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その日の外出の最後に連れて行かれたのは侯爵領を一望出来る丘の上だった。
普通の?デート?ならこんな所喜ばれる場所では無いと思うのだけれど……。
やっぱりあの告白は嘘で…ここから私を落とそうと思っているのだろうか……。
いや、それは無いな。流石に今のは酷かった、ごめんフランツ。
と心の中で謝っておく。
「いい景色ね」
ちょうど夕日が綺麗な時間、辺りは一面オレンジに染まる。
「ああ、本当に…」
暫く二人、無言で並んで景色を眺めていた。
「アマンダ……本当に君には感謝している」
急にそんな事を言い出すフランツに驚きのあまりその顔を凝視してしまう。
「……どうしたの急に……もしかして余命宣告でもされたの?」
「…………っ!はっ!はは……っ余命宣告って…っ!ははは!君は本当に面白い事を言うな!」
「………そうかしら。そんなに笑われるような事言ったつもりはないのだけれど……貴方が急に改まってありがとうとか言って来るから」
「だからって……ははっ」
まだ笑ってるわ。私はちょっと面白くなくてそっぽを向く。
「貴方…ちょっと笑いすぎよ」
「ごめんごめん!」
そしてそここらまた暫く笑っていたフランツだったが、漸く治まったのかコホンと一つわざとらしく咳払いをして真剣な声で話し出した。
「アマンダ………本当に、本当に冗談じゃ無く……君には感謝しているんだ」
「…もう分かったわ」
「いや、きっと君が想像しているより私は君に感謝しているんだ」
「フランツ……」
「本当に私は何も知らなかった。父の事も母の事も家の事も領地の事も……知らなすぎた。今なら分かる……君が以前言っていたように私は無知過ぎた…知らないのも、知っていて知らないふりをする事も罪だ。………本当にそう思う」
「将来、自分が跡を継ぐ家の事を自分から知ろうとしなかった貴方にも非があると思うから一概に貴方は悪くない、侯爵様が勝手にやっていたのだから…とは言ってあげられないけれど……今の貴方は本当に頑張っていると思うわ。これまで甘やかされて育って来たのに私のスパルタな後継者としての教育に着いて来れているのだもの……大したものよ」
私は本当にそう思っていた。
あそこまで甘やかされて育って自分もずっと何も考えず甘えるだけ甘えて暮らして来たフランツがここまで来るのは正直大変だったと思う。
元々私とは産まれた環境が違うし、そもそものハングリー精神みたいなもの?が違う。私はどうにかしなければならなかったからこうなっただけ生活もかかっていたし最後には生きるか死ぬかぐらいまで行った……だから、その頃の事を考えれば大抵の事は出来たし、しなければならなかった。
「君がここに来てから……私は初めて街に出た。侯爵家の人間ということを隠して。ブラブラと街に出て……庶民の生活を知った……私達が何もせずに与えられているものが手に出来ず生活に苦しむもの達もいた、誰かが捨てたものを拾う者、店先の物を盗む者………それは極端な人間なのかもしれないが…確かにそんな人達もいて…。その時初めて分かったんだ、そんな人達に私の父はまだ高い税を課そうとしていたのかと………それはまさに絶望だった。ただでさえそんな領民達から税を徴収して暮らしているというのに、そんな大切なお金を湯水の如く使い借金までして!まだ!領民に厳しい税を課すなんて………その時君がここへ嫁いで来た意味を正しく理解したんだ。あの時君は言っていた、自分に関係ない領民の事を盾にして脅すようにして来る父が理解出来なかったと…でも君はきっとそんな関係の無い領民達を可哀想だと思って来てくれたのだと」
「……私は…そんな優しい人間では無いわよ」
私はフランツに背を向けて馬車の方向へ向かって歩き出す。
フランツは何も言わず私の隣に並び歩き出す。
やがて馬車に着きフランツは再び口を開いた。
「君はやっぱり……優しいよ」
そうして馬車に乗り込み……私たちの初めての外出は終わった。
普通の?デート?ならこんな所喜ばれる場所では無いと思うのだけれど……。
やっぱりあの告白は嘘で…ここから私を落とそうと思っているのだろうか……。
いや、それは無いな。流石に今のは酷かった、ごめんフランツ。
と心の中で謝っておく。
「いい景色ね」
ちょうど夕日が綺麗な時間、辺りは一面オレンジに染まる。
「ああ、本当に…」
暫く二人、無言で並んで景色を眺めていた。
「アマンダ……本当に君には感謝している」
急にそんな事を言い出すフランツに驚きのあまりその顔を凝視してしまう。
「……どうしたの急に……もしかして余命宣告でもされたの?」
「…………っ!はっ!はは……っ余命宣告って…っ!ははは!君は本当に面白い事を言うな!」
「………そうかしら。そんなに笑われるような事言ったつもりはないのだけれど……貴方が急に改まってありがとうとか言って来るから」
「だからって……ははっ」
まだ笑ってるわ。私はちょっと面白くなくてそっぽを向く。
「貴方…ちょっと笑いすぎよ」
「ごめんごめん!」
そしてそここらまた暫く笑っていたフランツだったが、漸く治まったのかコホンと一つわざとらしく咳払いをして真剣な声で話し出した。
「アマンダ………本当に、本当に冗談じゃ無く……君には感謝しているんだ」
「…もう分かったわ」
「いや、きっと君が想像しているより私は君に感謝しているんだ」
「フランツ……」
「本当に私は何も知らなかった。父の事も母の事も家の事も領地の事も……知らなすぎた。今なら分かる……君が以前言っていたように私は無知過ぎた…知らないのも、知っていて知らないふりをする事も罪だ。………本当にそう思う」
「将来、自分が跡を継ぐ家の事を自分から知ろうとしなかった貴方にも非があると思うから一概に貴方は悪くない、侯爵様が勝手にやっていたのだから…とは言ってあげられないけれど……今の貴方は本当に頑張っていると思うわ。これまで甘やかされて育って来たのに私のスパルタな後継者としての教育に着いて来れているのだもの……大したものよ」
私は本当にそう思っていた。
あそこまで甘やかされて育って自分もずっと何も考えず甘えるだけ甘えて暮らして来たフランツがここまで来るのは正直大変だったと思う。
元々私とは産まれた環境が違うし、そもそものハングリー精神みたいなもの?が違う。私はどうにかしなければならなかったからこうなっただけ生活もかかっていたし最後には生きるか死ぬかぐらいまで行った……だから、その頃の事を考えれば大抵の事は出来たし、しなければならなかった。
「君がここに来てから……私は初めて街に出た。侯爵家の人間ということを隠して。ブラブラと街に出て……庶民の生活を知った……私達が何もせずに与えられているものが手に出来ず生活に苦しむもの達もいた、誰かが捨てたものを拾う者、店先の物を盗む者………それは極端な人間なのかもしれないが…確かにそんな人達もいて…。その時初めて分かったんだ、そんな人達に私の父はまだ高い税を課そうとしていたのかと………それはまさに絶望だった。ただでさえそんな領民達から税を徴収して暮らしているというのに、そんな大切なお金を湯水の如く使い借金までして!まだ!領民に厳しい税を課すなんて………その時君がここへ嫁いで来た意味を正しく理解したんだ。あの時君は言っていた、自分に関係ない領民の事を盾にして脅すようにして来る父が理解出来なかったと…でも君はきっとそんな関係の無い領民達を可哀想だと思って来てくれたのだと」
「……私は…そんな優しい人間では無いわよ」
私はフランツに背を向けて馬車の方向へ向かって歩き出す。
フランツは何も言わず私の隣に並び歩き出す。
やがて馬車に着きフランツは再び口を開いた。
「君はやっぱり……優しいよ」
そうして馬車に乗り込み……私たちの初めての外出は終わった。
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Σ(°꒳° )ハッ
自分の無知に気付いて成長を始めたフランツに絆されそう…
ここから始まる夫婦があっても良いかも。これからのフランツ次第だけど。
連投失礼します…最新話の24の冒頭部分にも侯爵家がこうになっているところが1箇所あります…直されると良いでょう(。•̀ᴗ-)✧
22の中に1箇所侯爵家が公爵家になっています…