8 / 8
8
しおりを挟む
トマスと喧嘩別れのような状態になってから1週間が過ぎた。
生まれてからずっと一緒にいた私達……こんなに話をしなかったのはあの日以来だな。
「ナディア!」
名前を呼ばれてはっとする。
「メアリ」
いつの間にか名前で呼び合う程仲良くなった。
「この頃トマス様とは別行動なの?」
「うん」
「何で?」
「何で…と言われても…。トマスから何か言われた?」
「言われてないけど…っ何よ!私が心配したらいけないわけ?」
「……いや、そんな事ないけど」
…やっぱりメアリはいい子だ。邪魔なはずの私を心配してくれんなんて。
「何でトマス様を避けてるの?」
「………トマスには本当に好きになった相手と幸せになって欲しいの」
「別にあんたがトマス様から嫌われている訳では無いでしょう?」
「まあね」
「じゃあこのまま結婚してあんたがトマス様を幸せにしてあげたらいいんじゃないの?」
「…トマスは私とじゃ幸せになれないから」
「あんたの容姿はそりゃお世辞にも可愛いとは言えないけど見れない程じゃないし、まあ頭も良いとは言えないけど引くほどバカって訳でも無い。第一トマス様はそんな事に拘る人じゃ無い…一体何があってこんなに拗れてるのよ」
「………」
「………ふん!まぁ良いわよ言いたくないなら。そのうち私がトマス様と結ばれてその時に文句言っても遅いんだからね!」
メアリはそう捨て台詞を吐いて去って行った。
「私が幸せに出来るなら……。でも駄目なの。私と一緒にいたら…トマスはいつまでもあの日の事を忘れられない…」
そうしてまた私は無意識に額を触った。
「トマス様ー!」
「メアリか」
ナディアが離れて行って気付くとメアリと共にいる事が増えた気がする。
ナディアとじゃないと無理だと思っていたはずなのに…案外そうでも無かったのだろうか。
そう思って自分の薄情さに嫌気がさした。
「今日もお昼一緒に食べて下さい」
そう言って笑うメアリを見ると出会った頃にチラッと言っていた事を思い出す。
「私、友達いないから…」
そう言って俯くメアリに落ち込んだのかとナディアと顔を見合わせた。
しかしその瞬間顔をあげたメアリは落ち込むどころかこう言ってのけた。
「ほら!私ってとびっきり可愛いでしょ?だから女子からは嫉妬されて友達とか出来ないのよ!」と。
あっけらかんとそう言った彼女を見てナディアと2人で笑った。
「何言ってるのよ!もう私達友だちでしょ!」
その後ナディアは彼女に向かってそう言って…珍しく楽しいと思った時間だった。
「ナディアは今日も無理らしいですよ」
その声にはっとする。
ナディアの事は気にしてない風に過ごしていたけどメアリにはお見通しらしい。
ニヤリと笑う彼女にため息をつきながら食堂へ向かった。
生まれてからずっと一緒にいた私達……こんなに話をしなかったのはあの日以来だな。
「ナディア!」
名前を呼ばれてはっとする。
「メアリ」
いつの間にか名前で呼び合う程仲良くなった。
「この頃トマス様とは別行動なの?」
「うん」
「何で?」
「何で…と言われても…。トマスから何か言われた?」
「言われてないけど…っ何よ!私が心配したらいけないわけ?」
「……いや、そんな事ないけど」
…やっぱりメアリはいい子だ。邪魔なはずの私を心配してくれんなんて。
「何でトマス様を避けてるの?」
「………トマスには本当に好きになった相手と幸せになって欲しいの」
「別にあんたがトマス様から嫌われている訳では無いでしょう?」
「まあね」
「じゃあこのまま結婚してあんたがトマス様を幸せにしてあげたらいいんじゃないの?」
「…トマスは私とじゃ幸せになれないから」
「あんたの容姿はそりゃお世辞にも可愛いとは言えないけど見れない程じゃないし、まあ頭も良いとは言えないけど引くほどバカって訳でも無い。第一トマス様はそんな事に拘る人じゃ無い…一体何があってこんなに拗れてるのよ」
「………」
「………ふん!まぁ良いわよ言いたくないなら。そのうち私がトマス様と結ばれてその時に文句言っても遅いんだからね!」
メアリはそう捨て台詞を吐いて去って行った。
「私が幸せに出来るなら……。でも駄目なの。私と一緒にいたら…トマスはいつまでもあの日の事を忘れられない…」
そうしてまた私は無意識に額を触った。
「トマス様ー!」
「メアリか」
ナディアが離れて行って気付くとメアリと共にいる事が増えた気がする。
ナディアとじゃないと無理だと思っていたはずなのに…案外そうでも無かったのだろうか。
そう思って自分の薄情さに嫌気がさした。
「今日もお昼一緒に食べて下さい」
そう言って笑うメアリを見ると出会った頃にチラッと言っていた事を思い出す。
「私、友達いないから…」
そう言って俯くメアリに落ち込んだのかとナディアと顔を見合わせた。
しかしその瞬間顔をあげたメアリは落ち込むどころかこう言ってのけた。
「ほら!私ってとびっきり可愛いでしょ?だから女子からは嫉妬されて友達とか出来ないのよ!」と。
あっけらかんとそう言った彼女を見てナディアと2人で笑った。
「何言ってるのよ!もう私達友だちでしょ!」
その後ナディアは彼女に向かってそう言って…珍しく楽しいと思った時間だった。
「ナディアは今日も無理らしいですよ」
その声にはっとする。
ナディアの事は気にしてない風に過ごしていたけどメアリにはお見通しらしい。
ニヤリと笑う彼女にため息をつきながら食堂へ向かった。
21
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(37件)
あなたにおすすめの小説
貴方の幸せの為ならば
缶詰め精霊王
恋愛
主人公たちは幸せだった……あんなことが起きるまでは。
いつも通りに待ち合わせ場所にしていた所に行かなければ……彼を迎えに行ってれば。
後悔しても遅い。だって、もう過ぎたこと……
嘘の誓いは、あなたの隣で
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢ミッシェルは、公爵カルバンと穏やかに愛を育んでいた。
けれど聖女アリアの来訪をきっかけに、彼の心が揺らぎ始める。
噂、沈黙、そして冷たい背中。
そんな折、父の命で見合いをさせられた皇太子ルシアンは、
一目で彼女に惹かれ、静かに手を差し伸べる。
――愛を信じたのは、誰だったのか。
カルバンが本当の想いに気づいた時には、
もうミッシェルは別の光のもとにいた。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔
しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。
彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。
そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。
なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。
その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。
いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
婚約破棄、別れた二人の結末
四季
恋愛
学園一優秀と言われていたエレナ・アイベルン。
その婚約者であったアソンダソン。
婚約していた二人だが、正式に結ばれることはなく、まったく別の道を歩むこととなる……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
どうなるか?
額の傷のせいで、ってことか。
トマスも忘れているっぽいけど?
更新楽しみに待っています。
完結までよろしくお願いします。
このお話… おもしろ~い👏👏😆
更新ありますか?
楽しみに待ってまーす❣️
今回のトマスの表現にやはり薄情と感じるのは、ナディアが一般的に見ればまだ幼稚で自己中にこじれているけれど、トマスは自分を誤魔化せばナディアを忘れるのも可能ということがはっきりしたからかな。執着度にあまりにも差があってナディアばかり一人で拗れていて正直言って健気に感じません。このまま別れてトマスはメアリとくっついてナディアは一人で過ごすなり他の人を探した方がいいのではと感じました。