café R ~料理とワインと、ちょっぴり恋愛~

yolu

文字の大きさ
40 / 170
第2章 カフェから巡る四季

第40話 ドライブといえば、お弁当!

しおりを挟む
 莉子のひらめきと、その行動力はでは発揮できなかっただろう。
 だが、現在、相当に疲労困憊している。
 これだけ疲れているときは、一度意識をいれかえなければならない。


『……海が見たい』


 ふと、思い浮かんだ言葉だった。


 それを実現するためにはなにをすればいいのか───


 あの臨時休業の手配を各所にしているすきに、連藤へメッセを入れていた。

『明日、ドライブに行きませんか? 臨時休業にしました』

 理由が後ろに来るほどに、莉子はドライブに行きたかった。
 連藤と、ドライブに行きたかったのだ。


 ただ、ずっと考えていたことがある。


 連藤が楽しんでくれるかどうか、わからないということだ。


 目が見えない連藤に、どうドライブを楽しんでもらうか───


 莉子のなかでこれが一番重要なものになっていた。




 いつもどおりの時間に起きると、莉子は腕をぐんと伸ばした。

「今日はドライブランチです。お弁当、がんばるぞぉ」

 いいながらベッドから抜けでると、着替えを済ませ、早速と厨房へ降りていく。
 昨日のうちに、いくつか仕込みをしておいたので問題ないだろう。

 自分用にコーヒーを入れると、お弁当作り、開始だ───!

 唐揚げ用の油を温めているうちに、昨日のうちに作っておいたポテトサラダと、人参のフラッペを弁当に詰めていく。
 今日のメインは、ノンアルコールシャンパンだ。
 これに似合うおかずを必死に冷蔵庫から引っぱりだしていく。

「オリーブオイルと、サーモンのマリネもあったよねぇ……あとは果物でもつめておくか……」

 冷蔵庫をばたりとしめ、常温に戻した鶏の唐揚げ肉を揚げていく。

「エビと…白身魚も揚げちゃお……これでだいたいいいかな……」

 粗熱がとれた揚げものをお弁当に詰めながら、取り皿や箸、タルタルソースを準備。
 あとはライ麦パンを塊のまま持っていって、向こうで切って食べることにする。

「なら、クリームチーズとジャムも持って行こう……」

 大きめのクーラーボックスにみっちり詰めこまれた料理にドリンクたち

「……はぁ。お昼が待ちきれないっ」

 莉子は連藤と楽しくランチを食べる姿を想像しながら、スマホを取りだした。

「……あ、もしもし、連藤さん?」

『莉子さん、おはよう』

『おはようございます。連藤さん、体調とか大丈夫です?」

『それをいうなら莉子さんの方だ。昨日は早く休めたのか?』

 この問いに数秒の間が空く。
 なぜなら急につくった臨時休業にテンションが上がってしまって、2時ごろまでドラマを観てしまっていたのだ。

「……あ、私は大丈夫ですよ! そうそう、9時前にはマンションの下に着けそうなんですが、支度ってどんな感じでしょう?」

『莉子さん、今日は少し早く眠ろう』

「……はい」

『8時50分ごろにはエントランスにいるようにする。ドライブ、楽しみにしてるよ』

 スマホの通話は切れたが、莉子はスマホをじっと見つめてしまう。
 連藤の声が楽しげだったからだ。
 たしかに、朝からふたりで出かけるなど、初めてだ!


「……さ、ドライブエスコート、がんばるぞー!」


 莉子の楽しげな声が厨房にぼわんと広がる。
 その声に押されるように、入念に準備を整えていく莉子だった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

処理中です...