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第二章
話を聞くことは相手を知ること。つまり相応の覚悟がいる
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別に大して問題にしていなかったけど。
僕はミレイユについて何もしらない。しかし、それを言ったらヒルダのことについても知らないことばかりだ。
では、知りたいと思わないのかと言われたら。
そりゃあもちろん、知れるなら知りたいに決まっている。ミレイユのことも、ヒルダのことも。
さっきは格好つけて、話したくないなら聞かない、みたいなこと言ったけど・・・
正直に言えば、どこまで踏み込んでいいのかわからないからうやむやにしただけです。
対人経験の少ない僕に、見るからにデリケートな問題に突っ込んでいく勇気なんてあるわけがない。
宿に戻ろうって言ったのも、落ち着きたいこと以上に、僕の心の準備が必要だったというところもある。
情けないとか言わないでください、僕が一番思ってるんだから。
「ふー、やっと落ち着けたね。誰にも怪しまれてはいないみたいだったし、良かったよ。」
「そうですね。・・・とりあえず、一旦ミレイユにかけている魔法を解きますね。繊細だからか思ったより疲れます・・・。」
そう言うヒルダの顔は、確かにすこし辛そうだった。
「遠慮しないで横になってなよ。・・・そうだな、二人とも少し待ってて。何か食べられるものを用意するから。」
話が長くなるかどうかはわかんないけど、まあ食べながらゆっくりとね。
・・・決して、逃げているわけではないよ?
「いえ、それは後で大丈夫です。まずはミレイユの話を聞くのが先決でしょう。時間を置いたら話しづらくなるかもしれませんし。」
「・・・・・・・・・・・・・・そうだね。」
まったくもってその通りですね。
・・・まあ、ミレイユが聞いてほしいと言ったんだし、今更恐れることなんて一つも無いか。
仮にどんな事情があっても、それでミレイユを見捨てることはしないし。
話の内容がどんなものであろうと、それ自体は
なんの懸念もしていない。
僕が気にしていたのは、自分から踏み込んでいいものかどうかってとこだったし。
「じゃあミレイユ。自分のペースでいいから、話を聞かせてくれるかな。」
「・・・うん。」
髪を緑色に戻したミレイユが、神妙に頷く。
「その、わたしが知っていることなんて、あんまりない、から。話せるのは、わたしのことだけになるけど・・・」
「大丈夫、精霊種の情報をよこせなんていわないよ。」
その辺りは勝手にこっちで考えるからね。
「あ、ありがとう・・・。そ、それで、どこから話せばいいのかわからないけど・・・」
「どこからでも、無理に整理しようとしなくていいからね。」
最終的にこっちでまとめればいいし。
「え、えっと、じゃあ・・・」
「うん。」
「あの、さっきの人が言ってた女王は・・・」
「うん。」
「わたしの、お母さん、なの。」
「うん。・・・うん?」
え、いまなんて?
「ごめんミレイユ、もう一度言ってくれる?」
「え、えっと、女王は、わたしのお母さん、なの。」
「・・・・・・・・なるほど、そうきたかぁー」
予想外というかなんというか。いやまあ、そもそもなんの予想もしていなかったんだけど。
「その、早速の質問で申し訳ないんだけどさ。精霊種の親子ってどういうことなの?」
僕は精霊種の生態・・・という言い方が正しいのかはわからないけど、ともかく細かい部分には詳しくない。
でも、僕やヒルダとは根本的に違うだろうことは確かだ。
精神が実体を持った、という時点で色んな意味でふわっとしてるのに・・・
「どういうこと、って言われても・・・」
「ああいや、ごめん、ただの興味だしやっぱりいいよ。気にしないで」
いかんいかん、関係ないところで話の腰を折ってしまった。
今は精霊種の生態について知見を深めている状況じゃない。
「・・・しかしそうか、母親か・・・」
「ということは、ミレイユは王女・・・お姫様、ということになりますね。」
まあ、そうなのかな?鬼人みたいに、一番強い者が長になるような種族でもないだろうし。
ヒルダのその言葉に、しかしミレイユは悲しそうな表情で首を横に振る。
「・・・わたしのお母さんは女王さま、だけど・・・わたしは、お姫さまなんかじゃないよ。」
そしてミレイユは、俯きながら続ける。
「だって、わたしは『忌み子』だから。」
「『忌み子』・・・?」
穏やかじゃない言葉が出てきたなぁ。
忌み子、か。言葉としてはもちろん知っているけど、精霊種にとってそれがどういう意味なのかはわからない。
「わたしは、望まれない存在なの。だから、わたしはずっと一人で部屋に居たの。」
「・・・それは、ミレイユが自分の意思で部屋に居たの?それとも・・・」
聞くべきか少し迷ったけど、これは重要だ。
「・・・・・・・・お母さんが、そこに居なさい、って言ってたから。出てきちゃだめ、って言ってたから・・・」
「そっか・・・」
この分だと、恐らく閉じ込められていたのだろう。
しかし、女王の娘でありながらそのような扱いをされるとは・・・『忌み子』ってのは、いったいなんなんだろう。
「辛かったら無理に言わなくていいけど・・・その、『忌み子』っていうのはどういう意味なの?」
「わたしには、よく、わからない・・・でも、お母さんは、わたしを出来損ないだって・・・精霊の力も使えない忌まわしい存在だって。」
精霊の力を、使えない?
精霊種の力と言えば、その圧倒的な魔力適性だ。
先ほどの権能持ちの精霊種は少し特殊な例だけど・・・
基本的に精霊種は魔力にしか適性を持たないけど、その適性は上位種にすら迫る。
「ヒルダ、ミレイユの適性ってどんな感じ?」
「そうですね・・・適性元素は魔力のみですが、その適性は非常に高いですね。先ほどの権能持ちの精霊種と同等かそれ以上です。」
「ふむ・・・」
権能持ちに匹敵する魔力適性、か。
それほどの適性を持ちながら、精霊の力を使えない『忌み子』ってのはどういう・・・
「うーん・・・あ、ひょっとして。」
精霊の力を持たない、ではなく使えない、という言い方。
そして初めてミレイユに会った時の状況。
そこから考えると。
「ミレイユってもしかして、魔法が使えない?」
「え・・・ま、まほう?な、なに、それ・・・?」
「あー、そうだなぁ・・・」
説明するのが難しい。ざっくりとした定義としては、魔力を用いた事象改変、なんだけど。
それを言葉で説明してもピンと来ないだろうし・・・
「ヒルダ、なにかわかりやすい魔法って使える?できれば簡単に真似できそうなやつ。」
「なかなか難しいお願いですね・・・」
僕のおおざっぱなお願いに、ヒルダは溜め息をつきながら頷いた。頼りになるなぁ。
「そうですね・・・以前使ったものですが。」
そう言うと、ヒルダの周囲が明るくなる。
これは、あの時の洞窟でヒルダが使った光源魔法か。
「うん、ありがとう。・・・で、ミレイユ。これが魔法だよ。」
「まほう・・・。」
突然明るくなった周囲に、ミレイユが目を瞬かせる。
さて、次だ。
「ヒルダ、この魔法どうやって使ってるの?」
「これはほとんど何も制御せずに、ただ魔力を放出しながら光るよう念じているだけです。体外の魔力を用いる必要がないので、恐らくもっとも簡単な魔法の一つです。」
へえ、なるほど。良くわかんないけど、ヒルダがそう言うならそうなんだろう。
魔力を放出ってのがどうやるかは・・・ヒルダに任せよう。
「では、ミレイユ。あなたほどの適性があれば、ただそう念じるだけで出きるはずです。」
「念じる・・・」
「そうです。では、自分の周りが光るように願ってみてください。」
「う、うん・・・」
ヒルダの言葉に、ミレイユはしばらく無言で目を閉じる。
しかし。
「・・・何も、起きませんね。」
「ご、ごめん、なさい。」
「謝る必要なんてありませんよ。魔法の存在も知らない状態だったのですし、すぐに使えるようにならなくても問題ありません。」
ヒルダはそう言って優しく微笑みながら、ミレイユの頭を撫でる。
「何事も、はじめが一番難しいのですから。」
「う、うん。あ、ありがとう、ヒルダ・・・」
良かった、ヒルダのおかげでミレイユも落ち着いているみたいだ。
しかし、やはりミレイユは魔法が使えないみたいかな。そもそも、ヒルダに匹敵するほどの魔力適性があれば、危険地帯でもない場所のゴーレムに遅れをとるはずがない。
さて、ともかく。ミレイユが『忌み子』とされていた理由は魔法が使えないからだろう。
魔力適性しかないのに、魔法が使えないとなれば確かに精霊種としての力は何も使えないことになる。
まあ、適性がある時点で肉体 (?)強度は僕より上だろうけども。
「・・・でもそうなると、何であの精霊種はあそこまでのことをしてミレイユを連れ帰りにきたんだろう?」
「そ、それは、わたしにもわからない、けど・・・」
僕の疑問に、ミレイユは少しいいよどむ。
「なにか、心当たりはない?」
「・・・ひ、ひとつだけ。関係あるか、わからない、けど。」
「一応、聞かせてくれる?」
ミレイユから得られる情報だけで全てを判断しようなんて思っちゃいない。
ここまで来たら、ミレイユが話したいこと全部話して気持ちを楽にさせることの方が重要だろう。
「えっと、じゃあ・・・その、私が部屋にいた時にお母さんが、『あなたは、我らの神の花嫁となるのです』って、言ってたの。」
「神の、花嫁・・・」
それ多分、言葉通りの意味じゃないなぁ。
本人を目の前にして口にはしないけど。
全く同じ文言で、生贄を捧げていた部族を見たことがある。
「なるほどね、大体予想はできたよ。」
魔法が使えないとはいえ、ミレイユ自身は高い魔力適性を持っている。
それはもう、秘術の触媒としてこれ以上ない存在だろう。
「ヒルダ、ミレイユをお願い。僕は少し、今の話を整理しながら、準備をするよ。ご飯は用意していくから、それでも食べててよ。」
「はい、分かりました。ミレイユのことは任せてください。」
「それと、ヒルダ・・・」
僕は頷くヒルダに手招きをする。そしてその耳に口を近付けて囁く。
「できれば、ミレイユがどうして沈黙の平原に居たのかも聞いておいて。なるべく自然な感じで。」
「・・・ええ、分かりました。こちらは心配せずに、シルヴァは心置きなくやるべき事をしてきてください。」
やはり、ヒルダは頼りになる。
さて、とりあえず状況が思ったより早く動いたしこっちもさっさと行動しよう。
レオニールさんは多分いまめちゃくちゃ忙しいだろうから・・・まあ、色々事後報告でいいか。
あまり、部屋の中にこもって考え続けてるのも時間が勿体ないし、ね。
僕は残っていた食材で手早く簡単な食事を作って、そのまま外に出る。
まずは、薬の材料を買いに行こう。
精霊種との、正面衝突も想定しないといけないだろうし。
戦闘強化薬は多分作れないけど・・・
それならば、それ以外の対策を考えるまでだ。
僕はミレイユについて何もしらない。しかし、それを言ったらヒルダのことについても知らないことばかりだ。
では、知りたいと思わないのかと言われたら。
そりゃあもちろん、知れるなら知りたいに決まっている。ミレイユのことも、ヒルダのことも。
さっきは格好つけて、話したくないなら聞かない、みたいなこと言ったけど・・・
正直に言えば、どこまで踏み込んでいいのかわからないからうやむやにしただけです。
対人経験の少ない僕に、見るからにデリケートな問題に突っ込んでいく勇気なんてあるわけがない。
宿に戻ろうって言ったのも、落ち着きたいこと以上に、僕の心の準備が必要だったというところもある。
情けないとか言わないでください、僕が一番思ってるんだから。
「ふー、やっと落ち着けたね。誰にも怪しまれてはいないみたいだったし、良かったよ。」
「そうですね。・・・とりあえず、一旦ミレイユにかけている魔法を解きますね。繊細だからか思ったより疲れます・・・。」
そう言うヒルダの顔は、確かにすこし辛そうだった。
「遠慮しないで横になってなよ。・・・そうだな、二人とも少し待ってて。何か食べられるものを用意するから。」
話が長くなるかどうかはわかんないけど、まあ食べながらゆっくりとね。
・・・決して、逃げているわけではないよ?
「いえ、それは後で大丈夫です。まずはミレイユの話を聞くのが先決でしょう。時間を置いたら話しづらくなるかもしれませんし。」
「・・・・・・・・・・・・・・そうだね。」
まったくもってその通りですね。
・・・まあ、ミレイユが聞いてほしいと言ったんだし、今更恐れることなんて一つも無いか。
仮にどんな事情があっても、それでミレイユを見捨てることはしないし。
話の内容がどんなものであろうと、それ自体は
なんの懸念もしていない。
僕が気にしていたのは、自分から踏み込んでいいものかどうかってとこだったし。
「じゃあミレイユ。自分のペースでいいから、話を聞かせてくれるかな。」
「・・・うん。」
髪を緑色に戻したミレイユが、神妙に頷く。
「その、わたしが知っていることなんて、あんまりない、から。話せるのは、わたしのことだけになるけど・・・」
「大丈夫、精霊種の情報をよこせなんていわないよ。」
その辺りは勝手にこっちで考えるからね。
「あ、ありがとう・・・。そ、それで、どこから話せばいいのかわからないけど・・・」
「どこからでも、無理に整理しようとしなくていいからね。」
最終的にこっちでまとめればいいし。
「え、えっと、じゃあ・・・」
「うん。」
「あの、さっきの人が言ってた女王は・・・」
「うん。」
「わたしの、お母さん、なの。」
「うん。・・・うん?」
え、いまなんて?
「ごめんミレイユ、もう一度言ってくれる?」
「え、えっと、女王は、わたしのお母さん、なの。」
「・・・・・・・・なるほど、そうきたかぁー」
予想外というかなんというか。いやまあ、そもそもなんの予想もしていなかったんだけど。
「その、早速の質問で申し訳ないんだけどさ。精霊種の親子ってどういうことなの?」
僕は精霊種の生態・・・という言い方が正しいのかはわからないけど、ともかく細かい部分には詳しくない。
でも、僕やヒルダとは根本的に違うだろうことは確かだ。
精神が実体を持った、という時点で色んな意味でふわっとしてるのに・・・
「どういうこと、って言われても・・・」
「ああいや、ごめん、ただの興味だしやっぱりいいよ。気にしないで」
いかんいかん、関係ないところで話の腰を折ってしまった。
今は精霊種の生態について知見を深めている状況じゃない。
「・・・しかしそうか、母親か・・・」
「ということは、ミレイユは王女・・・お姫様、ということになりますね。」
まあ、そうなのかな?鬼人みたいに、一番強い者が長になるような種族でもないだろうし。
ヒルダのその言葉に、しかしミレイユは悲しそうな表情で首を横に振る。
「・・・わたしのお母さんは女王さま、だけど・・・わたしは、お姫さまなんかじゃないよ。」
そしてミレイユは、俯きながら続ける。
「だって、わたしは『忌み子』だから。」
「『忌み子』・・・?」
穏やかじゃない言葉が出てきたなぁ。
忌み子、か。言葉としてはもちろん知っているけど、精霊種にとってそれがどういう意味なのかはわからない。
「わたしは、望まれない存在なの。だから、わたしはずっと一人で部屋に居たの。」
「・・・それは、ミレイユが自分の意思で部屋に居たの?それとも・・・」
聞くべきか少し迷ったけど、これは重要だ。
「・・・・・・・・お母さんが、そこに居なさい、って言ってたから。出てきちゃだめ、って言ってたから・・・」
「そっか・・・」
この分だと、恐らく閉じ込められていたのだろう。
しかし、女王の娘でありながらそのような扱いをされるとは・・・『忌み子』ってのは、いったいなんなんだろう。
「辛かったら無理に言わなくていいけど・・・その、『忌み子』っていうのはどういう意味なの?」
「わたしには、よく、わからない・・・でも、お母さんは、わたしを出来損ないだって・・・精霊の力も使えない忌まわしい存在だって。」
精霊の力を、使えない?
精霊種の力と言えば、その圧倒的な魔力適性だ。
先ほどの権能持ちの精霊種は少し特殊な例だけど・・・
基本的に精霊種は魔力にしか適性を持たないけど、その適性は上位種にすら迫る。
「ヒルダ、ミレイユの適性ってどんな感じ?」
「そうですね・・・適性元素は魔力のみですが、その適性は非常に高いですね。先ほどの権能持ちの精霊種と同等かそれ以上です。」
「ふむ・・・」
権能持ちに匹敵する魔力適性、か。
それほどの適性を持ちながら、精霊の力を使えない『忌み子』ってのはどういう・・・
「うーん・・・あ、ひょっとして。」
精霊の力を持たない、ではなく使えない、という言い方。
そして初めてミレイユに会った時の状況。
そこから考えると。
「ミレイユってもしかして、魔法が使えない?」
「え・・・ま、まほう?な、なに、それ・・・?」
「あー、そうだなぁ・・・」
説明するのが難しい。ざっくりとした定義としては、魔力を用いた事象改変、なんだけど。
それを言葉で説明してもピンと来ないだろうし・・・
「ヒルダ、なにかわかりやすい魔法って使える?できれば簡単に真似できそうなやつ。」
「なかなか難しいお願いですね・・・」
僕のおおざっぱなお願いに、ヒルダは溜め息をつきながら頷いた。頼りになるなぁ。
「そうですね・・・以前使ったものですが。」
そう言うと、ヒルダの周囲が明るくなる。
これは、あの時の洞窟でヒルダが使った光源魔法か。
「うん、ありがとう。・・・で、ミレイユ。これが魔法だよ。」
「まほう・・・。」
突然明るくなった周囲に、ミレイユが目を瞬かせる。
さて、次だ。
「ヒルダ、この魔法どうやって使ってるの?」
「これはほとんど何も制御せずに、ただ魔力を放出しながら光るよう念じているだけです。体外の魔力を用いる必要がないので、恐らくもっとも簡単な魔法の一つです。」
へえ、なるほど。良くわかんないけど、ヒルダがそう言うならそうなんだろう。
魔力を放出ってのがどうやるかは・・・ヒルダに任せよう。
「では、ミレイユ。あなたほどの適性があれば、ただそう念じるだけで出きるはずです。」
「念じる・・・」
「そうです。では、自分の周りが光るように願ってみてください。」
「う、うん・・・」
ヒルダの言葉に、ミレイユはしばらく無言で目を閉じる。
しかし。
「・・・何も、起きませんね。」
「ご、ごめん、なさい。」
「謝る必要なんてありませんよ。魔法の存在も知らない状態だったのですし、すぐに使えるようにならなくても問題ありません。」
ヒルダはそう言って優しく微笑みながら、ミレイユの頭を撫でる。
「何事も、はじめが一番難しいのですから。」
「う、うん。あ、ありがとう、ヒルダ・・・」
良かった、ヒルダのおかげでミレイユも落ち着いているみたいだ。
しかし、やはりミレイユは魔法が使えないみたいかな。そもそも、ヒルダに匹敵するほどの魔力適性があれば、危険地帯でもない場所のゴーレムに遅れをとるはずがない。
さて、ともかく。ミレイユが『忌み子』とされていた理由は魔法が使えないからだろう。
魔力適性しかないのに、魔法が使えないとなれば確かに精霊種としての力は何も使えないことになる。
まあ、適性がある時点で肉体 (?)強度は僕より上だろうけども。
「・・・でもそうなると、何であの精霊種はあそこまでのことをしてミレイユを連れ帰りにきたんだろう?」
「そ、それは、わたしにもわからない、けど・・・」
僕の疑問に、ミレイユは少しいいよどむ。
「なにか、心当たりはない?」
「・・・ひ、ひとつだけ。関係あるか、わからない、けど。」
「一応、聞かせてくれる?」
ミレイユから得られる情報だけで全てを判断しようなんて思っちゃいない。
ここまで来たら、ミレイユが話したいこと全部話して気持ちを楽にさせることの方が重要だろう。
「えっと、じゃあ・・・その、私が部屋にいた時にお母さんが、『あなたは、我らの神の花嫁となるのです』って、言ってたの。」
「神の、花嫁・・・」
それ多分、言葉通りの意味じゃないなぁ。
本人を目の前にして口にはしないけど。
全く同じ文言で、生贄を捧げていた部族を見たことがある。
「なるほどね、大体予想はできたよ。」
魔法が使えないとはいえ、ミレイユ自身は高い魔力適性を持っている。
それはもう、秘術の触媒としてこれ以上ない存在だろう。
「ヒルダ、ミレイユをお願い。僕は少し、今の話を整理しながら、準備をするよ。ご飯は用意していくから、それでも食べててよ。」
「はい、分かりました。ミレイユのことは任せてください。」
「それと、ヒルダ・・・」
僕は頷くヒルダに手招きをする。そしてその耳に口を近付けて囁く。
「できれば、ミレイユがどうして沈黙の平原に居たのかも聞いておいて。なるべく自然な感じで。」
「・・・ええ、分かりました。こちらは心配せずに、シルヴァは心置きなくやるべき事をしてきてください。」
やはり、ヒルダは頼りになる。
さて、とりあえず状況が思ったより早く動いたしこっちもさっさと行動しよう。
レオニールさんは多分いまめちゃくちゃ忙しいだろうから・・・まあ、色々事後報告でいいか。
あまり、部屋の中にこもって考え続けてるのも時間が勿体ないし、ね。
僕は残っていた食材で手早く簡単な食事を作って、そのまま外に出る。
まずは、薬の材料を買いに行こう。
精霊種との、正面衝突も想定しないといけないだろうし。
戦闘強化薬は多分作れないけど・・・
それならば、それ以外の対策を考えるまでだ。
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