私の中から貴方だけが姿を消した

きんのたまご

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「ご無沙汰しておりますヘクター様」
私は淑女の礼をとる。
「ああ、本当に目を覚ましたんだね良かった。とても心配していたんだよ」
そう言ってヘクターは馴れ馴れしく私の肩を抱こうとしたのでさり気なく1歩下がりその腕を避ける。
「応接室にお通しして」
私はメアリーに命じる。
「君の部屋に入れてくれないの?」
ヘクターは笑顔でとんでもない事を言う。
……一体どういうつもりなの?正直今すぐにでも帰って欲しいほど不快感が凄い。でも本当にカトリーヌとヘクターが結婚する事になるのなら長い付き合いになると思うし…。しょうがく私は笑顔で相手をする。
「お茶の用意をさせますので少々お待ち頂けますか?」
そう言って応接室にヘクターを置いて私はメアリーと一緒にお茶の用意に向かう。
「カトリーヌの相手だから悪く言いたくはないけど…ヘクターってなんか……感じ悪い?」
「……お嬢様誤解なさっているようですがヘクター様はカトリーヌ様の御相手ではありませんよ」
「えっ?そうなの?じゃあ何しに来たの?」
「……お手紙には何と?」
「えー?目が覚めたと聞いたからお見舞いに来たいって書いてただけよ」
「では、そのお手紙に書いてあるままお見舞いに来られたのでは?」
「…そうなのかなぁ?そんな親しくも無い人のお見舞いになんて来る?」
「では、お嬢様と親しくなりたいのかもしれませんよ」
「………それは断りたい」
「お顔はお綺麗な部類だと思いますが…お嬢様はタイプではないのですか?」
「あーいう軽そうな人はちょっとね…」
「そうなんですね……お嬢様あまりお客様をお待たせしてはいけません」
「そうね…仕方ないか、行くわ」
気は進まなかったが私はヘクターの待つ応接室に向かう、が途中でメアリーの元へ戻る。
「メアリー一刻も早く来てね」
「はい、分かりました」
そして今度こそヘクターの元へ向かった。


そして今私はヘクターと2人でテーブルを挟んで向き合い座っている。
何故かニコニコしたヘクターと気まずい私。
「どうしたの?」
「いえ…」
「まだ体調悪い?」
「いいえ…」
しーん。
気まずいわぁ。本当に何しに来たのこの人。
「今日はどういったご要件で?」
私は思い切って聞いた。
「何ってお見舞いだけど…手紙にもそう書いたよね?」
「ええ、書いてましたけど…」
その理由が分からないから聞いているのだけど。
「その、そんなに親しくしていた訳でも無いのに見舞われる理由が見当たらないと言いますか…」
私がそう言うとヘクターは酷く驚いた顔をした。
最近周りの人のこんな顔をよく見るなぁ…一体なんだと言うのか。
「…それは何の冗談かな?もしかして、なかなかお見舞いに来なかったから怒っているの?」
「?いいえ?私には怒る理由がありません」
「……では何故そんなに他人行儀なの?」
コンコンコン
「失礼致します」
メアリーがお茶のワゴンを押して入って来る。
「メアリーだったかな?君のご主人様は一体どうしたと言うのかな?」
私の事を横目でチラリと見ながらメアリーにそう尋ねるヘクターは凄く嫌な感じ…。
メアリーはヘクターに近づき何かを耳打ちする、すると先程の驚き等比べ物にならない程ヘクターは驚いた様子で私を見た。
メアリーは一体何を言ったのだろう。

…ヘクターを見た時からずっと何か引っかかっていた。何か胸がモヤモヤする感じ…。
そして今メアリーがヘクターに耳打ちしているのを見て思い出した。
「ヘクター様、半年前……確か私が事故を起こした日?学園の中庭で女生徒とキスしていらっしゃいましたよね?」
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