弱小種族による、危険な世界の歩き方。

ハイイロカラス

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第二章

ハイリスクに対してハイリターンにできるかは自分次第

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駐留軍、というからにはもちろんどこかの国に所属しているんだろうし、シャクシャラもそもそもどこかの国の街のはずだ。
街の様子や駐留軍の構成員を見るにおそらく獣人種の国だろう。
ただまあ、僕の知ってる国ではないだろうけど・・・

まあそれはともかく。
軍の詰所とか、そうそう気軽に入れる場所ではない。国家の組織なんだから当然だ。

というわけで、まずは仲介所に来て、素材を見せた。多分だけど、この量と質の素材は仲介所の受付の裁量を越えると思う。
となれば、依頼主の判断を求めることになるだろうから、そこでもう一度色々話し合いといこう。

「てことで、素材を集めてきたんで確認お願いしますー」
「・・・えっと、フォーリス様?この希少素材の山は一体・・・」

呆然とした様子で、目の前に積み上げられた様々な素材を見つめるいつものお姉さん。
その戸惑いも当然だとは思う。それを期待して持ってきたわけだし。

「とりあえず今日の成果です。まだヒルダの鞄の中に入ってるので、広い場所で出したいんですけど良い場所ありますかね?」
「・・・わ、わかりました。仲介所の裏に少しスペースがありますのでそちらでお願いします。」

なんとか落ち着きを取り戻したのか、そう言ってお姉さんは僕たちを案内する。



案内されたのは、四方を壁に囲まれた中庭のような場所だった。

「ここなら十分なスペースがあると思います。ではフォーリス様、今回収集した素材について改めて確認させて頂きますので拝見してよろしいですか?」
「はい、じゃあちょっと失礼して・・・」

僕はまずバックパックに入れていた大きめの素材を並べる。この時点でお姉さんの顔は若干引きつっていたけど、申し訳ないけどこれはほんの一部だ。

「じゃあ次に・・・ヒルダ、僕が言うものを出ていってくれる?」
「ええ、お易い御用です。」

そのまま、ヒルダに頼んで素材を出してもらって僕が区分ごとにまとめておく。

今回は動物性の素材こそ手に入らなかったけど、植物と鉱物は十分以上に手に入った。
その中で僕が知っているものは効能や用途ごとに分け、よく分からないものは適当に採取地ごとに分けた。

「よし、これで全部かな。」
「・・・・・・・・・・」

たっぷり20分ほど使って今回の成果を並べ終える。
お姉さんは絶句している。無理もないだろうなあ。まさかこれ程の素材の宝庫だとは思わなかった。これ慎ましく生活すれば一生生きていけるほどの価値があるのでは?

「フォ、フォーリス様?これをこの短時間で集めたのですか・・・?」
「ほとんどヒルダのおかげですけどね。あ、ついでにこれ、危険地帯の調査記録です。質が良くないのでサービスにしときますよ。」

そう言って軽くなったバックパックから紙を取り出す。手書きで文字はないから絵と数字だけだけど・・・測量結果と接敵回数の記録が主とはいえ精度には自信がある。

「き、危険地帯!?あそこに入られたんですか!?」
「はい、特に問題は無かったです。ね、ヒルダ?」

横で興味深そうに僕の調査結果を覗き見ていたヒルダに話をふる。

「え?あ、ええ、そうですね。特に危険とは感じませんでしたが・・・」
「さ、流石は鬼神種・・・。いえ、むしろ当然なのでしょうかね。」

お姉さんは一周まわって落ち着いたようだ。

「危険地帯に設定されている区域内に現れるゴーレムは、数もさることながら個体の脅威度も段違いなのです。通常のゴーレムであればグイーラさんやレオニールさんの敵ではありませんが、危険地帯の中では彼らでも流石に苦戦は必定かと。」

危険地帯の中では?妙な言い方だ。そもそもそれでは防衛に支障があるのでは?

「うーん、僕にはわからなかったですけど・・・あ、そうか、個体じゃなくて場所そのものが何らかの上位元素の影響を受けてるのかな。」

強力なゴーレムの個体、というわけではなく、強化された個体だった、という可能性がある。

「ヒルダは何か感じた?」
「そうですね・・・確かに一部の範囲では妙に魔力と呪力が濃かったような気がします。」

やっぱりか。道理で希少素材が多かったはずだ。
草木とかもある程度は上位元素を取り込めるので、魔力とかが濃い場所は素材も良いものが手に入りやすい。

「わざわざ危険地帯を調べた甲斐があったかな。」
「凄まじい成果です。・・・これ、もしかして『蘇生薬《ネクタル》』や『万能薬《エリクサー》』が作れるような素材が揃ってませんか?」

並んだ素材を見てお姉さんが呟く。お、詳しいね。

「そうですね。十分な上位元素を込められるような人がやれば作れると思いますよ。」

あの辺の薬は『霊薬』とか『魔薬』の類いなので僕には作れないけど。

「シャクシャラの近くにこれほどの資源があるとは・・・」
「十分な知識と戦闘力が必用ですけどね。それさえあればこの周辺は素材の宝庫です。」

まあ、その条件を揃えるのが割りと難しいんだけど。素材の知識というのは結構覚えるのが難しいし、地域によって若干見た目が異なることもある。特に希少素材と呼ばれる物たちは、上位元素の濃度によって大きく形を変えるからその辺りの見極めも大事だ。
そして戦闘力については言うまでもない。
ヒルダが強すぎて分かりにくいけど、シャクシャラで一番強いというグイーラさんでも苦戦する相手がわらわら出てくる危険地帯は本当に危ないんだろう。

「さて、それはそれとして・・・素材の査定、お願いします。」
「・・・フォーリス様、わかって言っていますね?これほどの素材、私の・・・というより仲介所の裁量で判断できる範囲を越えています。」

そりゃそうだろね。

「では、依頼主・・・駐留軍の方に連絡をお願いします。僕とて、全てを適正価格で買い取れとは言いません。必要ないものは自分で持っておきますしね。」

僕とて薬師。『霊薬』や『魔薬』は作れずとも普通の薬ぐらいなら作れるし。それをシャクシャラ内で売る気はもちろんないけど。

「なるほど、そういうことですか・・・」

お姉さんは色々合点がいったように溜め息混じりに頷いた。

「わかりました。額が額になりますから、なるべく早く来ていただきますが・・・ご存じかもしれませんが、現在シャクシャラでは少し問題が起きておりまして。」
「ああ、例の精霊種の・・・」

まあ、それが僕たちの依頼のそもそもの理由だしね。

「じゃあこの大きめの素材だけ預かっておいて下さい。あと大して高くない汎用素材と・・・」

僕は自分の知識にはないものをまとめた、よくわからない素材郡を指差す。

「その中で価値の低い物があればそれも先に買い取ってもらえますか?」
「かしこまりました。駐留軍に連絡はしておきますので、後程もう一度来ていただきますか?そのときにまた細かい日程と、お預かりした素材の査定結果及び報酬をお渡ししますので。」
「わかりました。じゃあ諸々お願いしますね。」

・・・今日会えたら一番良いけど、そればっかりは向こうの都合だ。仕方ない。

僕たちはそのまま素材を預けると、一旦仲介所を後にする。
せっかく早く帰ってきたんだから、できれば今日中に色々済ませて明日からまた沈黙の平原に行きたいんだけど・・・

まあ、可能であれば、程度の考えだったから良いか。それに、僕達の持ってきた素材の価値がわかる人がいれば、すぐにでも会う気になってくれるだろうし。

それまでは・・・うん、あえて残しておいたいくつかの素材を使って薬を作ろう。
色々と器材が必用だからそれを揃えなきゃいけないけど・・・

今日のところは簡単に作れるものだけでいいか。

とりあえず、一旦宿に戻ろう。
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