上 下
22 / 24

22

しおりを挟む
どうしようなんて悩んでみたものの私の答えは決まっていた。
「貴方の告白を信用していない訳ではないし、そう言って貰えるのはありがたい事だけれど…私は貴方の気持ちには応えられないわ」
そう、なんと言っても私は君を愛する事は出来ないと言われて、他に好きな人が出来たと言われて、まあそれは誤解だったみたいだけれど、兎に角そう言われても心から喜んでしまう位にフランツの事は何とも思っていない。
だから本当に真剣に私の事が好きならばその気持ちには応えられない。
既に結婚しているのだからと言われるかもしれないけれど、この結婚は元々整えられた条件の上でのいわば契約結婚、ずっとこの公爵家に留まるつもりでの結婚では無いのだ。
そんな事を考えていた私の耳にフランツの声が聞こえてくる。
「やはりそうだと思っていた、断られるとは分かっていたんだ」
そう言ってフランツは照れくさそうに笑っていた。
そんなフランツの様子に私が呆気に取られていた。
「では、何故私に想いを告げたの?」
思わず私はそう聞いていた。そんな事を聞いたとしても私がフランツの想いに応える事は出来ないのに。
言ってから後悔してもそれは後の祭り、私が自分の不用意な口を呪う日が来るとは思わなかった。
「言わずには居られなかった…から?」
あまりにもあっけらかんとした声で返事が帰って来た事に更に呆気に取られている私にフランツは続ける。
「だって考えてもみてよ、この歳まで好きな人がいなかった私にとっては人を好きになれたこと自体喜ばしい事だ、それが結婚している妻であるなら想いを告げない理由が見つからないだろう?しかも君と言うものがありながら他に好きな人を作っているような最低な男だと誤解されたままなのも嫌だったし」
フランツのその言葉に変に納得してしまった。そりゃそうだ……私達は仮初とはいえ他から見たら夫婦なのだ、夫が妻に愛を囁いたところでを何ら問題は無い。
「それに……一度断られたからと言ってアマンダの事を諦めないといけないと言うことも無いだろ?」
えっ?それは素直に諦めて貰った方が私にとってはありがたいのだが……。
「人の気持ちは自由だよね?私が君の事を好きなままでも君にそれを辞めさせる権利は無い。違う?」
そう言ってにっこりと笑うフランツを見て成長したなぁと思うのと同時に……厄介な事になってしまったと私は項垂れるのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄?私には既に夫がいますが?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:95,289pt お気に入り:711

流刑地公爵妻の魔法改革~ハズレ光属性だけど前世知識でお役立ち~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:454pt お気に入り:4,361

聖女の笑顔も三度までです。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:723

処理中です...