老舗あやかし和菓子店 小洗屋

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ぬらりひょんの孫・セイヤくん編

小洗屋のシラタマとぬらりひょんの息子・セイヤくん編 5話

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「あたしが首だけで飛んで、ガブってしたら、ひゃーって逃げてったの。ダサくない?」

 3人でお茶をすすり、大福を頬張るが、リッカちゃんはまだご立腹だ。

「でも、あんなに噛んだら、ぼくもこわいよぉ」
「そう? シラタマちゃんを泣かしたんだから、あれぐらいでいいと思うけど」
「リッカちゃん、ありがと」

 少し照れたようにリッカちゃんは笑って、最後のひと口を頬張った。
 濃いめに入れた2杯目のお茶をすすり、でもさ、といいだす。

「なんで、あんなに怒ってるんだろね、セイヤくん。シラタマちゃんのこと、いっつも目の敵にしてるし」
「私もね、それは思ったの。なんでだろうなーって。なんでかな」
「……ぼく、ちょっとわかるかも」

 ヨツロウくんは画板の紙にサラサラと絵を描いていく。
 そこには、セイヤくんのお爺ちゃんが浮かびあがる。

「セイヤくんのお爺ちゃんの口癖、うちの母ちゃんとおんなじなんだぁ」

 お爺ちゃんの横に、サラサラと吹き出しで書き込んだのは、

『うちの子、なにもできなくて』
『うちの子、がんばってないから』
『よその子は、ちゃんと家のことをして、えらい』

 それを見て、ギョッとする。
 確かにいわれた言葉だからだ。
 リッカちゃんは、うへぇという顔をして舌をだした。

「うちの母ちゃんさぁ、『うちの子はなにもできなくてぇ』って。『よその子はもっとやってる』って。それこそ、シラタマちゃんみたいになれってさぁ」

 シラタマは父と母のために一生懸命にしていた。
 だがそれを引き合いにだされていたとは、驚きである。
 むしろシラタマにとっては、小豆を一生懸命洗う以外、家族になる方法がなかったからだ。
 そんな一生懸命を真似しろといわれても、誰も真似できないし、したくないんじゃないだろうか。

 それこそ、本人は今とっても頑張っているのに、まるで頑張ってないようにいわれたら、たまったものじゃない!

「……ごめんね、ヨツロウくん」
「謝る必要ないと思うけど?」

 暇なのか自分の頭をころころ転がすリッカちゃんに、ヨツロウくんは大きく頷いた。 

「シラタマちゃんは全然悪くないんだ! ごめんね、ぼくの方こそ。……そのね、そういうこと母ちゃんがいう度にね、お姉ちゃんたちが、ぼくががんばってるところいってくれるんだぁ」

 ぷくぷくのほっぺを嬉しそうに赤く染めて、しゃべりながら指をおっていく。

「この前はね、油揚げを揚げるのがとっても上手。あとぉ、絵を描くのがはやくなった。それと、ガンモを揚げる練習がんばってる! 3つもあるんだよぉ」

 嬉しそうなその手が、ぱたんと膝に落ちる。

「……もしさぁ、セイヤくん、一人っ子だから、誰も褒めてくれなかったらさぁ……」

 リッカちゃんは頭を転がすのをやめた。
 シラタマのヒゲがむむっと立つ。

「あたしでもちょっとは褒めてもらえるのに、あのセイヤくんが褒められないなんておかしくない?」

 セイヤくんはお茶の知識は幅広く、駄菓子の店番の際は、誰よりも暗算が早くて正確なのだ。

「私もそう思う。なんで、セイヤくんは褒められないの?」

 シラタマとリッカちゃん、ヨツロウくんはセイヤくんのすごいところを書き出していく……
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