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回想 異形の街
異形の街 23
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バレーナ外壁には、防衛用の仕組みが数多く存在する。
迎撃用のバリスタや大砲。
地上からの攻撃を防ぐ構造の見張り台。
空からの侵入を防ぐ魔道具や呪物。
そして、遠見の魔道具によって街の外全域を確認することの出来る作戦室。
その作戦室では、デュラスが難しい顔をしながら戦況を確認していた。
「想像以上の数だな。単体の強さが大したことがないのが幸いか。」
グレイアントの生息域から推測し、最適な防衛体制は既に敷いている。
しかしそれは、限られた手札の上での話だ。
最適ではあるが、万全ではない。
その上で望外の助力となったのは、娘の友人である権能持ちの少女シャイナと、錬金術師のアルス、そして薬師のシルヴァだ。
正直なところ、彼らがいなければ兵に死者が出てもおかしくなかった。
「・・・いや、まだ安心するのは早いな。」
首を小さく振り、デュラスは気合いを入れ直す。
そして通信石を使って各防衛地点に指示を下す。
「第三、第六分隊は、そのまま現在地点の防衛を続けろ。もうすぐ応援が到着する。第二、第四分隊は防衛範囲を狭めて戦力を集中させろ。その分は第一分隊と外部協力者で対処可能だ。」
伝えて、通信を切る。
第一分隊・・・アリア達の部隊は、既に担当区域の殲滅を完了している。
もしもの時に備えて完全に空けることは出来ないが、余裕が生まれた為隣接する区域のグレイアントの処理も開始している。
外部協力者とは、言うまでもなくシルヴァたちのことである。シルヴァ達が勝手に陣取った地点は第五分隊の担当区域であり、そこに配備されていた兵たちがデュラスの指示に従い応援に向かった。
更に、アルスの創造した金属の巨人達は担当区域など知る由もないので近くの敵がいなくなれば他の敵を探して戦いに行く。結果、隣接する第四分隊の防衛範囲もある程度カバー出来ていた。
「しかし、あの巨人・・・遠隔操作しているようにも見えないが、まさか完全な自律行動なのか?優秀な錬金術師と聞いてはいたが、ここまでとは。」
物質変換は錬金術師のもっとも得意とする分野ではある。特に金属を別の金属にする、というのは錬金術の基本だ。
現にアルスは今、グレイアントの体を構成する雑多な金属を、魔力との相性が良いミスリルに変換している。そこまではある程度熟達した錬金術師ならば時間制限こそあるが困難ではない。
しかし、無生物を自律行動させるのはかなり手練の錬金術師や魔術師であっても非常に困難である。
物体に命令を記憶させ、条件を指定し、状況を判断させる為に外界を認知させる能力を付与する。
さほど錬金術に明るくないデュラスが簡単に思いつくだけでもこれだけの事をする必要がある。
「あれほどの錬金術師ならば、バレーナの歴史に記録されていてもおかしくないが・・・」
デュラスは先程のアルスの名乗りを思い出す。
映像越しで聞き取り難くはあったが、その名前は聞き取れた。
「マグナリア・グレイス・スクラヴァイン、か。少し、調べてみるか。諸々片付けた後にはなるが。」
そう呟き、デュラスは一旦アルスのことを忘れる。そして、通信石で今度は街の中に連絡する。
「千の蹄のデュラスだ。頭領に繋げてくれ。」
数秒の待機の後、すぐに目的の人物に繋がる。
「・・・やあ、頭領。先程頼んだ件だが、何人くらい人を出せそうだ?・・・・・・そうか、助かる。そろそろ片付きそうだから、こっちに来てくれ。案内を出す。・・・・・・ああ、素材は期待してくれていい。まあ、質は大したこと無いが、量はいくらでもある。・・・・・・ああ、ではまた後で。」
短いやり取りを終え、デュラスは通信を切る。
そして、近くで待機していたハーピーの団員に指示を出し、「案内」に行かせる。
団員が飛び立ったことを確認したデュラスは1度小さく息を吐く。
「ふぅ・・・。さて、私も向かわなければ。」
彼はそのまま外に向かおうとしたが、部屋を出る直前に何かを思い出したように立ち止まる。
そして数秒考えた後。
「・・・念の為、持っていくとするか。」
呟くと、彼は壁にかかっていた大きなボウガンを手に取り身につける。
重さを確認するように体を軽く動かした後、今度こそ部屋を出ていった。
迎撃用のバリスタや大砲。
地上からの攻撃を防ぐ構造の見張り台。
空からの侵入を防ぐ魔道具や呪物。
そして、遠見の魔道具によって街の外全域を確認することの出来る作戦室。
その作戦室では、デュラスが難しい顔をしながら戦況を確認していた。
「想像以上の数だな。単体の強さが大したことがないのが幸いか。」
グレイアントの生息域から推測し、最適な防衛体制は既に敷いている。
しかしそれは、限られた手札の上での話だ。
最適ではあるが、万全ではない。
その上で望外の助力となったのは、娘の友人である権能持ちの少女シャイナと、錬金術師のアルス、そして薬師のシルヴァだ。
正直なところ、彼らがいなければ兵に死者が出てもおかしくなかった。
「・・・いや、まだ安心するのは早いな。」
首を小さく振り、デュラスは気合いを入れ直す。
そして通信石を使って各防衛地点に指示を下す。
「第三、第六分隊は、そのまま現在地点の防衛を続けろ。もうすぐ応援が到着する。第二、第四分隊は防衛範囲を狭めて戦力を集中させろ。その分は第一分隊と外部協力者で対処可能だ。」
伝えて、通信を切る。
第一分隊・・・アリア達の部隊は、既に担当区域の殲滅を完了している。
もしもの時に備えて完全に空けることは出来ないが、余裕が生まれた為隣接する区域のグレイアントの処理も開始している。
外部協力者とは、言うまでもなくシルヴァたちのことである。シルヴァ達が勝手に陣取った地点は第五分隊の担当区域であり、そこに配備されていた兵たちがデュラスの指示に従い応援に向かった。
更に、アルスの創造した金属の巨人達は担当区域など知る由もないので近くの敵がいなくなれば他の敵を探して戦いに行く。結果、隣接する第四分隊の防衛範囲もある程度カバー出来ていた。
「しかし、あの巨人・・・遠隔操作しているようにも見えないが、まさか完全な自律行動なのか?優秀な錬金術師と聞いてはいたが、ここまでとは。」
物質変換は錬金術師のもっとも得意とする分野ではある。特に金属を別の金属にする、というのは錬金術の基本だ。
現にアルスは今、グレイアントの体を構成する雑多な金属を、魔力との相性が良いミスリルに変換している。そこまではある程度熟達した錬金術師ならば時間制限こそあるが困難ではない。
しかし、無生物を自律行動させるのはかなり手練の錬金術師や魔術師であっても非常に困難である。
物体に命令を記憶させ、条件を指定し、状況を判断させる為に外界を認知させる能力を付与する。
さほど錬金術に明るくないデュラスが簡単に思いつくだけでもこれだけの事をする必要がある。
「あれほどの錬金術師ならば、バレーナの歴史に記録されていてもおかしくないが・・・」
デュラスは先程のアルスの名乗りを思い出す。
映像越しで聞き取り難くはあったが、その名前は聞き取れた。
「マグナリア・グレイス・スクラヴァイン、か。少し、調べてみるか。諸々片付けた後にはなるが。」
そう呟き、デュラスは一旦アルスのことを忘れる。そして、通信石で今度は街の中に連絡する。
「千の蹄のデュラスだ。頭領に繋げてくれ。」
数秒の待機の後、すぐに目的の人物に繋がる。
「・・・やあ、頭領。先程頼んだ件だが、何人くらい人を出せそうだ?・・・・・・そうか、助かる。そろそろ片付きそうだから、こっちに来てくれ。案内を出す。・・・・・・ああ、素材は期待してくれていい。まあ、質は大したこと無いが、量はいくらでもある。・・・・・・ああ、ではまた後で。」
短いやり取りを終え、デュラスは通信を切る。
そして、近くで待機していたハーピーの団員に指示を出し、「案内」に行かせる。
団員が飛び立ったことを確認したデュラスは1度小さく息を吐く。
「ふぅ・・・。さて、私も向かわなければ。」
彼はそのまま外に向かおうとしたが、部屋を出る直前に何かを思い出したように立ち止まる。
そして数秒考えた後。
「・・・念の為、持っていくとするか。」
呟くと、彼は壁にかかっていた大きなボウガンを手に取り身につける。
重さを確認するように体を軽く動かした後、今度こそ部屋を出ていった。
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