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第2章 饗宴編
出場者選考
しおりを挟む次の日。
クラスのみんなにメイド喫茶を提出したところ意外にもウケが良く、そのまま出し物に決定してしまった。
「次に、クラスの代表決めですけど、立候補はいますか?」
………………………
(まあいないよな、そりゃ………)
クラスの代表者、なんて大仰なものに自分から名乗り出るのは余程の自信家だろう。あとはくじ引きにでもなるだろうか、と考えながら洋斗は机に突っ伏す。
だが。
「……………はい」
そんな洋斗をよく聞き慣れた声が叩き起こした。
声の主をみると、ユリアが小さく右手を挙げていた。
突っ伏していた上半身が反射的に跳ね起きる。どうやら橘先生も気持ちは同じようで、控えめながら問いかけた。
「あ、あの、ユリアさん?」
「私、出たいです、クラス対抗戦」
「えっと、いいんですか?」
「はいっ!良ければ、ですけど………」
「そうですか…………なら、代表者の一人はユリアさんで決定ですね!他に立候補はいませんか?」
先生の呼びかけに対してざわめき以外の反応を返す生徒はいなかった。この展開は橘先生自身も予想していたようで、長い時間ズルズルと待つようなことはせずにこう言った。
「なら残りは、クラスの成績上位の、光 鈴麗さん、芦屋 道行さん、桐崎 洋斗さん、ということにします」
(………………え、俺?)
すっかり眠りにつく流れになっていた洋斗は、再び上半身を跳ね起こすこととなった。
———時が経ち。
バァン!!、と。
教室に机を叩く音が響いた。
「一体どーなってんのよッ!?」
「ま、まあ落ち着いてよ。大体なんで怒ってるの?」
今は昼休み。一つの机を囲む仲良し四人組の一角、鈴麗が両手で机を叩いている。
「んんん……………よく分かんない!そんな事よりユリア!!」
「は、はいっ!?」
「こんなイベントに名乗りあげるなんて珍しいじゃない。能力も使えないのに、一体どういう事?」
「待ってください!順を追って説明しますから………」
あわあわ、という感じで慌てて威嚇する犬のような鈴麗をなだめる。見ててちょっとおもしろかったりする。
「実はですね、今私が持ってるこの銃ですが、まだ私のものというわけではないんです」
「え、そうなの?」
すっかり怒気が抜けて目を点にした鈴麗にユリアは小さく頷いた。
「この銃はまだ『借り物』でして、この銃を頂くためにはこの対抗戦で最低一勝するように、という約束をしたんです」
「誰にだ?」
「坂華木先生です。これを紹介されたときに言われたんです。『一勝でもしたらこの銃を学校からあなたに贈呈するわ。けど、対抗戦に参加しなかったり、一勝出来なかったりしたら、高校三年間の間ずっと私の専属メイドにするから。いいじゃない!ちょうどクラスでやるんでしょ、メ・イ・ド』という感じです。銃は存在自体が貴重なので、学校側から購入できるほど安くないみたいでして……………」
「なるほど、あの先生中々回りくどい事するわね…………で、もう一つ、なんで洋斗まで代表になってんの?」
「そればっかりは本当に知らん。まさか夏休みの練習がこんなに成果でるなんて思ってなかったんだ」
大きなイベントの主役とも言えるメンバーに抜擢されてしまった洋斗。その先行きに、ただただ頭を垂れる他なかった。
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