3 / 69
第一章
登山とハイキングの違いとかわかんないけどどっちもキツイのは確か
しおりを挟む
山登りは嫌いだ。というか、体を動かすこと自体が好きじゃないんだけど。
「はあ、はあ、はあ・・・」
息が切れる。汗が目に入る。暑い、疲れた、帰りたい。特に強要されてる訳でもないのに、なんでこんな疲れることをしているんだっけ?もう色々ほっぽり出して帰ってしまおうか。
「いや、ダメだダメだ・・・」
浮かんだ魅力的な考えを振り払う。
いやはや、我ながら驚異的な意思力だ。背中の荷物を背負い直して歩みを続ける。
目的地である部族の集落はもうそろそろのはずだが、どうにもそんな様子は見えない。今歩いてる場所も贔屓目に見てもけもの道だし、これ、道あってるよな・・・?
ここまで来て骨折り損とか流石に勘弁して頂きたい。
とはいえ、今できることは地図を信じて進み続けることだけだ。
最悪何もなかったらそのまま山を越えて反対側に降りていこう・・・その先は地図すらないけど。
それでも同じけもの道を戻って行って完全に無駄足にするよりはいい。
無理矢理にでも前向きに捉えていこう。
・・・と思っていたけど。その必要は無さそうかな?
「よっ・・・と」
とりあえず屈まないと。でないと…
ドスッ
矢が刺さっちゃうし。屈んだ僕の頭上を通り抜けた矢は、そのまま後ろの木に刺さる。
・・・ていうか完全に頭を狙った軌道だなぁ。「彼ら」はともかく、僕は脆弱な人種なので頭に矢なんて刺さった日には余裕で死ぬよ。即死だよ。
威嚇射撃って普通地面とかじゃない?
100歩、いや1万歩くらい譲っても腕とかでしょ。
なんで武装もしてないし、ただ歩いていただけの僕に向かってそこまで躊躇のない射撃ができるの?
彼らの思考プロセス怖すぎるなぁ・・・
とりあえず敵対の意思が無いことをアピールしよう。対話は大事だ。
「えーっと、僕に敵対の意思はありませんよー・・・」
・・・っとと
今度は右にずれる。一拍の後、また木に矢が刺さる。軌道的に完全に心臓の位置だ。殺意高すぎない?
「ちょ、まずは話し合いましょう!僕はただの旅の薬師です!」
言いながら今度は左にずれる。そしてまた一拍の後、今度は地面に矢が刺さる。見た感じ足を狙ったのかな。順序おかしくない?
「わかりました、あなた方の支配区域に無断で侵入したことは謝罪しましょう。しかし、僕とていたずらにあなた方の領域を侵しに来たわけでは・・・」
ドスッ
また矢が刺さるが、今度は初めから地面である。ほんとにどういうことなの?
矢がコミュニケーションツールなの?だとしたらせめて矢文にして貰いたいものだ。プレーンの矢を撃たれてもこっちが読み取れる意思は敵意と殺意くらいだよ。
「ええい、どうあっても敵対するというのですね!そっちがその気なら・・・」
僕は懐から秘密兵器を取り出す。それはカプセルに包まれた液体。
これは僕が造った少しばかり特別な薬だ。
まあ、傑作か失敗作かの2択で聞かれたら僅かな差で失敗作に天秤が揺れるけど・・・今この状態には最適だ。
射手の位置も人数もわからないから、全方位に効果を及ぼせる「これ」は完璧な選択と言えるだろう。
僕はカプセルごと口に放り込む。するとすぐに効果が現れた。
口内に違和感を感じたそのタイミングで、僕は大きく息を吸い込む。その量は明らかに通常時とは比べ物にならず、肺が大きく膨らむ。そして限界まで溜め込んだその空気を。
僕は、大声に変えて一気に解き放つ
「――――――――――――ッ!!!」
言語化できない金切り声が僕の喉から響く。ちゃんと耳を塞いでいたけど、それでも少しクラクラする大音量だ。
これだけの轟音を個人で、更になんの道具も使わずに発せるなんて、我ながら素晴らしい薬剤だ。まあ、使いこなすのに修練がいるあたり、薬としては失敗作なんだけど・・・
【鳥魔叫奏】。それが今僕が使った薬の名だ。造ったのも僕だし使うのも僕だけだから、名前とか本当は何の意味も無いけど・・・。まあ、気分は大事だよね。
肝心の効果は、肺機能の強化及び口内に空気とは音の伝え方が異なる気体を発生させるものだ。
この2つの相乗効果によって、生命体にとって不快な音を声として発生させることができる。
我ながら悪くない薬剤だとは思うんだけど、実際に相手を行動不能にするほどの大音量を出すのは至難の業だし、音源に1番近くなるのは使用者だからちゃんと耳栓しないと自分の耳がやられちゃうんだよなぁ。
諸々の性能を鑑みて、鳥魔叫奏は残念ながら番外試薬だ。
さて、手荒い歓迎は受けたが、まあ悪いことばかりじゃない。道を間違えること無く目的地に着いたことが証明されたし。
薬の出来を自画自賛してて気づかなかったけど、少し遠くで倒れてた大柄な影が耳をおさえながら立ち上がった。多分木から落ちたんだろうなぁ・・・
だいぶふらついてはいるけど意識はしっかりしてるみたいだ。
がっしりとした手足に、2メートルを優に越す巨躯。厳(いかめ)しい顔からは牙が覗いており、肌は青みがかった灰色。そして1番の特徴は頭で鈍く光る二本の角。
『鬼人種』。それが彼らの種族だ。まあ、この部族は鬼人の中では小柄な部類だけど。
「ま、突然の射撃については広い心で水に流すとして。そこのお兄さん、聞こえてます?」
多分大丈夫だとは思うけど。
鳥魔叫奏は人の口からでる大音量っていう不意打ちが前提だから後遺症が残ることはほとんど無い。聴覚が鋭い種族だったらその限りじゃないけど、鬼人種なら平気でしょ。
ここは可能な限り理知的に行こう。
さっきは失敗したけど、対話は大事だ。
「僕は旅の薬師です。今日はあなたがたと少しお話がしたくてお伺いしました。よろしければあなたがたの集落まで案内して頂けると助かります。」
突然の射撃をしてきたあいてに対してこの低姿勢。我ながら完璧な対応だ。
これなら向こうも警戒を・・・って
ドスッ
「うわっ危な!」
遂に目の前から撃ってきたんだけど!?え、どうして?あんなに下手に出てたのに?人間(?)不信になりそう。
容赦の無い射撃に流石に少し混乱する。とはいえその混乱の答えは、思いのほかすぐに得ることができた。
「ぼ、僕の話を・・・」
「da!ju・bertoni!gigi!」
「オゥ・・・」
そうだよね・・・普通、異文化交流ってそこからだったよね・・・
「はあ、はあ、はあ・・・」
息が切れる。汗が目に入る。暑い、疲れた、帰りたい。特に強要されてる訳でもないのに、なんでこんな疲れることをしているんだっけ?もう色々ほっぽり出して帰ってしまおうか。
「いや、ダメだダメだ・・・」
浮かんだ魅力的な考えを振り払う。
いやはや、我ながら驚異的な意思力だ。背中の荷物を背負い直して歩みを続ける。
目的地である部族の集落はもうそろそろのはずだが、どうにもそんな様子は見えない。今歩いてる場所も贔屓目に見てもけもの道だし、これ、道あってるよな・・・?
ここまで来て骨折り損とか流石に勘弁して頂きたい。
とはいえ、今できることは地図を信じて進み続けることだけだ。
最悪何もなかったらそのまま山を越えて反対側に降りていこう・・・その先は地図すらないけど。
それでも同じけもの道を戻って行って完全に無駄足にするよりはいい。
無理矢理にでも前向きに捉えていこう。
・・・と思っていたけど。その必要は無さそうかな?
「よっ・・・と」
とりあえず屈まないと。でないと…
ドスッ
矢が刺さっちゃうし。屈んだ僕の頭上を通り抜けた矢は、そのまま後ろの木に刺さる。
・・・ていうか完全に頭を狙った軌道だなぁ。「彼ら」はともかく、僕は脆弱な人種なので頭に矢なんて刺さった日には余裕で死ぬよ。即死だよ。
威嚇射撃って普通地面とかじゃない?
100歩、いや1万歩くらい譲っても腕とかでしょ。
なんで武装もしてないし、ただ歩いていただけの僕に向かってそこまで躊躇のない射撃ができるの?
彼らの思考プロセス怖すぎるなぁ・・・
とりあえず敵対の意思が無いことをアピールしよう。対話は大事だ。
「えーっと、僕に敵対の意思はありませんよー・・・」
・・・っとと
今度は右にずれる。一拍の後、また木に矢が刺さる。軌道的に完全に心臓の位置だ。殺意高すぎない?
「ちょ、まずは話し合いましょう!僕はただの旅の薬師です!」
言いながら今度は左にずれる。そしてまた一拍の後、今度は地面に矢が刺さる。見た感じ足を狙ったのかな。順序おかしくない?
「わかりました、あなた方の支配区域に無断で侵入したことは謝罪しましょう。しかし、僕とていたずらにあなた方の領域を侵しに来たわけでは・・・」
ドスッ
また矢が刺さるが、今度は初めから地面である。ほんとにどういうことなの?
矢がコミュニケーションツールなの?だとしたらせめて矢文にして貰いたいものだ。プレーンの矢を撃たれてもこっちが読み取れる意思は敵意と殺意くらいだよ。
「ええい、どうあっても敵対するというのですね!そっちがその気なら・・・」
僕は懐から秘密兵器を取り出す。それはカプセルに包まれた液体。
これは僕が造った少しばかり特別な薬だ。
まあ、傑作か失敗作かの2択で聞かれたら僅かな差で失敗作に天秤が揺れるけど・・・今この状態には最適だ。
射手の位置も人数もわからないから、全方位に効果を及ぼせる「これ」は完璧な選択と言えるだろう。
僕はカプセルごと口に放り込む。するとすぐに効果が現れた。
口内に違和感を感じたそのタイミングで、僕は大きく息を吸い込む。その量は明らかに通常時とは比べ物にならず、肺が大きく膨らむ。そして限界まで溜め込んだその空気を。
僕は、大声に変えて一気に解き放つ
「――――――――――――ッ!!!」
言語化できない金切り声が僕の喉から響く。ちゃんと耳を塞いでいたけど、それでも少しクラクラする大音量だ。
これだけの轟音を個人で、更になんの道具も使わずに発せるなんて、我ながら素晴らしい薬剤だ。まあ、使いこなすのに修練がいるあたり、薬としては失敗作なんだけど・・・
【鳥魔叫奏】。それが今僕が使った薬の名だ。造ったのも僕だし使うのも僕だけだから、名前とか本当は何の意味も無いけど・・・。まあ、気分は大事だよね。
肝心の効果は、肺機能の強化及び口内に空気とは音の伝え方が異なる気体を発生させるものだ。
この2つの相乗効果によって、生命体にとって不快な音を声として発生させることができる。
我ながら悪くない薬剤だとは思うんだけど、実際に相手を行動不能にするほどの大音量を出すのは至難の業だし、音源に1番近くなるのは使用者だからちゃんと耳栓しないと自分の耳がやられちゃうんだよなぁ。
諸々の性能を鑑みて、鳥魔叫奏は残念ながら番外試薬だ。
さて、手荒い歓迎は受けたが、まあ悪いことばかりじゃない。道を間違えること無く目的地に着いたことが証明されたし。
薬の出来を自画自賛してて気づかなかったけど、少し遠くで倒れてた大柄な影が耳をおさえながら立ち上がった。多分木から落ちたんだろうなぁ・・・
だいぶふらついてはいるけど意識はしっかりしてるみたいだ。
がっしりとした手足に、2メートルを優に越す巨躯。厳(いかめ)しい顔からは牙が覗いており、肌は青みがかった灰色。そして1番の特徴は頭で鈍く光る二本の角。
『鬼人種』。それが彼らの種族だ。まあ、この部族は鬼人の中では小柄な部類だけど。
「ま、突然の射撃については広い心で水に流すとして。そこのお兄さん、聞こえてます?」
多分大丈夫だとは思うけど。
鳥魔叫奏は人の口からでる大音量っていう不意打ちが前提だから後遺症が残ることはほとんど無い。聴覚が鋭い種族だったらその限りじゃないけど、鬼人種なら平気でしょ。
ここは可能な限り理知的に行こう。
さっきは失敗したけど、対話は大事だ。
「僕は旅の薬師です。今日はあなたがたと少しお話がしたくてお伺いしました。よろしければあなたがたの集落まで案内して頂けると助かります。」
突然の射撃をしてきたあいてに対してこの低姿勢。我ながら完璧な対応だ。
これなら向こうも警戒を・・・って
ドスッ
「うわっ危な!」
遂に目の前から撃ってきたんだけど!?え、どうして?あんなに下手に出てたのに?人間(?)不信になりそう。
容赦の無い射撃に流石に少し混乱する。とはいえその混乱の答えは、思いのほかすぐに得ることができた。
「ぼ、僕の話を・・・」
「da!ju・bertoni!gigi!」
「オゥ・・・」
そうだよね・・・普通、異文化交流ってそこからだったよね・・・
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる