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第二章
まともかどうかは周りの人との考え方による
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宿に戻ると、ヒルダが膝の上に少女を乗せてその髪を櫛でとかしていた。
少女は目を覚ましたみたいだけど、ヒルダにされるがままになっている。まだ少し強ばってはいるけど、さっきに比べればずいぶんとリラックスしているみたいだ。
「ただいま、ヒルダ。服、買ってきたよ。」
「あ、お帰りなさい。ほら、ミレイユ、あなたも。」
「う、うん。お帰りなさい、シルヴァ・・・」
お、おお・・・。ヒルダに促されて、少女が僕に挨拶をしてくれた。なんか感動。
「うん、ただいま。なんだか、だいぶ仲良くなったみたいだね。」
「あの後、この子の体をお風呂で洗っている途中で目が覚めたんです。その時は少しパニック気味だったのですが・・・むしろ、特殊な状況過ぎて落ち着いたみたいです。」
まあ、目が覚めたら知らない場所で知らない人にお風呂に入れられていたら驚くどころの騒ぎじゃないだろう。
で、意味がわからなすぎて逆に落ち着いた、と。
「あはは、それは良かった、って言って良いのかな。」
「・・・・・・・・・」
僕は可能な限り穏やかに少女に話しかける。
しかし、少女は無言でヒルダの膝から降りると彼女の背に隠れる。
流石に僕にまで心を許してはくれないか。
「ミレイユ、シルヴァは怖くありませんよ?」
「う、うー・・・」
ヒルダが少女をなだめるけど、少女はヒルダの服を掴んで動こうとしない。
「ああ、いいよ、気にしないで。」
「あ・・・ご、ごめん、なさい。シルヴァ、わたしを助けてくれたのに・・・」
僕としては本当にただ流しただけのつもりだったけど、少女は僕を怒らせたと思ったらしい。
僕の名前やこれまでのいきさつは、ヒルダから聞いていたんだろう。
怖がりながら、本当に申し訳なさそうに謝る。
・・・しかし、ごめんなさい、か。
精霊種の少女には、それだけでも苦痛なはずだろう。罪悪感すら、精霊種には毒だ。
「大丈夫、怒ってないよ。・・・でも、そうだね。せっかくだし、しっかり話をしようか。」
「話を・・・?」
「そんなに構えなくていいよ。まずは、自己紹介といこう。まあヒルダから多少聞いてはいると思うけど、改めてね。」
僕は目線を少女に合わせる。
「僕はシルヴァ・フォーリス。人種の男だ。年は20で、ヒルダとは夫婦だよ。」
特に最後が重要。
僕の簡潔極まる自己紹介に、少女は強ばった顔のまま口を開く。
「人種・・・。ヒルダは、鬼神種って言ってた、よね?」
「ええ、そうですよ。少し、珍しいかもしれませんが・・・」
「珍しい、の?わたし、自分と違う種族の人に会うの初めて、だから・・・」
まあ、精霊種の現状を考えればそれもあり得るのかな。
少女はそれだけ言うと、僕とヒルダを交互に見はじめる。
「ん、どうしたの?」
「・・・二人とも、すごく強い魂の色をしてる・・・」
「魂の、色?」
急に少女が呟いた聞きなれない言葉。
思わずおうむ返しに聞き返すと、少女は頷く。
「う、うん。その、精霊種は生物の魂を見ることができるの・・・」
「へえ、そうなのですか。わたしが上位元素を知覚できるのと同じようなものでしょうか。」
ヒルダはすんなり受け入れているけど、全くピンとこない。っていうか、ヒルダはともかく僕の魂?霊視もできなかった僕にそんなものがあるのだろうか。
そういったスピリチュアルな方面には詳しくないけど、上位元素とは別物ってことなのかな。
「・・・まあ、後でいいか。で、君の名前も聞いていいかな?」
自己紹介はしたので、次はこの子の番だ。
さっきから何度かヒルダが名前を呼んでいるから、わかってはいるんだけど・・・
こういうのは、本人から聞きたい。
そう思って促すと、少女は何度か口ごもりながら話す。
「え、えっと・・・その、わ、わたしは、精霊種の、ミレイユ。」
「そっか、ミレイユっていうんだね。うん、よろしく。」
なるべく柔らかい態度で話す。
この子・・・ミレイユは間違いなく、まともサイドの精霊種だ。しかし、周りからみてまともであることが、ミレイユにとって幸福なこととは限らない。
っていうか、倫理観の無い者に囲まれる普通の人の苦悩など想像に難くない。
そして、精霊種にとって苦悩とは苦痛だ。
「いろいろ聞きたいこともあるんだけど・・・まあ今日のところはもう少し休むといいよ。」
今のシャクシャラの現状を考えると、ミレイユが外に出ないように注意しておかないといけない。下手に駐留軍に見つかったら面倒なことになるし。
ただまあこんな状態のミレイユに直接、ありのままを伝えたらまた負担になるのは目に見えている。
依存性がほぼ無いとはいえ、戦意高揚を多用するのもよろしくないと思うし、時間をかけていこう。
「あ、そうだ。せっかく服を買ってきたんだし着替えてみてよ。ちょっと部屋の外に出てるからさ。ヒルダ、手伝って上げてくれる?」
さっきから色々頼んで申し訳ない。
正直、精霊種の性別とかよくわかってないけど・・・まあ医療行為でもないのに、見た目が少女の相手に過剰に触れるべきじゃないでしょ。名前から察するに女の子という扱いで良いだろうし。
「ええ、わかりました。さあ、ミレイユ、着替えますよ。」
「う、うん・・・え、えっとこの服どうやって着るの・・・?」
「・・・まあ、着てみればきっとわかりますよ。」
す、少し不安も残るけど、多分大丈夫だろう。そこまで難しくないはずだし・・・
僕はとりあえずさっさと部屋を出ると、多分時間がかかると思ったのでお風呂に入りに行くことにした。
一応、中のヒルダに声をかけてから僕はお風呂に向かう。この宿の一番良いところはお昼でもお風呂に入れるところだなぁ。
少女は目を覚ましたみたいだけど、ヒルダにされるがままになっている。まだ少し強ばってはいるけど、さっきに比べればずいぶんとリラックスしているみたいだ。
「ただいま、ヒルダ。服、買ってきたよ。」
「あ、お帰りなさい。ほら、ミレイユ、あなたも。」
「う、うん。お帰りなさい、シルヴァ・・・」
お、おお・・・。ヒルダに促されて、少女が僕に挨拶をしてくれた。なんか感動。
「うん、ただいま。なんだか、だいぶ仲良くなったみたいだね。」
「あの後、この子の体をお風呂で洗っている途中で目が覚めたんです。その時は少しパニック気味だったのですが・・・むしろ、特殊な状況過ぎて落ち着いたみたいです。」
まあ、目が覚めたら知らない場所で知らない人にお風呂に入れられていたら驚くどころの騒ぎじゃないだろう。
で、意味がわからなすぎて逆に落ち着いた、と。
「あはは、それは良かった、って言って良いのかな。」
「・・・・・・・・・」
僕は可能な限り穏やかに少女に話しかける。
しかし、少女は無言でヒルダの膝から降りると彼女の背に隠れる。
流石に僕にまで心を許してはくれないか。
「ミレイユ、シルヴァは怖くありませんよ?」
「う、うー・・・」
ヒルダが少女をなだめるけど、少女はヒルダの服を掴んで動こうとしない。
「ああ、いいよ、気にしないで。」
「あ・・・ご、ごめん、なさい。シルヴァ、わたしを助けてくれたのに・・・」
僕としては本当にただ流しただけのつもりだったけど、少女は僕を怒らせたと思ったらしい。
僕の名前やこれまでのいきさつは、ヒルダから聞いていたんだろう。
怖がりながら、本当に申し訳なさそうに謝る。
・・・しかし、ごめんなさい、か。
精霊種の少女には、それだけでも苦痛なはずだろう。罪悪感すら、精霊種には毒だ。
「大丈夫、怒ってないよ。・・・でも、そうだね。せっかくだし、しっかり話をしようか。」
「話を・・・?」
「そんなに構えなくていいよ。まずは、自己紹介といこう。まあヒルダから多少聞いてはいると思うけど、改めてね。」
僕は目線を少女に合わせる。
「僕はシルヴァ・フォーリス。人種の男だ。年は20で、ヒルダとは夫婦だよ。」
特に最後が重要。
僕の簡潔極まる自己紹介に、少女は強ばった顔のまま口を開く。
「人種・・・。ヒルダは、鬼神種って言ってた、よね?」
「ええ、そうですよ。少し、珍しいかもしれませんが・・・」
「珍しい、の?わたし、自分と違う種族の人に会うの初めて、だから・・・」
まあ、精霊種の現状を考えればそれもあり得るのかな。
少女はそれだけ言うと、僕とヒルダを交互に見はじめる。
「ん、どうしたの?」
「・・・二人とも、すごく強い魂の色をしてる・・・」
「魂の、色?」
急に少女が呟いた聞きなれない言葉。
思わずおうむ返しに聞き返すと、少女は頷く。
「う、うん。その、精霊種は生物の魂を見ることができるの・・・」
「へえ、そうなのですか。わたしが上位元素を知覚できるのと同じようなものでしょうか。」
ヒルダはすんなり受け入れているけど、全くピンとこない。っていうか、ヒルダはともかく僕の魂?霊視もできなかった僕にそんなものがあるのだろうか。
そういったスピリチュアルな方面には詳しくないけど、上位元素とは別物ってことなのかな。
「・・・まあ、後でいいか。で、君の名前も聞いていいかな?」
自己紹介はしたので、次はこの子の番だ。
さっきから何度かヒルダが名前を呼んでいるから、わかってはいるんだけど・・・
こういうのは、本人から聞きたい。
そう思って促すと、少女は何度か口ごもりながら話す。
「え、えっと・・・その、わ、わたしは、精霊種の、ミレイユ。」
「そっか、ミレイユっていうんだね。うん、よろしく。」
なるべく柔らかい態度で話す。
この子・・・ミレイユは間違いなく、まともサイドの精霊種だ。しかし、周りからみてまともであることが、ミレイユにとって幸福なこととは限らない。
っていうか、倫理観の無い者に囲まれる普通の人の苦悩など想像に難くない。
そして、精霊種にとって苦悩とは苦痛だ。
「いろいろ聞きたいこともあるんだけど・・・まあ今日のところはもう少し休むといいよ。」
今のシャクシャラの現状を考えると、ミレイユが外に出ないように注意しておかないといけない。下手に駐留軍に見つかったら面倒なことになるし。
ただまあこんな状態のミレイユに直接、ありのままを伝えたらまた負担になるのは目に見えている。
依存性がほぼ無いとはいえ、戦意高揚を多用するのもよろしくないと思うし、時間をかけていこう。
「あ、そうだ。せっかく服を買ってきたんだし着替えてみてよ。ちょっと部屋の外に出てるからさ。ヒルダ、手伝って上げてくれる?」
さっきから色々頼んで申し訳ない。
正直、精霊種の性別とかよくわかってないけど・・・まあ医療行為でもないのに、見た目が少女の相手に過剰に触れるべきじゃないでしょ。名前から察するに女の子という扱いで良いだろうし。
「ええ、わかりました。さあ、ミレイユ、着替えますよ。」
「う、うん・・・え、えっとこの服どうやって着るの・・・?」
「・・・まあ、着てみればきっとわかりますよ。」
す、少し不安も残るけど、多分大丈夫だろう。そこまで難しくないはずだし・・・
僕はとりあえずさっさと部屋を出ると、多分時間がかかると思ったのでお風呂に入りに行くことにした。
一応、中のヒルダに声をかけてから僕はお風呂に向かう。この宿の一番良いところはお昼でもお風呂に入れるところだなぁ。
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