13周目は悪役令嬢!? いやいや、私は好きに攻略させてもらいますっ!

yolu

文字の大きさ
2 / 12

2話 謁見へ向かう道

しおりを挟む
 身支度を整えた私たちは、12人の星座の神々が集まる神殿へと赴くことになった。
 私は令嬢なので、ペガサスの馬車に引かれて神殿へと向かう。
 馬車の中は意外と広い。しかも座り心地がいいし、ペガサスだから揺れもない。

 流れる景色はゲームと同じ。
 朝日が流れ出して、辺りに森林が広がる。
 色の濃い緑が辺りを包み、どこまでも瑞々しい。
 見上げた空は雲ひとつない。

「今日はいい天気ね」

 私がつい口に出すと、デジーは笑った。

「この神殿の場所は常に晴れているではありませんか」

 そうだ。
 このゲームには雨や嵐など、そんなシステムなかったな………

 神殿を囲むように森があり、その森を越えて都がある。
 この都もよく栄えていたと思う。学業も盛んだったし、いくつもクエストをこなしたなぁ。そそ、あの都のケーキ、すんごく美味しそうだったし、都の地下の遺跡も、もっと探索してみたかったな。

 流れる森林を見ていると、赤く光る目が見える。

 ───魔物だ。

 そうそう、この森には魔物が住んでるんだ。
 神殿を守る役目もあるものの、神殿に悪さをする魔物もいるので討伐もしなければならない。

 あー………
 主人公はたしか歩きだったはず。
 たしか、自分の村から歩いてこの神殿まで来るんだよね。
 で、移動の仕方ととバトルのチュートリアルがあったんだよね………

「ってことは、私も戦うんじゃん!」

 がばりと馬車内で立ち上がった私に、デジーは仰け反った。
 低い天井に頭をぶつけ、頭をさすりながら座りこむ。

「ね、デジー、ここ、魔物とか出るから戦うよね?」
「それはそうですけど。お嬢様は蛇使いの神・オフィクス様がついているじゃありませんか。ご安心くださいませ」
「……あいつ、そんなチートあったんだ……」
「お嬢様?」
「いや、なんでも。そのオフィクスは……心で話しかければ出てくる……だよね?」
「そうです。あなたの守護神なのですから、あなたがお呼びになればお側に来られます。……レイヤ様、本当に大丈夫ですか?」

 デジーに心配されるのも無理はない。
 この世界のレイヤの記憶が私のバックボーンにあるものの、上っ面は女子高生の私だ。
 懐かしい、知っている、ここのシステム的なものはレイヤの意識に触れないと現れてこない。

 私という記憶の壁を抜けて、レイヤの記憶にいくのだから、多少時差が生じてしまうのも無理もない。
 でもそう思うと、レイヤを私が乗っ取ってしまった気にもなる。

 ───ごめんね、レイヤ。

 心の中で私が呟くと、

『レイヤは、レイヤだ』


 ………え、櫻井◯宏さん!?


 イケボがして、赤い煙と共に現れたのは、朱色ローブを纏った男である。
 さらに私の隣に優雅に腰かけたではないか!!!!!


 あー、これがオフィクス………


 ゲームだとレイヤの後ろにいた護衛キャラ。
 モブ中のモブ!
 ローブ姿しかないし、公式ファンブックでも鼻しかみえないぐらいの、本当にモブ。

 こいつにセリフ………あった!
 戦う時に「とぅ」「はぁ」「せぃ」「ぐぅ」ぐらい。
 公式ファンブックでは、声優は「????」と表記されてたけど、なるほど。
 水瓶座の神・アクエリアスをやってた櫻◯さんが、声をあててたのね。

 つか、公式否定してたじゃん。
 みんな言ってたの当たってたじゃぁーんっ!!!!

「どうかしたのか、レイヤ」

 声がまんまじゃないですかねー!!!!!

 し・か・も!!!!!

 なに、このアラビアンな褐色の肌に、赤い目。髪の毛は黒でロングで、ちょっとくせ毛、とか………


 もう、なに、私を萌え殺す気っ!!!!!


「顔が赤いぞ? 熱でもあるのか?」

 赤い爪が伸びる指が私の頬を優しく撫でていく。

「………いっ、さく……じゃなかった、オフィクス、大丈夫! だいじょぉーぶっ!」
「本当か?」
「そんなに顔近づけなくていいから!!!」
「あまり無理はしないよう過ごそう」

 オフィクスはそう言って、私の手をそっと掴む。
 薄く笑う顔は優しくて………



 おい、レイヤ、なんで、12星座なんか狙ってんのよ!!!!
 もう、いいじゃん、オフィクスで!!!!!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

処理中です...