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執事 後
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あの女の事はカーディガン家に来る前に軽く調べた。
確かに身分は男爵家の娘である事は事実であるものの生活態度、特に異性関係や性格などは最悪の部類だった。
そんな事もあり旦那様も大奥様もずっと反対されていたのに、一介の執事の私でも調べたら分かるような簡単な事を調べもせず妄信的にチュニックとか言うあの女の事を信じ屋敷に招き入れてしまった。
こちらが調べたと言った報告も勝手に調べたのか失礼だろうと怒鳴る始末。
フレア様の様子も明らかにおかしいというのに………本当に気付いていないのだろうか、アウター様はどうしてしまったというのだろうか。
あの女が屋敷に来てからのフレア様の様子がおかしくなったのは誰が見ても明らかだった。
それまで貴族の奥様として容姿にも気を使いお綺麗になさっていたフレア様。
それがいつからか化粧も施されず、あんなに美しく輝いていた髪も艶を失いドレスも一昔前の野暮ったい物ばかり。
奥様の世話をしっかりしなさいと注意すれば「私はお世話したいんですけどフレア様が嫌がられるんです。そして私がフレア様のお世話をサボっていると周りの使用人達に悪口を言うんです」とアウター様に泣き付く。
表立ってはやっていないがこっそりと様子を伺ってみると使用人達だけの場所ではとても横柄な態度で、気に入らない使用人に暴力を振るう事もしばしば、勿論旦那様には報告をして何度もアウター様にもご報告しようと思ったがそもそも聞く耳すら持たず、日々憔悴されているフレア様の様子にも気が付かない………。
いや、分かっていて見ぬ振りをなさっているのだろうか……優しかったアウター様は何処に行ってしまったのか…。
ある日不憫なフレア様を見かねて大丈夫ですかと尋ねると弱弱しいながらも気丈に微笑まれて私は大丈夫と仰られた。
本当ならあんな女フレア様の権限で追い出したとしてもなんの問題も無い筈なのにフレア様はそうはされずにじっと耐えているようだった。
そうして意識して見ていると………フレア様は敢えて今の状況を耐えていらっしゃるのではないかと思い至る。
あの聡いフレア様がなんの解決策も無く何時までも黙っておられるはずは無い。
本当ならばあの性悪女に懸想し家に招き入れた時にでもアウター様の浮気で離縁出来たかもしれないのにそれもなさらなかった。
「フレア様……何をお考えですか」
たまりかねてそう言った私にフレア様はここ最近では珍しい程、優雅に微笑まれて思いもよらない事を話し出した。
そして最後にこう締めくくる。
「貴方達には苦労をかける事になる、それでももう少し耐えて欲しいの」
当然私にそれを拒否する理由など無く
「勿論でございます。これからも誠心誠意お仕えさせて頂きます」
と答えた。
そしてあの日フレア様から聞かされた計画がいよいよ実行に移される。
今日、この日のために用意された毎日送られてくるフレア様からの手紙。
追い詰められたアウター様とあの女の声が執務室の中から聞こえて来る。
さていよいよその時だ、私は執務室の扉をノックすべく手を上げた。
確かに身分は男爵家の娘である事は事実であるものの生活態度、特に異性関係や性格などは最悪の部類だった。
そんな事もあり旦那様も大奥様もずっと反対されていたのに、一介の執事の私でも調べたら分かるような簡単な事を調べもせず妄信的にチュニックとか言うあの女の事を信じ屋敷に招き入れてしまった。
こちらが調べたと言った報告も勝手に調べたのか失礼だろうと怒鳴る始末。
フレア様の様子も明らかにおかしいというのに………本当に気付いていないのだろうか、アウター様はどうしてしまったというのだろうか。
あの女が屋敷に来てからのフレア様の様子がおかしくなったのは誰が見ても明らかだった。
それまで貴族の奥様として容姿にも気を使いお綺麗になさっていたフレア様。
それがいつからか化粧も施されず、あんなに美しく輝いていた髪も艶を失いドレスも一昔前の野暮ったい物ばかり。
奥様の世話をしっかりしなさいと注意すれば「私はお世話したいんですけどフレア様が嫌がられるんです。そして私がフレア様のお世話をサボっていると周りの使用人達に悪口を言うんです」とアウター様に泣き付く。
表立ってはやっていないがこっそりと様子を伺ってみると使用人達だけの場所ではとても横柄な態度で、気に入らない使用人に暴力を振るう事もしばしば、勿論旦那様には報告をして何度もアウター様にもご報告しようと思ったがそもそも聞く耳すら持たず、日々憔悴されているフレア様の様子にも気が付かない………。
いや、分かっていて見ぬ振りをなさっているのだろうか……優しかったアウター様は何処に行ってしまったのか…。
ある日不憫なフレア様を見かねて大丈夫ですかと尋ねると弱弱しいながらも気丈に微笑まれて私は大丈夫と仰られた。
本当ならあんな女フレア様の権限で追い出したとしてもなんの問題も無い筈なのにフレア様はそうはされずにじっと耐えているようだった。
そうして意識して見ていると………フレア様は敢えて今の状況を耐えていらっしゃるのではないかと思い至る。
あの聡いフレア様がなんの解決策も無く何時までも黙っておられるはずは無い。
本当ならばあの性悪女に懸想し家に招き入れた時にでもアウター様の浮気で離縁出来たかもしれないのにそれもなさらなかった。
「フレア様……何をお考えですか」
たまりかねてそう言った私にフレア様はここ最近では珍しい程、優雅に微笑まれて思いもよらない事を話し出した。
そして最後にこう締めくくる。
「貴方達には苦労をかける事になる、それでももう少し耐えて欲しいの」
当然私にそれを拒否する理由など無く
「勿論でございます。これからも誠心誠意お仕えさせて頂きます」
と答えた。
そしてあの日フレア様から聞かされた計画がいよいよ実行に移される。
今日、この日のために用意された毎日送られてくるフレア様からの手紙。
追い詰められたアウター様とあの女の声が執務室の中から聞こえて来る。
さていよいよその時だ、私は執務室の扉をノックすべく手を上げた。
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