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ぬらりひょんの孫・セイヤくん編
小洗屋のシラタマとぬらりひょんの息子・セイヤくん編 6話
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書きだしがおわったときには、夕方の鐘が鳴っていた。
「たくさん、書けたかなぁ」
ヨツロウくんの声に、ちゃんと書けてる。そう答えたのはリッカちゃんだ。
「これだけあったらいいでしょ!」
「じゃ、駄菓子屋さんへ行こ。今の時間は、お爺ちゃんと店番だよね?」
シラタマは書きだした紙をくるくると丸めて小屋を飛び出していく。
なぜこの時間にセイヤくんが店番をしているか知っているかは簡単だ。
セイヤくんのいない時間に駄菓子屋に行っていたからだ。
「ねぇ、駄菓子屋さんいったら、なんの駄菓子買う? ぼくね、ザラメせんべい」
「あたしはね、ビーフジャーキー。シラタマちゃんは?」
「私は白いクリームがはさまったクッキー」
いつの間にか駄菓子談義になっていた3人だが、お店につくと子どもたちで大にぎわいだ。
シラタマたちもそのなかに混ざり、あれとこれとと選んでいく。
子どもが多くなる夕方は、話に聞いていた通り、店番にお爺ちゃんとセイヤくんがいる。
セイヤくんは意地っ張りだが、誰よりも計算が早いし間違えないから、みんなセイヤくんに並びたがる。
なのに……
「セイヤ、もっと手際よくやんなさい」
「計算、早くならないねぇ、セイヤは」
「爺ちゃんのほうが早いなあ」
じっと見つめるシラタマをセイヤくんが見つけたようだ。
みんなの手には、それぞれ食べたい駄菓子がしっかり握られるなか、セイヤくんに睨みつけられる。
それでも3人は負けない!
この駄菓子を買うまでは……いや、書き出したものを渡すまでは、帰られない!
「ほら、セイヤ、シラタマちゃんは偉いだろ。ちゃんと自分で買い物できるんだぞ。はい、リツコちゃん、ビーフジャーキー」
シラタマのふわふわの手が駄菓子をおく。
シラタマはセイヤくんを見た。
セイヤくんは俯いている。
奥歯を噛みしめて、隣にならんだヨツロウくんのザラメせんべいをむしるように袋へ入れる。
「お爺ちゃん、これ、セイヤくんのすごいところです」
くるくるに巻いた紙をぴっと伸ばす。
丁寧に書いたつもりだが、少し読みづらいかもと、シラタマが読み上げていく。
「セイヤくんのすごいところは、計算が早いところ、クジ付きの駄菓子は絶対クジをひかせてくれる、並んでいる順序をしっかりおぼえてる、みんなの名前を間違えない、お茶の難しい漢字を全て言えて書ける、お茶の味を全部おぼえてる、です。まだまだたくさんあるけど、もっと、セイヤくんのこと、ほめてください!」
「あと、あたし、リッカ! リツコじゃないから!」
「あと、ザラメせんべいは紙袋にいれてくれると、すごい、いいんだぁ。お爺ちゃんも真似してほしいなぁ」
いつもお爺ちゃんは和紙一枚にはさんででしか渡してくれず、これだとザラメがこぼれてもったいない。
だがセイヤくんはちゃんとちょうどいい紙袋に入れてくれる。
「袋にあれば、ほーら、ザラメ、舐めれる……!」
シラタマはクッキーをサクサク食べながら、最後のザラメってあまじょっぱくておいしいよねと思う。
最後まで楽しめる駄菓子を3人は交換し合いながら、お店を出ていく。
お爺ちゃんの顔は振り返らなかった。
だけど、あんぐりと口を開けて眺めているのは、背中でも見えた。気がする。
翌日。
小豆洗いをするシラタマの帯は、新品の帯だ。
母が気に入って買ってきてくれた帯である。
大きなひまわりの絵が描いてある、かわいい帯だ。
それに合わせて、シラタマは水色の着物を選んできていた。
「シラタマちゃん、帯も着物も、ステキ。いい! 似合ってる!」
そう言いながら自分の頭をぽんぽん投げるのはリッカちゃんだ。
「おはよう、シラタマちゃん。川に蓮華のお花咲いてるかなぁって来たんだぁ。……あったぁ!」
いい場所を見つけたのか、ちょこんと座り、ヨツロウくんは絵を描き始めるが、リッカちゃんは別だ。
「ねー、シラタマちゃん、昨日みたドラマなんだけど、そのね、敵役の」
「今、小豆研いでるから」
「そんなのさー、しゃしゃって終わるじゃん。でさ、その適役の」
「終わらない!」
邪魔をするなと、シャー! と威嚇するがお構いなしだ。
すぐそばに座り、手で頭を持ってしゃべりだす。
「うるさいって!」
キヌちゃんがいた頃なら、リッカちゃんのおでこをペチンとしてくれたのに。
そう思っても、今、リッカちゃんは羅生門で着物デザイナーになるべく、邁進しているところだ。
私もがんばらなきゃ!
シラタマは自分を奮い立たせ、真横にいるリッカちゃんへ頭突きする。
「いったい、シラタマちゃん!」
「私も痛い! でもうるさいんだもん! 今日の小豆は初めてだから、しゃべんないでよ!」
「ならそう言えばいいじゃんっ」
ぷんすかする2人の間に、袋がぶら下がった。
ぶら下げているのは……
「セイヤくん……」
シラタマが見上げると、ぷいっと横を向くが、
「変っていってごめん……」
それだけ言って、袋ごとものを置いていく。
視線で、リッカちゃんに中身を見て、と伝えると、リッカちゃんは袋をそっと開いた。
「ちょっと、ラムネで買収しようたって……あ! これ、限定ラムネだ! ヤバ! 川で冷やしてから飲もー!」
さっそくと川に冷やしに北へと走るリッカちゃんを見送り、シラタマはようやく小豆が研げると息をつく。
「シラタマちゃーん、あとどれぐらーい?」
「だからうるさいんだって! ぜんぜんまだまだ!」
そのやりとりをヨツロウくんは幸せそうに眺めている。
いつの間にか画板には、蓮華の花と、リッカちゃんとシラタマが楽しそうにかけっこしている絵が広がっていた。
「たくさん、書けたかなぁ」
ヨツロウくんの声に、ちゃんと書けてる。そう答えたのはリッカちゃんだ。
「これだけあったらいいでしょ!」
「じゃ、駄菓子屋さんへ行こ。今の時間は、お爺ちゃんと店番だよね?」
シラタマは書きだした紙をくるくると丸めて小屋を飛び出していく。
なぜこの時間にセイヤくんが店番をしているか知っているかは簡単だ。
セイヤくんのいない時間に駄菓子屋に行っていたからだ。
「ねぇ、駄菓子屋さんいったら、なんの駄菓子買う? ぼくね、ザラメせんべい」
「あたしはね、ビーフジャーキー。シラタマちゃんは?」
「私は白いクリームがはさまったクッキー」
いつの間にか駄菓子談義になっていた3人だが、お店につくと子どもたちで大にぎわいだ。
シラタマたちもそのなかに混ざり、あれとこれとと選んでいく。
子どもが多くなる夕方は、話に聞いていた通り、店番にお爺ちゃんとセイヤくんがいる。
セイヤくんは意地っ張りだが、誰よりも計算が早いし間違えないから、みんなセイヤくんに並びたがる。
なのに……
「セイヤ、もっと手際よくやんなさい」
「計算、早くならないねぇ、セイヤは」
「爺ちゃんのほうが早いなあ」
じっと見つめるシラタマをセイヤくんが見つけたようだ。
みんなの手には、それぞれ食べたい駄菓子がしっかり握られるなか、セイヤくんに睨みつけられる。
それでも3人は負けない!
この駄菓子を買うまでは……いや、書き出したものを渡すまでは、帰られない!
「ほら、セイヤ、シラタマちゃんは偉いだろ。ちゃんと自分で買い物できるんだぞ。はい、リツコちゃん、ビーフジャーキー」
シラタマのふわふわの手が駄菓子をおく。
シラタマはセイヤくんを見た。
セイヤくんは俯いている。
奥歯を噛みしめて、隣にならんだヨツロウくんのザラメせんべいをむしるように袋へ入れる。
「お爺ちゃん、これ、セイヤくんのすごいところです」
くるくるに巻いた紙をぴっと伸ばす。
丁寧に書いたつもりだが、少し読みづらいかもと、シラタマが読み上げていく。
「セイヤくんのすごいところは、計算が早いところ、クジ付きの駄菓子は絶対クジをひかせてくれる、並んでいる順序をしっかりおぼえてる、みんなの名前を間違えない、お茶の難しい漢字を全て言えて書ける、お茶の味を全部おぼえてる、です。まだまだたくさんあるけど、もっと、セイヤくんのこと、ほめてください!」
「あと、あたし、リッカ! リツコじゃないから!」
「あと、ザラメせんべいは紙袋にいれてくれると、すごい、いいんだぁ。お爺ちゃんも真似してほしいなぁ」
いつもお爺ちゃんは和紙一枚にはさんででしか渡してくれず、これだとザラメがこぼれてもったいない。
だがセイヤくんはちゃんとちょうどいい紙袋に入れてくれる。
「袋にあれば、ほーら、ザラメ、舐めれる……!」
シラタマはクッキーをサクサク食べながら、最後のザラメってあまじょっぱくておいしいよねと思う。
最後まで楽しめる駄菓子を3人は交換し合いながら、お店を出ていく。
お爺ちゃんの顔は振り返らなかった。
だけど、あんぐりと口を開けて眺めているのは、背中でも見えた。気がする。
翌日。
小豆洗いをするシラタマの帯は、新品の帯だ。
母が気に入って買ってきてくれた帯である。
大きなひまわりの絵が描いてある、かわいい帯だ。
それに合わせて、シラタマは水色の着物を選んできていた。
「シラタマちゃん、帯も着物も、ステキ。いい! 似合ってる!」
そう言いながら自分の頭をぽんぽん投げるのはリッカちゃんだ。
「おはよう、シラタマちゃん。川に蓮華のお花咲いてるかなぁって来たんだぁ。……あったぁ!」
いい場所を見つけたのか、ちょこんと座り、ヨツロウくんは絵を描き始めるが、リッカちゃんは別だ。
「ねー、シラタマちゃん、昨日みたドラマなんだけど、そのね、敵役の」
「今、小豆研いでるから」
「そんなのさー、しゃしゃって終わるじゃん。でさ、その適役の」
「終わらない!」
邪魔をするなと、シャー! と威嚇するがお構いなしだ。
すぐそばに座り、手で頭を持ってしゃべりだす。
「うるさいって!」
キヌちゃんがいた頃なら、リッカちゃんのおでこをペチンとしてくれたのに。
そう思っても、今、リッカちゃんは羅生門で着物デザイナーになるべく、邁進しているところだ。
私もがんばらなきゃ!
シラタマは自分を奮い立たせ、真横にいるリッカちゃんへ頭突きする。
「いったい、シラタマちゃん!」
「私も痛い! でもうるさいんだもん! 今日の小豆は初めてだから、しゃべんないでよ!」
「ならそう言えばいいじゃんっ」
ぷんすかする2人の間に、袋がぶら下がった。
ぶら下げているのは……
「セイヤくん……」
シラタマが見上げると、ぷいっと横を向くが、
「変っていってごめん……」
それだけ言って、袋ごとものを置いていく。
視線で、リッカちゃんに中身を見て、と伝えると、リッカちゃんは袋をそっと開いた。
「ちょっと、ラムネで買収しようたって……あ! これ、限定ラムネだ! ヤバ! 川で冷やしてから飲もー!」
さっそくと川に冷やしに北へと走るリッカちゃんを見送り、シラタマはようやく小豆が研げると息をつく。
「シラタマちゃーん、あとどれぐらーい?」
「だからうるさいんだって! ぜんぜんまだまだ!」
そのやりとりをヨツロウくんは幸せそうに眺めている。
いつの間にか画板には、蓮華の花と、リッカちゃんとシラタマが楽しそうにかけっこしている絵が広がっていた。
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