仲良くして欲しいところ。
「それは大丈夫なのではないですかね。フランツは侯爵様のことも侯爵夫人の事も一度も私の前で悪く言った事はありませんし、今のこの状況を親のせいだと言った事もありませんよ。フランツは頭の中が少し幼稚だっただけで根本的には悪い人間ではないと思っております。状況が状況だったと言ってしまえばそれまでですが、あの日私があんなにフランツに色々言っても、まあ少し怒鳴ったりはあったかもしれませんが暴力を振るおうとかそんな事はありませんでしたし…きっと少し夢見がちなだけで本当は優しい人なのでしょう。それはきっと侯爵夫人の子育ての結果ですわ」
私がそこまで言って侯爵夫人を見ると両手で顔を覆いながら泣いていらした。
「ありがとう………」
小さな小さな声だったけれど確かに届いたその声はしっかりとした母親の声だった。
それから暫く侯爵夫人が落ち着くのを待ってお茶会は解散となった。
「本当に…ありがとう。今日貴女と話が出来て本当に良かった、貴女がこの家に来てくれて本当に良かった…」
そう言って侯爵夫人は私の手を握る。
私も少し握り返す。
「いえ、こちらもお話させて頂けて良かったです。普通の嫁、姑という関係にはなれないかもしれませんがこれからはもう少し気楽にお話出来たらと思いますわ」
「ええ、そうね」
そして私達は顔を見合わせて笑いあった。
「こんな事を言えた義理ではないけれど……貴女がフランツと本当の夫婦になって、ずっとこの屋敷にいてくれたらって思ってしまうわ」
その侯爵夫人の言葉は思いがけないものだったが思いの外嬉しくもあった……なにせ私はきっと嫌われているだろうと思っていたから。
「ありがとうございます。でもそれは難しいと思います。どうやらフランツには想いを寄せる方がいるようです、私がこの屋敷を去った後にはその方を屋敷に迎え入れられると思いますので、でもそう言って頂けただけで嬉しいです」
私のその言葉でその場が一瞬にして凍り付いたが…………私は侯爵夫人と思いがけず穏やかに話が出来た事に満足していた。
唐突にそんな事を聞かれる。そんな普通の夫婦のような事を聞かれるとは思っていなかった。
「…それは、普通の夫婦として…ですか?そもそも私達は普通の夫婦ではありませんので…」
「あ!いえ、大丈夫!それは分かっているわ!ただあの子が貴女に迷惑をかけていないか、仲良く出来ているか気になって…」
「ああ、そういう…」
私は頷いた。
「それへの回答と致しますならまあまあ良好と言えるのではないかと私は思っておりますが、フランツの方が私をどう思っているかは分かりません。ですが私に教えを乞うフランツの姿勢は素直ですから大きな問題も無く概ね良い関係を築けているのではないかと思います」
「そう、それは良かったわ…。あの日からなかなかフランツと顔を合わせる機会も無かったし……何よりもうあの子に合わせる顔が無くてね、本当に恥ずかしいわ」
まあ、家のあれこれが息子にバレて恥ずかしい気持ちも分からないでは無いが……それはほとんどあの出来損ない侯爵のせいな訳で…政略結婚の相手との間にしっかり跡取りとなる息子を産んで育てた侯爵夫人がそこまで……自分の息子と顔を合わせることを恥ずかしいと思い疎遠になる事は別に私は求めていない。
それに私がこの家を去った暁には侯爵家を家族皆で協力して盛り立てて行かなければならないのだから是非とも家族仲良くして欲しいところ。
「それは大丈夫なのではないですかね。フランツは侯爵様のことも侯爵夫人の事も一度も私の前で悪く言った事はありませんし、今のこの状況を親のせいだと言った事もありませんよ。フランツは頭の中が少し幼稚だっただけで根本的には悪い人間ではないと思っております。状況が状況だったと言ってしまえばそれまでですが、あの日私があんなにフランツに色々言っても、まあ少し怒鳴ったりはあったかもしれませんが暴力を振るおうとかそんな事はありませんでしたし…きっと少し夢見がちなだけで本当は優しい人なのでしょう。それはきっと侯爵夫人の子育ての結果ですわ」
私がそこまで言って侯爵夫人を見ると両手で顔を覆いながら泣いていらした。
「ありがとう………」
小さな小さな声だったけれど確かに届いたその声はしっかりとした母親の声だった。
それから暫く侯爵夫人が落ち着くのを待ってお茶会は解散となった。
「本当に…ありがとう。今日貴女と話が出来て本当に良かった、貴女がこの家に来てくれて本当に良かった…」
そう言って侯爵夫人は私の手を握る。
私も少し握り返す。
「いえ、こちらもお話させて頂けて良かったです。普通の嫁、姑という関係にはなれないかもしれませんがこれからはもう少し気楽にお話出来たらと思いますわ」
「ええ、そうね」
そして私達は顔を見合わせて笑いあった。
「こんな事を言えた義理ではないけれど……貴女がフランツと本当の夫婦になって、ずっとこの屋敷にいてくれたらって思ってしまうわ」
その侯爵夫人の言葉は思いがけないものだったが思いの外嬉しくもあった……なにせ私はきっと嫌われているだろうと思っていたから。
「ありがとうございます。でもそれは難しいと思います。どうやらフランツには想いを寄せる方がいるようです、私がこの屋敷を去った後にはその方を屋敷に迎え入れられると思いますので、でもそう言って頂けただけで嬉しいです」
私のその言葉でその場が一瞬にして凍り付いたが…………私は侯爵夫人と思いがけず穏やかに話が出来た事に満足していた。
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