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第1話 信託
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灰原《はいばら》響夜《きょうや》の眼にはどこまでも続き、どこまでも暗い廊下が映し出されている。ポタリ、ポタリと雫が落ちるような音が響く度にその廊下はグニャリと蠕動していた。
それに響夜《きょうや》は特に疑問を抱くことは無く惹きつけられ一歩一歩と着実に歩みを進めていく。しばらく進んでいくと終わりが無い様に見えた深い闇が一転、廊下の天井から急に柔らかな光を発し始める。
見るだけで安らぎをもたらすその光は響夜《きょうや》を丸く包みこむ。するとまるで母親に抱かれているかのような安心感に響夜《きょうや》はあっさり目を閉じた。包み込んだまま光は猛スピードで廊下の天井をすり抜け激烈な速度で高度を上げていく。物音を立てずに強烈な速さで上っていく様は正しく光だった。
そして光は上りきって、先ほどまでの勢いが無かったと錯覚するほどピタリ、と静止する。光は響夜を静かに地面に置くとキラキラと破片を輝かせながら拡散して消えていく。光が完全に消えてしまうと唐突に不安に駆られた響夜は目を覚ました。
覚ました響夜はキョロキョロと辺りを見回し思わず呟く。
「何だこれ」
彼がそう言うのも無理は無いだろう。見える範囲では辺り一体がスイートピー、コスモスといった花で埋め尽くされており地面はピンク、赤と白の三色しか無い。それに建物と言ったら目の前に聳え《そびえ》立つ古代ローマ風の建築物しかなかったのだから。
彼が唖然と突っ立っているうちに勝手に扉が重厚な音を立てて開いた。音で硬直状態から脱した響夜は中を覗いて見た。すると中身は良くある教会であることがわかる。ホッと彼は安堵した。何の変哲も無い教会。まだ馴染みのあるものだ。
(取りあえず帰る方法を探す為の拠点にしよう)そう思い一歩足を踏み入れる。その直後、像がガタガタ揺れ光を出し始めた。ガタガタとけたたましい音に圧倒されたのか思うように響夜は体を動かせない。
動かそうとしている内に魔方陣が上に展開され徐々に下に下がり像を光に変えていく。………キュイン、という音と共に完全に像は消え失せ眩い光の中から少女が出てきた。
その白髪碧眼のか弱そうな少女は背中に柔らかな光で象られた翼を生やした。キラン、綺麗に光の粒子が桜の様に舞い散る。(これが神)そう直感し響夜《きょうや》は跪き、頭をたれた。そんな響夜に優しく語りかける。
「今、あなたの世界は別の世界と連結しました」
「別の世界と連結?」
「そうです。魔法が発展した別の世界とつながってしまいました」
「なぜそれを私に?」
「今、その世界は魔獣と戦争中なのです。魔獣には魔法しか効きません」
「それがこの世界に入ってきたらマズイ!!!」
ようやく彼は事態の大変さに気づいた。動揺し、困惑する彼にそれでも少女は笑顔を浮かべて話し続ける。
「大丈夫です。幸いあなたを含めた素晴らしい高さの魔法の適正を持つ人たちが居ますから」
「つまり、俺とその魔法適正が高い連中が戦えば何とかなるんですか?」
「はい、ですからあなたには戦って欲しいのです」
「わかりました。戦います。ですけど厚かましいお願いですが魔法の使い方を教えてくれませんか?」
「時間が来てしまいました。魔法の使い方にはいずれ解ることになるでしょう」
そう告げて少女は光の球になり一瞬で遥か彼方の何処かに飛んでいってしまった。
それに響夜《きょうや》は特に疑問を抱くことは無く惹きつけられ一歩一歩と着実に歩みを進めていく。しばらく進んでいくと終わりが無い様に見えた深い闇が一転、廊下の天井から急に柔らかな光を発し始める。
見るだけで安らぎをもたらすその光は響夜《きょうや》を丸く包みこむ。するとまるで母親に抱かれているかのような安心感に響夜《きょうや》はあっさり目を閉じた。包み込んだまま光は猛スピードで廊下の天井をすり抜け激烈な速度で高度を上げていく。物音を立てずに強烈な速さで上っていく様は正しく光だった。
そして光は上りきって、先ほどまでの勢いが無かったと錯覚するほどピタリ、と静止する。光は響夜を静かに地面に置くとキラキラと破片を輝かせながら拡散して消えていく。光が完全に消えてしまうと唐突に不安に駆られた響夜は目を覚ました。
覚ました響夜はキョロキョロと辺りを見回し思わず呟く。
「何だこれ」
彼がそう言うのも無理は無いだろう。見える範囲では辺り一体がスイートピー、コスモスといった花で埋め尽くされており地面はピンク、赤と白の三色しか無い。それに建物と言ったら目の前に聳え《そびえ》立つ古代ローマ風の建築物しかなかったのだから。
彼が唖然と突っ立っているうちに勝手に扉が重厚な音を立てて開いた。音で硬直状態から脱した響夜は中を覗いて見た。すると中身は良くある教会であることがわかる。ホッと彼は安堵した。何の変哲も無い教会。まだ馴染みのあるものだ。
(取りあえず帰る方法を探す為の拠点にしよう)そう思い一歩足を踏み入れる。その直後、像がガタガタ揺れ光を出し始めた。ガタガタとけたたましい音に圧倒されたのか思うように響夜は体を動かせない。
動かそうとしている内に魔方陣が上に展開され徐々に下に下がり像を光に変えていく。………キュイン、という音と共に完全に像は消え失せ眩い光の中から少女が出てきた。
その白髪碧眼のか弱そうな少女は背中に柔らかな光で象られた翼を生やした。キラン、綺麗に光の粒子が桜の様に舞い散る。(これが神)そう直感し響夜《きょうや》は跪き、頭をたれた。そんな響夜に優しく語りかける。
「今、あなたの世界は別の世界と連結しました」
「別の世界と連結?」
「そうです。魔法が発展した別の世界とつながってしまいました」
「なぜそれを私に?」
「今、その世界は魔獣と戦争中なのです。魔獣には魔法しか効きません」
「それがこの世界に入ってきたらマズイ!!!」
ようやく彼は事態の大変さに気づいた。動揺し、困惑する彼にそれでも少女は笑顔を浮かべて話し続ける。
「大丈夫です。幸いあなたを含めた素晴らしい高さの魔法の適正を持つ人たちが居ますから」
「つまり、俺とその魔法適正が高い連中が戦えば何とかなるんですか?」
「はい、ですからあなたには戦って欲しいのです」
「わかりました。戦います。ですけど厚かましいお願いですが魔法の使い方を教えてくれませんか?」
「時間が来てしまいました。魔法の使い方にはいずれ解ることになるでしょう」
そう告げて少女は光の球になり一瞬で遥か彼方の何処かに飛んでいってしまった。
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