Brand New WorldS ~二つの世界を繋いだ男~

ふろすと

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第2章 饗宴編

従者の嗜み

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「どうしてこうなった」

 今は放課後。
 結局のところ、メイド喫茶ってのを見に行こう!という流れを誰も忘れておらず、ユリアの家に遊びに行くことになってしまった。

「ようするに、ユリアの執事さんにそのめいドキッサってのをやってもらえばいいのよね?」
「でも、叔父様はめいドキッサを知っているのでしょうか?」
「まぁ…………その時は俺が教えて、やってもらうから…………」

 そんな話をしていたら、ユリアのお屋敷に着いてしまった。

「そ、そうだ。先に俺が行って知ってるか聞いてくる」

 俺は渾身の言い訳を残して先に屋敷に入った。

「おや、今日はおひとりでお帰りですか?」

 中にはいると、いつものハスキーボイスなゴードンさんが待ち受けていた。

「い、いえそれがですね…………」

 ひとまず事の経緯を打ち明ける。

「───という訳なんです」
「なるほど…………ですが、残念ながら私はそのめいドキッサと言うものを知りません」
「なら、とりあえず大体のことは教えますから、実際に店員をやってみてほしいんです。それと…………あ、セリカさん!」
「? どうかされましたか、洋斗様?」

 セリカさんというのは、ユリアが家を与えた人の一人で、この人もかつては路頭に迷っていた人たちである。今となってはそんな頃があったことなど微塵も感じさせないほど容姿も綺麗で礼儀作法がとてもきちんとしている、いわゆる、現役のメイドさんである。

「セリカさんにもお願いできますか?」
「??」


 ~~~~~~~~~~~~~~~


「……………やけに長いわね」

 ユリア、芦屋、鈴麗は洋斗が屋敷に入っている間、大体15分くらいずっと立ち往生を食らっていた。

「知らなかったら教えるって言ってたし、多分それなんじゃないかな?」
「なんで私ここで待ってるんでしょう、一応ここ私のうちなのに……………あ!来ましたよ!」

 三人が愚痴をこぼしていると、大きな扉が開いて洋斗が出てきた。

「ごめん待たせた」
「もうっ!何やってたのよ!」
「ユリアが思ってたとおり、ゴードンさんもメイド喫茶を知らなかったから教えてたんだ。けど、早速やってもらえるようになった。それで……………」
「「「?」」」
「訳あって男女別で入ることになるけど…………良いよな?」
「まあ、それは別に構わないけど」
「そうね、特に気にすることでもないし」
「それもそうだよな。じゃあまず女子が入ってくれ。といっとも、ユリアにはあまり特別なものではないと思うけど…………」
「分かったわ。行こ、ユリア!」
「は、はいっ!」

 ユリア、鈴麗は屋敷の中に入っていった。

 ー20分後ー

「あ、出てきたよ?」
「なんか様子が変だな…………」

 洋斗と芦屋後しばらく談笑していると、ユリアと鈴麗が出てきた。
 出てきたのだが……………。

「…………お嬢様…………エヘヘ」

 なにやら鈴麗の様子が変だ。

「ユリア、鈴麗はどうしたんだ?」

 洋斗は思わず横にいたユリアに問いかける。ユリアは当惑混じりの笑顔のまま答えた。

「えっと、屋敷に入ったときからずっとこんな調子でニヤけてまして…………」
「いやね、『姫』って呼ばれたことはあっても『お嬢様』なんて呼ばれ方したの初めてだからさー、その……………ヘヘヘ」
 (…………だめだ、『お嬢様』ってワードに完全に骨抜きにされてる)
「じ、じゃあ次は俺たちが行くから…………鈴麗は任せた。にしても、お前『姫』なんて呼ばれてたのか?」
「え?あ!いや…………そう!うちの親っていろいろとオーバーに言う癖があるから!きっと『姫みたいにかわいい我が子』みたいな意味合いだと思うよ!あはは…………」
「ふぅん…………」

 そうして洋斗と芦屋は屋敷の中に入っていった。

 ー30分後ー

「「…………………」」

 二人が出てきた。二人とも何だかボーッとしながらブツブツと話している。

「何というか、思ったほど悪い気はしなかったな…………」
「そうだね、わくわくしていた自分がいたよ……………」

 そこに鈴麗とユリアが加わる。悶々とした空気を漂わせた4人が揃って顔を突き合わせる。

「こ、これは…………もしや妙案だったんじゃないの?」
「よく分かりませんが、これはこれでよいのではと思います…………」
「……………決まりね」

 メイドと主人、という未知の体験ですっかり思考回路が麻痺していた3人は、大事な事を見落としていた。
 果たして、それに最初に気づいたのはやはり聡明な芦屋だった。

「…………いや、ちょっと待って」
「「「?」」」


「そもそも僕たちって、店員側だよね?」
「「「……………………………………あ」」」


 そう。
 自分たちはあくまで出し物を出す側、すなわちこのサービスを受けることはできない。
 というかそもそも、このサービスを施すのが他でもない自分たちなのである。
 それに気付くことを予見していたかのように、4人のところに声が投げられた。

「折角なので、私達がご指導しましょう」

 その声は、玄関を出てきたゴートンさんだった。後ろにはメイト姿のままのセリカさんもいた。

「私たちに出来ることがあれば、何でも協力しますよ」
「決まり、だな………」

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