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第2章 カフェから巡る四季
第138話 スペアリブのマーマレード焼き
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今日は、三井、連藤が夜に来店する。
豚のスペアリブが手に入ったので、お手軽にマーマレードと醤油、ニンニクと生姜で下味をつけて、グリルすることを決めたが、ワインが決まらない。
ニンニクをしっかり効かせれば、イタリアの赤ワインも似合うし、マーマレードの甘みと酸味はもちろん、豚肉なこともあり、白ワインのシャルドネも美味しい気がする。
「……悩む」
悩んだまま夜にならないように、莉子はマカロニサラダとオニオンリング、白身魚のムニエルの下準備をしながら考える。
「……白かな」
ということで、シャルドネを冷やしておくことに決定。今日のシャルドネはアメリカのシャルドネだ。値段はお手頃価格なのだが、旨味と果実味はたっぷり!
時間通りに来店した2人は、さっそくと冷やしておいたシャルドネを喉に落としていく。
「莉子さん、これは香りも豊かだし、旨みもある」
「なかなかじゃないか、莉子」
「もったいないお言葉」
適当な言葉を返しながら、莉子はマカロニサラダと生ハムを差し出した。
すぐにオニオンリングをその場で揚げていく。
「莉子さん、今日のメインは?」
「スペアリブです」
「珍しいな、スペアリブなんて」
莉子は、そうですか? と返し、少し考えているようだ。
思えば、ここ数ヶ月、スペアリブの料理はしていなかったようにも思う。
「そうですね。なんか、骨がついた肉、料理したかったんです」
理由もひどいが、そうかと納得する三井も三井である。
2人の食事の進み具合をみながら料理を進めていくが、今日は2人のスピードが早い。
「今日、お昼、抜いてたり?」
ランチにこなかった2人に尋ねると、同時に首は横に振られた。
「食べたんだが、なんだろう……そば、だったからかな」
「大盛、食べたんだけどなぁ」
消化にいいものだっただけとはいうが、やはりワインのピッチも食べ終わるスピードも早い。
「これ、白身のムニエルです。バターたっぷりなんでワインに合うと思います。トマトサラダ挟んで、スペアリブ、いきますね」
莉子は慌ててオーブンに火をいれていく。
しかしながら、これほどの2人の食欲は久しぶりでもある。
もう一品ぐらい作った方がいいかもしれない。
テキパキと考えながら、ミニトマトとインゲンの簡単ドレッシングで和えたサラダを小さめの器に盛り付け、スペアリブはオーブンへ。
「莉子さん、急かしてしまってすまない」
少し動きが大雑把だったようだ。
がちゃがちゃとした音が連藤の耳に届く。
「あ、いえ、すみません、慌ただしくしてしまって……。今日、お2人の食べる量とか想定外だったもので」
これは2人も気づいていたようだ。
2人はそろって悩んだ顔をつくっている。
莉子は不思議に思いながらも、淡々と作業を進めていく。
既にワインは半分を過ぎていた。
注ぎ足してから莉子はスペアリブの大皿を前に出す。
「どうぞ、美味しそうなアバラですよ~」
並べると半円を描くようにきれいな肋骨だったのだ。
しかも、左右そろっていた。
しっかりと味が染みこんでいて香りは抜群にいいし、なおかつ、お肉も柔らかく焼けている。
煮込みにする人も多いマーマレード味のスペアリブだが、グリルも十分おいしい!
ただ、ちょっと焦げたのはマーマレードのせい。でもきっと、カラメル的なお味になってくれているはずだ。
「連藤さん、お肉、外します?」
「いや、そのままかぶりつくよ」
莉子はおしぼりを多めに用意しておくと、三井は豪快に、連藤は華麗な手つきで肉を頬張っていく。
大胆な食べ方なのだが、2人には色気があふれてくるのが憎らしい。
おかげで斜め後ろの女子グループが2人に釘付けだ。
しょうがない。わかる。
莉子も、視線が釘付けだからだ。
「おー、莉子、いいな、これ。にんにく、結構効いてるし」
「ですよ。今日は女子と密会は無理です」
「それがにんにくの匂いがしても、大丈夫な女がいるんだよ」
「地獄にバンジーしてきた方がいいと思います」
連藤はていねいに肉を食べ、タオルで手と口をキレイに拭い、頷いた。
「肉の厚みがいいし、脂もおいしいスペアリブだ。莉子さん、ありがとう」
「いいえ、連藤さんのためなら!」
鼻歌まじりにグラスを拭く莉子に三井が怒鳴る。
「おい、酒」
「まだグラスに入ってます。空になったら入れてあげますよ。その前に連藤さんに入れてなくなるかもですけど」
「莉子、連藤のほうに酒多めにいれてんだろ。今日は割り勘なんだぞ」
「ケチくさい男ですね。いいじゃないですか。10ミリぐらいでウダウダと」
「絶対、10ミリじゃねぇ」
莉子は三井と言い争いながらも、するんと残りを連藤に注いでしまった。
「はい、ないない。もう1本、ボトル、入れます? 私も飲みますし」
「お前なー」
喧嘩腰の三井の肩を連藤が叩く。
「次のボトルは俺が入れる。それならいいだろ?」
「お、連藤、太っ腹。じゃあ、莉子、アメリカのいいやつ持ってきて」
「うわー、だっさい頼み方~」
相変わらずの2人のやりとりを連藤はつまみにしながら、今注がれたワインを飲んでいく。
しっかりと開いたシャルドネは、旨味以上に香りが豊かだ。
ゆっくりと香りを楽しみながら、サラダをつまみにワインをすすめていく。
今日の夜も、長そうだ。
豚のスペアリブが手に入ったので、お手軽にマーマレードと醤油、ニンニクと生姜で下味をつけて、グリルすることを決めたが、ワインが決まらない。
ニンニクをしっかり効かせれば、イタリアの赤ワインも似合うし、マーマレードの甘みと酸味はもちろん、豚肉なこともあり、白ワインのシャルドネも美味しい気がする。
「……悩む」
悩んだまま夜にならないように、莉子はマカロニサラダとオニオンリング、白身魚のムニエルの下準備をしながら考える。
「……白かな」
ということで、シャルドネを冷やしておくことに決定。今日のシャルドネはアメリカのシャルドネだ。値段はお手頃価格なのだが、旨味と果実味はたっぷり!
時間通りに来店した2人は、さっそくと冷やしておいたシャルドネを喉に落としていく。
「莉子さん、これは香りも豊かだし、旨みもある」
「なかなかじゃないか、莉子」
「もったいないお言葉」
適当な言葉を返しながら、莉子はマカロニサラダと生ハムを差し出した。
すぐにオニオンリングをその場で揚げていく。
「莉子さん、今日のメインは?」
「スペアリブです」
「珍しいな、スペアリブなんて」
莉子は、そうですか? と返し、少し考えているようだ。
思えば、ここ数ヶ月、スペアリブの料理はしていなかったようにも思う。
「そうですね。なんか、骨がついた肉、料理したかったんです」
理由もひどいが、そうかと納得する三井も三井である。
2人の食事の進み具合をみながら料理を進めていくが、今日は2人のスピードが早い。
「今日、お昼、抜いてたり?」
ランチにこなかった2人に尋ねると、同時に首は横に振られた。
「食べたんだが、なんだろう……そば、だったからかな」
「大盛、食べたんだけどなぁ」
消化にいいものだっただけとはいうが、やはりワインのピッチも食べ終わるスピードも早い。
「これ、白身のムニエルです。バターたっぷりなんでワインに合うと思います。トマトサラダ挟んで、スペアリブ、いきますね」
莉子は慌ててオーブンに火をいれていく。
しかしながら、これほどの2人の食欲は久しぶりでもある。
もう一品ぐらい作った方がいいかもしれない。
テキパキと考えながら、ミニトマトとインゲンの簡単ドレッシングで和えたサラダを小さめの器に盛り付け、スペアリブはオーブンへ。
「莉子さん、急かしてしまってすまない」
少し動きが大雑把だったようだ。
がちゃがちゃとした音が連藤の耳に届く。
「あ、いえ、すみません、慌ただしくしてしまって……。今日、お2人の食べる量とか想定外だったもので」
これは2人も気づいていたようだ。
2人はそろって悩んだ顔をつくっている。
莉子は不思議に思いながらも、淡々と作業を進めていく。
既にワインは半分を過ぎていた。
注ぎ足してから莉子はスペアリブの大皿を前に出す。
「どうぞ、美味しそうなアバラですよ~」
並べると半円を描くようにきれいな肋骨だったのだ。
しかも、左右そろっていた。
しっかりと味が染みこんでいて香りは抜群にいいし、なおかつ、お肉も柔らかく焼けている。
煮込みにする人も多いマーマレード味のスペアリブだが、グリルも十分おいしい!
ただ、ちょっと焦げたのはマーマレードのせい。でもきっと、カラメル的なお味になってくれているはずだ。
「連藤さん、お肉、外します?」
「いや、そのままかぶりつくよ」
莉子はおしぼりを多めに用意しておくと、三井は豪快に、連藤は華麗な手つきで肉を頬張っていく。
大胆な食べ方なのだが、2人には色気があふれてくるのが憎らしい。
おかげで斜め後ろの女子グループが2人に釘付けだ。
しょうがない。わかる。
莉子も、視線が釘付けだからだ。
「おー、莉子、いいな、これ。にんにく、結構効いてるし」
「ですよ。今日は女子と密会は無理です」
「それがにんにくの匂いがしても、大丈夫な女がいるんだよ」
「地獄にバンジーしてきた方がいいと思います」
連藤はていねいに肉を食べ、タオルで手と口をキレイに拭い、頷いた。
「肉の厚みがいいし、脂もおいしいスペアリブだ。莉子さん、ありがとう」
「いいえ、連藤さんのためなら!」
鼻歌まじりにグラスを拭く莉子に三井が怒鳴る。
「おい、酒」
「まだグラスに入ってます。空になったら入れてあげますよ。その前に連藤さんに入れてなくなるかもですけど」
「莉子、連藤のほうに酒多めにいれてんだろ。今日は割り勘なんだぞ」
「ケチくさい男ですね。いいじゃないですか。10ミリぐらいでウダウダと」
「絶対、10ミリじゃねぇ」
莉子は三井と言い争いながらも、するんと残りを連藤に注いでしまった。
「はい、ないない。もう1本、ボトル、入れます? 私も飲みますし」
「お前なー」
喧嘩腰の三井の肩を連藤が叩く。
「次のボトルは俺が入れる。それならいいだろ?」
「お、連藤、太っ腹。じゃあ、莉子、アメリカのいいやつ持ってきて」
「うわー、だっさい頼み方~」
相変わらずの2人のやりとりを連藤はつまみにしながら、今注がれたワインを飲んでいく。
しっかりと開いたシャルドネは、旨味以上に香りが豊かだ。
ゆっくりと香りを楽しみながら、サラダをつまみにワインをすすめていく。
今日の夜も、長そうだ。
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