51 / 151
第7章
46 ベリトと野ウサギ ① ⚠
しおりを挟む
正午を少し過ぎた頃、大きな手荷物を抱えた二人の男女が部屋を訪れた。
「こんにちは、バーデン・バーデンの処女さん。僕のこと、覚えてますかね?」
男性の方がにこやかに挨拶をしてきた。年の頃は凌遅と同年代か少し下くらい。動きやすそうな街着姿で、肩には小型のショルダーバッグを提げている。明るい色味の短髪に人懐っこい目元、こぶしが入るほど大きな口が印象的だ。
この人がベリトか。夜会の時は生きるか死ぬかの極限状態に置かれていたので、司会を務めていた彼の風体などほとんど記憶していなかったのだが、必要以上に明るく滑舌の良い話し口には覚えがあった。
「その節はどうも。今日は、よろしくお願いします」
私が形式的な返答をすると、
「久しぶりだね、お人形さん。あたしのことも覚えてる?」
ベリトの背後から顔を覗かせた女性が、試すような視線を向けてきた。
ベリーショートにパンツタイプのセットアップを纏った彼女は、背の高さも相まって男性的というか威圧的なオーラを放っている。
「ええ、もちろん……」
忘れるわけがない。これほどインパクトが強い女性にはなかなかお目にかかれない。
「あっそう」
彼女──野ウサギはこちらを睥睨すると、馬鹿にしたような口振りで言った。
「聞いたよ。あんた、クエマドロにヤラレそうになったんだって?」
その発言に場が凍る。ベリトの目が泳ぐのを見て、ソースは彼だと確信した。
いや、一連の流れを収めた動画は凌遅が回収済みなので、そのまま彼のチャンネルに上げられるかして、とっくの昔に周知の事実なのかも知れない。
野ウサギはなおも続ける。
「あんなわかりやすい遊び人にのこのこ付いて行くかね、普通。手負いで尻拭いさせられる凌遅くんは堪ったもんじゃないだろうよ。ド新人とは言え、ちょっとくらい危機感持ったら?」
この人はずっと私に悪意をぶつけてくる。あまりいい気はしないが、素直に応じてさえいれば大きな問題は起こらないだろう。そう思い、
「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫です。少しは考えていますので……」
ひとまずそう返すと、野ウサギはわざとらしく口の端を吊り上げる。
「……なんか生意気だよね、あんた。やっぱり教育してやるべきかな……」
「まあまあ、野ウサギさん」
ここで初めて、ベリトが口を出した。
「ダメですよ、新人さんをいじめちゃ。今日一日、仲良く過ごせるように協力し合わないと。ね? 凌遅さん」
凌遅は片笑み、「無理に仲良くする必要はないが、適切な距離は保ってくれよな」と返した。
「……わかってるよ。あんたを敵に回したくないしね」
野ウサギはあからさまに不機嫌そうな顔を作ると、ずかずかとダイニングへ向かっていった。
「すみませんね。あの通り、気が強い人でして。まあ、扱いには慣れてますんで、お任せください」
苦笑交じりに言い添えるベリトは、確かに幹事向きなメンタリティの持ち主らしい。
「信じるよ。それから、バーデン・バーデンの処女」
密かに感心する私に凌遅が声をかける。
「俺が話したことは覚えているな」
「ええ」
「ならいい。ベリト、後は頼む」
そう言い残し、凌遅はハンガーラックから上着を取って外出した。
「何か言われたんですか? 凌遅さんに」
玄関を施錠しながらベリトが問う。私が黙っていると、彼は「ああ、いいんです。ちょっと訊いてみただけなんで。大事なパートナーを置いていくわけですし、そりゃ防御策も講じてますよね」と笑った。
「あの人と親しいって本当ですか」
何気なく訊いたところ、「僕が一方的に懐いてる感じなんですけどね」というコメントが返ってきた。
「僕、面白い話に目がないんですよ。凌遅さんはユニークな方なんで、一緒にいると話題に事欠きません。だけど、夜会で最高のパフォーマンスを見せてくれた貴女にも興味があります。今日は是非、いろいろ聞かせてください」
「別に構いませんが……」
ここでふと、先日、彼にかけられたあの言葉を思い出した。
「……ところで、“スピリットガイド”って何ですか」
「え?」
ベリトが首を傾げる。
「夜会のロシアンルーレットが終わった時、言ってましたよね。私が救われたとか……あれ、どういう意味ですか」
「ああ、言いましたね」
彼は首肯した。
「スピリットガイドっていうのは、“貴女を守ってくれる存在”のことです。あの時、パスを試みなければ、貴女の頭は吹き飛んでいた。そうならないように誘導してくれた人がいるでしょ?」
「え……」
掌を上にして手招きする凌遅の姿が蘇る。
「あの方はLR×Dの最古参ですから、本部のやり口を知り尽くしているんですよ。おまけにホスピタリティマインドも備わっている。意外と連絡員向きかも知れません」
「あれ、私を煽ってたんじゃないんですか」
困惑する私に、ベリトはにっこり笑って続けた。
「貴女が反発してくることを見越してたんでしょうね。それに応えた貴女の精神力も相当のもんです。良いコンビですよ、お二人は」
「…………」
胸の辺りで名状しがたい感情が渦を巻いている。
私が口を開こうとしたタイミングで、
「おーい、いつまで喋ってんだよぉ!」
奥から野ウサギが吠えるのが聞こえた。
「はいはい、お待ちを! 続きは後で話しましょう。僕、凌遅さんに関する情報もいろいろ持ってるんで、何でも訊いてください」
ベリトは私をエスコートするような格好でダイニングへと移動する。
テーブルの上には、野ウサギが広げたであろう荷物の中身が並んでいた。専用の容器に入ったサンドイッチやサラダ、スープにコールドデリ、ホットミールにデザートが数種類ずつ用意されている。どうやら2、30種はありそうだ。
目を丸くする私に、ベリトが言った。
「朝食、まだですよね。遅くなってしまって申し訳ありません。レストランambrosiaのランチビュッフェの一部を持参しましたので、お好きな物をどうぞ」
「先に取っていいよ。あたしらはオマケみたいなもんだから」
凌遅が去って落ち着いたのか、野ウサギが妙に物柔らかな態度で仕切り付きのプレートを手渡してきたので、とりあえず人数分以上の数量が確実にあるとわかるメニューから一つずつ取り分けた。
ベリトは遠慮しないでもっとたくさん取っていいと言ってくれたが、十分過ぎるほどの量だったため、丁重に断った。
それぞれが好きなものを取って席につき、食事が始まる。シチュエーションこそ微妙だが、どれも美味しい。
ただ、先ほどのプレーンオムレツがあまりに絶品だったので、感動はさほどでもなかった。
「あんた、きょうだいは?」
食べながら野ウサギが訊く。いないと告げると、「あたしも一人っ子」と返された。
「そうなんですね。ちなみに僕、末っ子です」
すかさずベリトが乗ってくる。
「誰も訊いてねえよ」
にべもなく遮る野ウサギに、ベリトは「言い方きついなあ」と苦笑した。野ウサギは鼻で笑い、話を続ける。
「でも近所に住んでた親戚んちの子が可愛くてね。年の離れた弟みたいでさ。あたし、高校まで空手やってたんだけど、あいつそれに憧れてたっぽくて、しょっちゅう「ネーチャーン、カラテ見せてー」って訪ねて来るもんだから、よく一緒に遊んでやってたんだ。あんたもない? そういうの」
「私、人見知りでしたから……」
そう返すと、野ウサギは品定めするような目でこちらを見て、「あー。ぽいな。何となく負のオーラ感じるもんね、あんた」と言い放った。
「野ウサギさん、言葉選びましょうね? バーデン・バーデンの処女さんは慎み深いだけですよ」
ベリトが短く突っ込んだ後、「飲み物、どうします?」と訊いてきたので、オレンジジュースを頼んだ。
野ウサギも同じものを所望し、背もたれに寄り掛かる。
「つーか、男の子って、何で中学過ぎるとあんなでっかくなっちゃうのかねえ。あいつも小学校くらいまでは、ちっこくてぽやぽやしてて可愛かったのにさあ……気が付いたらガチムチになってて暑苦しいったらありゃしない」
「いや、個人差ありますし、一概には言えないんじゃないですか?」
ベリトが私にオレンジジュースを差し出しながら容喙する。
「僕みたいなさわやか系や、凌遅さんみたいなクール系もいますし。その方はたまたま野ウサギさんに似ただけじゃ……って、痛タタタタタ! ほら、そういうとこー!」
彼は体を折り曲げて、テーブルを3度タップする。彼女の前にジュースを置いたタイミングで、指の関節を逆に曲げられたのだ。
「うるさいよ。あんまりくだらないこと言ってると、圧し折るからね」
「ほんとにやりそうだな……やるな、これはやる流れだな!」
「やる流れだね。じゃあ、折ろうか」
「すいません、嘘です、すいませんっ!」
まるで息の合った芸人同士のようで、彼らの方こそ“良いコンビ”に見えた。
その後、食事を摂りながら、LR×Dに足を入れたきっかけに話が及んだ。私は訊かれたことにのみ淡々と答え、ベリトはのらりくらりと言い抜けていたが、野ウサギはここでも仔細に語ってくれた。
「あたしの実家、家族経営の製造工場なんだ。よくドラマとかに出てくる昭和感満載の町工場あるでしょ? まさにああいうイメージ。良くも悪くもアットホームで、従業員とも家族や親戚みたいな付き合いしてた」
平穏な日々が続いたある時、事故が起こった。彼女が小学3年生の夏のことだ。親しくしていた従業員の一人が機械に巻き込まれ、死亡してしまったのだという。
たまたま家族の手伝いで現場に来ていた野ウサギも一部始終を目撃することとなる。
その衝撃的な経験は彼女の人格形成に大きな影響を及ぼした。と同時に、己の本質に気づく契機となった。
「あれ見た時さ、すごいショックだったんだけど、なんか妙に興奮しちゃったんだよね。やっぱ自分は異常者なんだって思い知った気がするよ」
楽しかった思い出を語るような口調の野ウサギに、ベリトは「処刑人あるあるですね」と愉快げに返した。
人の道に悖る感覚だと思うが、バッサリと切り捨てることはできなかった。
遺憾ながら、自分にも思い当たる節があるからだ。
「こんにちは、バーデン・バーデンの処女さん。僕のこと、覚えてますかね?」
男性の方がにこやかに挨拶をしてきた。年の頃は凌遅と同年代か少し下くらい。動きやすそうな街着姿で、肩には小型のショルダーバッグを提げている。明るい色味の短髪に人懐っこい目元、こぶしが入るほど大きな口が印象的だ。
この人がベリトか。夜会の時は生きるか死ぬかの極限状態に置かれていたので、司会を務めていた彼の風体などほとんど記憶していなかったのだが、必要以上に明るく滑舌の良い話し口には覚えがあった。
「その節はどうも。今日は、よろしくお願いします」
私が形式的な返答をすると、
「久しぶりだね、お人形さん。あたしのことも覚えてる?」
ベリトの背後から顔を覗かせた女性が、試すような視線を向けてきた。
ベリーショートにパンツタイプのセットアップを纏った彼女は、背の高さも相まって男性的というか威圧的なオーラを放っている。
「ええ、もちろん……」
忘れるわけがない。これほどインパクトが強い女性にはなかなかお目にかかれない。
「あっそう」
彼女──野ウサギはこちらを睥睨すると、馬鹿にしたような口振りで言った。
「聞いたよ。あんた、クエマドロにヤラレそうになったんだって?」
その発言に場が凍る。ベリトの目が泳ぐのを見て、ソースは彼だと確信した。
いや、一連の流れを収めた動画は凌遅が回収済みなので、そのまま彼のチャンネルに上げられるかして、とっくの昔に周知の事実なのかも知れない。
野ウサギはなおも続ける。
「あんなわかりやすい遊び人にのこのこ付いて行くかね、普通。手負いで尻拭いさせられる凌遅くんは堪ったもんじゃないだろうよ。ド新人とは言え、ちょっとくらい危機感持ったら?」
この人はずっと私に悪意をぶつけてくる。あまりいい気はしないが、素直に応じてさえいれば大きな問題は起こらないだろう。そう思い、
「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫です。少しは考えていますので……」
ひとまずそう返すと、野ウサギはわざとらしく口の端を吊り上げる。
「……なんか生意気だよね、あんた。やっぱり教育してやるべきかな……」
「まあまあ、野ウサギさん」
ここで初めて、ベリトが口を出した。
「ダメですよ、新人さんをいじめちゃ。今日一日、仲良く過ごせるように協力し合わないと。ね? 凌遅さん」
凌遅は片笑み、「無理に仲良くする必要はないが、適切な距離は保ってくれよな」と返した。
「……わかってるよ。あんたを敵に回したくないしね」
野ウサギはあからさまに不機嫌そうな顔を作ると、ずかずかとダイニングへ向かっていった。
「すみませんね。あの通り、気が強い人でして。まあ、扱いには慣れてますんで、お任せください」
苦笑交じりに言い添えるベリトは、確かに幹事向きなメンタリティの持ち主らしい。
「信じるよ。それから、バーデン・バーデンの処女」
密かに感心する私に凌遅が声をかける。
「俺が話したことは覚えているな」
「ええ」
「ならいい。ベリト、後は頼む」
そう言い残し、凌遅はハンガーラックから上着を取って外出した。
「何か言われたんですか? 凌遅さんに」
玄関を施錠しながらベリトが問う。私が黙っていると、彼は「ああ、いいんです。ちょっと訊いてみただけなんで。大事なパートナーを置いていくわけですし、そりゃ防御策も講じてますよね」と笑った。
「あの人と親しいって本当ですか」
何気なく訊いたところ、「僕が一方的に懐いてる感じなんですけどね」というコメントが返ってきた。
「僕、面白い話に目がないんですよ。凌遅さんはユニークな方なんで、一緒にいると話題に事欠きません。だけど、夜会で最高のパフォーマンスを見せてくれた貴女にも興味があります。今日は是非、いろいろ聞かせてください」
「別に構いませんが……」
ここでふと、先日、彼にかけられたあの言葉を思い出した。
「……ところで、“スピリットガイド”って何ですか」
「え?」
ベリトが首を傾げる。
「夜会のロシアンルーレットが終わった時、言ってましたよね。私が救われたとか……あれ、どういう意味ですか」
「ああ、言いましたね」
彼は首肯した。
「スピリットガイドっていうのは、“貴女を守ってくれる存在”のことです。あの時、パスを試みなければ、貴女の頭は吹き飛んでいた。そうならないように誘導してくれた人がいるでしょ?」
「え……」
掌を上にして手招きする凌遅の姿が蘇る。
「あの方はLR×Dの最古参ですから、本部のやり口を知り尽くしているんですよ。おまけにホスピタリティマインドも備わっている。意外と連絡員向きかも知れません」
「あれ、私を煽ってたんじゃないんですか」
困惑する私に、ベリトはにっこり笑って続けた。
「貴女が反発してくることを見越してたんでしょうね。それに応えた貴女の精神力も相当のもんです。良いコンビですよ、お二人は」
「…………」
胸の辺りで名状しがたい感情が渦を巻いている。
私が口を開こうとしたタイミングで、
「おーい、いつまで喋ってんだよぉ!」
奥から野ウサギが吠えるのが聞こえた。
「はいはい、お待ちを! 続きは後で話しましょう。僕、凌遅さんに関する情報もいろいろ持ってるんで、何でも訊いてください」
ベリトは私をエスコートするような格好でダイニングへと移動する。
テーブルの上には、野ウサギが広げたであろう荷物の中身が並んでいた。専用の容器に入ったサンドイッチやサラダ、スープにコールドデリ、ホットミールにデザートが数種類ずつ用意されている。どうやら2、30種はありそうだ。
目を丸くする私に、ベリトが言った。
「朝食、まだですよね。遅くなってしまって申し訳ありません。レストランambrosiaのランチビュッフェの一部を持参しましたので、お好きな物をどうぞ」
「先に取っていいよ。あたしらはオマケみたいなもんだから」
凌遅が去って落ち着いたのか、野ウサギが妙に物柔らかな態度で仕切り付きのプレートを手渡してきたので、とりあえず人数分以上の数量が確実にあるとわかるメニューから一つずつ取り分けた。
ベリトは遠慮しないでもっとたくさん取っていいと言ってくれたが、十分過ぎるほどの量だったため、丁重に断った。
それぞれが好きなものを取って席につき、食事が始まる。シチュエーションこそ微妙だが、どれも美味しい。
ただ、先ほどのプレーンオムレツがあまりに絶品だったので、感動はさほどでもなかった。
「あんた、きょうだいは?」
食べながら野ウサギが訊く。いないと告げると、「あたしも一人っ子」と返された。
「そうなんですね。ちなみに僕、末っ子です」
すかさずベリトが乗ってくる。
「誰も訊いてねえよ」
にべもなく遮る野ウサギに、ベリトは「言い方きついなあ」と苦笑した。野ウサギは鼻で笑い、話を続ける。
「でも近所に住んでた親戚んちの子が可愛くてね。年の離れた弟みたいでさ。あたし、高校まで空手やってたんだけど、あいつそれに憧れてたっぽくて、しょっちゅう「ネーチャーン、カラテ見せてー」って訪ねて来るもんだから、よく一緒に遊んでやってたんだ。あんたもない? そういうの」
「私、人見知りでしたから……」
そう返すと、野ウサギは品定めするような目でこちらを見て、「あー。ぽいな。何となく負のオーラ感じるもんね、あんた」と言い放った。
「野ウサギさん、言葉選びましょうね? バーデン・バーデンの処女さんは慎み深いだけですよ」
ベリトが短く突っ込んだ後、「飲み物、どうします?」と訊いてきたので、オレンジジュースを頼んだ。
野ウサギも同じものを所望し、背もたれに寄り掛かる。
「つーか、男の子って、何で中学過ぎるとあんなでっかくなっちゃうのかねえ。あいつも小学校くらいまでは、ちっこくてぽやぽやしてて可愛かったのにさあ……気が付いたらガチムチになってて暑苦しいったらありゃしない」
「いや、個人差ありますし、一概には言えないんじゃないですか?」
ベリトが私にオレンジジュースを差し出しながら容喙する。
「僕みたいなさわやか系や、凌遅さんみたいなクール系もいますし。その方はたまたま野ウサギさんに似ただけじゃ……って、痛タタタタタ! ほら、そういうとこー!」
彼は体を折り曲げて、テーブルを3度タップする。彼女の前にジュースを置いたタイミングで、指の関節を逆に曲げられたのだ。
「うるさいよ。あんまりくだらないこと言ってると、圧し折るからね」
「ほんとにやりそうだな……やるな、これはやる流れだな!」
「やる流れだね。じゃあ、折ろうか」
「すいません、嘘です、すいませんっ!」
まるで息の合った芸人同士のようで、彼らの方こそ“良いコンビ”に見えた。
その後、食事を摂りながら、LR×Dに足を入れたきっかけに話が及んだ。私は訊かれたことにのみ淡々と答え、ベリトはのらりくらりと言い抜けていたが、野ウサギはここでも仔細に語ってくれた。
「あたしの実家、家族経営の製造工場なんだ。よくドラマとかに出てくる昭和感満載の町工場あるでしょ? まさにああいうイメージ。良くも悪くもアットホームで、従業員とも家族や親戚みたいな付き合いしてた」
平穏な日々が続いたある時、事故が起こった。彼女が小学3年生の夏のことだ。親しくしていた従業員の一人が機械に巻き込まれ、死亡してしまったのだという。
たまたま家族の手伝いで現場に来ていた野ウサギも一部始終を目撃することとなる。
その衝撃的な経験は彼女の人格形成に大きな影響を及ぼした。と同時に、己の本質に気づく契機となった。
「あれ見た時さ、すごいショックだったんだけど、なんか妙に興奮しちゃったんだよね。やっぱ自分は異常者なんだって思い知った気がするよ」
楽しかった思い出を語るような口調の野ウサギに、ベリトは「処刑人あるあるですね」と愉快げに返した。
人の道に悖る感覚だと思うが、バッサリと切り捨てることはできなかった。
遺憾ながら、自分にも思い当たる節があるからだ。
2
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる