碧が凛に恋をした話

べこ

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私、戸部碧が高輪凛への恋を自覚してから一週間が経った。最初の頃はちょっとぎこちない態度をとってしまって、凛を心配させたりしてしまった。しかし一週間経った今では以前と変わらない私で過ごすことが出来るようになった。

「とべっち~、購買いこうよ。」
「了解ー」
こんな風に、そう、今まで通りの関係で。私にとっても凛にとっても今の関係が一番落ち着くのだから。
「とべっち、なに買うの?」
「私は・・・まだ決めてないや、凛ちゃんは?」
「私はね~メロンパンとイチゴ牛乳!」
「相変わらずだなぁ、それで足りるの?」
凛はいつも少食で、最近は牛乳を飲んで身長を伸ばそうとしていることを私は知っている。
「足りる足りる!それよりとべっち早く決めてよ!」
「えっ、あーごめん!じゃあ・・・鮭おにぎりとたらこおにぎりにするかな。あとお茶で。」
「私たち食べるもの真逆だね。じゃあ決まったから早く買っちゃおう!」
そう言って凛はこちらに向かって微笑んだ。食べるものが逆という些細なことで微笑んでくれることが、今はどうしようもなくいとおしかった。そう感じると同時にやっぱり恋してしまっているということを嫌でも自覚させられた。一週間たった今でもこの感情が正しいのかどうかはわからないままだった。
 私たちは購買で各々目的の物を購入したあと教室へと戻り、昼食にした。
「最近、とべっち考え事してるよね?何かあった?」
「特になにもないよ。」
「ホントに?」
凛は変なところで鋭い。しかも一度興味を持たれると凛の納得する答えが出るまで質問攻めにあうから上手いこと誤魔化さなくてはならない。
「まぁ強いて言うなら進路のことかな。」
「そっか~進路か。」
おっ、これはいけたか?
「でもとべっち、目指してる大学は別に心配ないんでしょ?私のお母さんがとべっちのお母さんから聞いたって。」
ダメか・・・。
「えっとーまぁ確かにそうなんだけど~」
「はっきりしないなぁ。とべっちなんか隠してるでしょ?」
・・・この探求心どうにかならないだろうか。いやここまで探求心があるからこそ勉強が出来るのだろう。まったく、我が親友ながら立派なもんだ。
 ちょうど質問攻めになろうとしたその時、昼休みを終えるチャイムが鳴った。この時初めて学校のチャイムに心から感謝した。
「凛ちゃん!チャイム鳴ったから席戻ろうねー」
「絶対なんかあるでしょ!もー」
文句をいいながらも凛は自分の席に戻っていった。席に着いたあとも何か言いたげな目でこちらを見てくるので、「あとで」と言うとしぶしぶ前を向いた。
 さて、この後の授業では凛になんと答えるのが正解なのか考えることにしよう。幸いにも保健と自習なので真面目に授業を聞かなくても大丈夫だ。
 午後の授業の計画を決めたあと、保健の先生が教室に入ってきた。それと同時に五時限目の開始を告げるチャイムが鳴った。
 しばらく考えた結果、私が選択するべきことは二つ。「真実を伝える」か「誤魔化す」のどちらかひとつだ。この一週間で気づいたことがあるとすれば、自分を偽ることの辛さだ。何度か打ち明けてしまおうと考えたが、告白したあとのことを考えると一歩前へは踏み出せなかった。そのもどかしさがこんなにも私を悩ませて、こんなにも辛いことだったとは知らなかった。しかも異性ではない。同性だ。とにかくわからないことだらけだ。だが、もし受け入れられたなら、その時は凛と恋人として過ごせる。どうしたらいいのかわからないけど、真実を伝えることで今までの関係をどんな結果であれ変えることにするのか、誤魔化すことで今までの関係を変えずにこの感情を抱き続けるのか。どちらかを選択しないといけないことはわかっている。どちらを選んでも一長一短がある。どちらを選んでも後悔すると思う。でも選択しないことにはなにも始まらない。だから私は・・・
 今日は部活がないので、凛と近所の公園に向かった。向かう途中も何度か質問されたが、その都度曖昧に返答した。そんな私の態度にしびれを切らしかけていた凛を「ちゃんと話すから」と言って公園へ誘ったのであった。
「とべっち、ちゃんと話してくれる?」
「うん」
変に緊張するな・・・。
「あのね、凛ちゃん」
「なに?」
「私、凛ちゃんが・・・」
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