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ぬらりひょんの孫・セイヤくん編
小洗屋のシラタマとぬらりひょんの息子・セイヤくん編 4話
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いつも小豆を洗っている川についたけれど、息がきれ、ひざがガクガクしている。
握っていた本は、肉球の汗でふにゃふにゃだ。
それに涙もとまらないし、鼻水もとまらない。
肩はしゃっくりのように、ひっくひっくと繰り返すことしかできない。
涙をふきすぎて、ふわふわの手もびちょびちょだ。
あまりにひどい格好なので、シラタマは小豆小屋へと入った。
昨日と変わらず小豆が干され、小豆の香りが部屋に満ちている。
ぐちゃぐちゃの顔を小屋の流しで洗いながし、置いてある手拭いでゴシゴシと拭う。
箪笥を見ると、この前着替えてなくなっていた着物がちゃんと洗って足されていた。
シラタマはそれに着替えながら、『また捨てられるかもしれない』と思った自分を恥じた。
母は知らない間に小屋に来て、シラタマがいつでも着替えられるようにしてくれているし、隠し甘納豆も補充されている。
さらに、昨日干しておいた小豆の横には、明日洗うための小豆が準備されていた。
ちゃんと洗い方のメモもそえられていて、シラタマにわかるように書かれてある。
ここまでしてくれている人たちが、自分を捨てるなんて考えられない。
今日の朝も父ちゃんと母ちゃんは、
「シラタマ、お土産、なにがいい? かわいい草履とかか?」
「あなた、シラタマだって自分で選びたい年頃ですよ! ……ね、シラタマ、帯のほうがいいわよね? 母ちゃん、良い柄のをこの前見つけててね」
「草履がいいだろ。店番するとき、かわいい草履がいいし」
「ダメよ。後ろ姿もシラタマはかわいいの! 帯が大事!」
シラタマはふわふわの肉球で口元を隠して、うふふと笑う。
自分のお土産に必死になってくれる父と母が大好きだからだ。
ちなみに今回は帯にしてもらった。
母が前から決めていた、という帯が気になったからだ。
でも、そういっておいても、きっと父はこっそり草履を買ってくることをシラタマは知っている。
だからこそ、シラタマは、一生懸命、お手伝いをしたいのだ。
それこそ、本来、小豆洗いは、小豆を見ただけでどう洗えばいいか、わかってしまうそうだ。
だがシラタマは猫又。全く小豆の見分けがつかない。
経験と感覚で少しずつ少しずつ身につけてきた。
それこそ、シラタマが洗いはじめたころだ。餡子の味が落ちたといわれた時期があった。
それすら父は笑っていた。
「いいんだよ、シラタマ。父ちゃんだって最初の頃は、ぜーんぶ下手だった」
──甘納豆を食べながら、シラタマは父と母との思い出を大事に大事に思い出していく。
囲炉裏にあたりながらお茶を飲み、甘納豆を食べきったときには、シラタマは元気を取り戻していた。
「……よし!」
火の始末をしてから小屋を出ようと腰をあげたとき、スパン! と引き戸が開いた。
「ちょっと、アイツに噛みついてきたけどさー! なんなの、セイヤくん!」
ご立腹のリッカちゃんがいる。
横にはヨツロウくんも。
だが、噛み付いたとは……?
何がおこったのかと思っていると、ヨツロウくんが風呂敷をさしだしてくる。
シラタマが背負っていたものだ。
「シラタマちゃん! はい! 大福ぅ」
もうそんな時間かと、シラタマは再びお湯を沸かし直し、お茶を淹れることにした。
握っていた本は、肉球の汗でふにゃふにゃだ。
それに涙もとまらないし、鼻水もとまらない。
肩はしゃっくりのように、ひっくひっくと繰り返すことしかできない。
涙をふきすぎて、ふわふわの手もびちょびちょだ。
あまりにひどい格好なので、シラタマは小豆小屋へと入った。
昨日と変わらず小豆が干され、小豆の香りが部屋に満ちている。
ぐちゃぐちゃの顔を小屋の流しで洗いながし、置いてある手拭いでゴシゴシと拭う。
箪笥を見ると、この前着替えてなくなっていた着物がちゃんと洗って足されていた。
シラタマはそれに着替えながら、『また捨てられるかもしれない』と思った自分を恥じた。
母は知らない間に小屋に来て、シラタマがいつでも着替えられるようにしてくれているし、隠し甘納豆も補充されている。
さらに、昨日干しておいた小豆の横には、明日洗うための小豆が準備されていた。
ちゃんと洗い方のメモもそえられていて、シラタマにわかるように書かれてある。
ここまでしてくれている人たちが、自分を捨てるなんて考えられない。
今日の朝も父ちゃんと母ちゃんは、
「シラタマ、お土産、なにがいい? かわいい草履とかか?」
「あなた、シラタマだって自分で選びたい年頃ですよ! ……ね、シラタマ、帯のほうがいいわよね? 母ちゃん、良い柄のをこの前見つけててね」
「草履がいいだろ。店番するとき、かわいい草履がいいし」
「ダメよ。後ろ姿もシラタマはかわいいの! 帯が大事!」
シラタマはふわふわの肉球で口元を隠して、うふふと笑う。
自分のお土産に必死になってくれる父と母が大好きだからだ。
ちなみに今回は帯にしてもらった。
母が前から決めていた、という帯が気になったからだ。
でも、そういっておいても、きっと父はこっそり草履を買ってくることをシラタマは知っている。
だからこそ、シラタマは、一生懸命、お手伝いをしたいのだ。
それこそ、本来、小豆洗いは、小豆を見ただけでどう洗えばいいか、わかってしまうそうだ。
だがシラタマは猫又。全く小豆の見分けがつかない。
経験と感覚で少しずつ少しずつ身につけてきた。
それこそ、シラタマが洗いはじめたころだ。餡子の味が落ちたといわれた時期があった。
それすら父は笑っていた。
「いいんだよ、シラタマ。父ちゃんだって最初の頃は、ぜーんぶ下手だった」
──甘納豆を食べながら、シラタマは父と母との思い出を大事に大事に思い出していく。
囲炉裏にあたりながらお茶を飲み、甘納豆を食べきったときには、シラタマは元気を取り戻していた。
「……よし!」
火の始末をしてから小屋を出ようと腰をあげたとき、スパン! と引き戸が開いた。
「ちょっと、アイツに噛みついてきたけどさー! なんなの、セイヤくん!」
ご立腹のリッカちゃんがいる。
横にはヨツロウくんも。
だが、噛み付いたとは……?
何がおこったのかと思っていると、ヨツロウくんが風呂敷をさしだしてくる。
シラタマが背負っていたものだ。
「シラタマちゃん! はい! 大福ぅ」
もうそんな時間かと、シラタマは再びお湯を沸かし直し、お茶を淹れることにした。
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