Brand New WorldS ~二つの世界を繋いだ男~

ふろすと

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第2章 饗宴編

開祭宣言

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 ー2012.10.06ー

 ウエイトレスの練習やら能力の練習やらで時は流れ、白宴祭の初日がやってきた。
 フォートレス能力専門高等学校は、既に過ぎた残暑に負けないくらいの熱気に包まれ、普段はただの通り道である校舎の間もどこのクラスともしれない出店でごった返しとなっていた。

「みなさん、いよいよ本番ですが、その前に、特別指導に来ていただいたゴートンさんとセリカさん、何か一言お願いできますか?」

 時刻は白宴祭開催前の早朝、一通りの仕込みを終えた1-Dクラスの全員が集まっている。その視線を一心に受けて、つきっきりで給仕のノウハウを指導してきたゴードンさんとセリカさんが喉を鳴らした。

「そうですね……………とりあえずみなさんには最低限必要なことは一通り伝えました。あとはやるべき事を、しかるべき時にやり遂げてください」
「それと、女子のみなさんは恥ずかしがらずに思い切ってやることです。がんばってくださいね!」
「では、もう少し準備を整えてから開会式に向かいましょう!」




「ただ今より、第12回フォートレス能力専門高等学校白宴祭、開祭式を執り行います。司会進行は、生徒会副会長、江ノ元エノモト 密季ミツキが勤めさせていただきます。初めに、魁ヶみ…………玄ちゃん校長先生にご挨拶をいただきます」
魁ヶ峰丘サキガケガミネオカ 玄呉柔郎ゲンゴジュウロウじゃ!勝手に略すでないわい!以上!!」

 ((((挨拶短ッ!?))))

「続きまして、沢村サワムラ ゴウ生徒会長の挨拶です」
「全く、ミッちゃんはいつも堅いよー」
「そんな事はいいので続けてください。あと『ミッちゃん』はやめてください」
「校長をあだ名で読んだミッちゃんの言えることではないな。それはそれとして───」

 そういって、沢村生徒会長は
 スゥーーッ、と大きく息を吸って、


「元『キィィィィン』ァァァァァァふぐゥ!?」

 ((((……………………??))))

 何か叫んだ。あのマイクの音特有のキーンで全く理解できなかったが。
 ちなみに最後の音はうるささにキレた副会長が、会長の側頭部に氷の塊をねじ込んだときの声である。

「……………………まあそんな事はいいとして」

 ((((あ、復活した))))

「俺から言えることは一つだ!お前らでこの白宴祭を全力で盛り上げろ!そして…………全『キィィィィィィィン』ェェェェごふォ!?」

 ((((…………………………………))))

 ちなみに、今度は横の脇腹である。

「…………い、以上………です」

 ((((力尽きた…………))))

「以上を持ちまして、開祭式を終了します」

 ((((スルーした!?))))

 2年生と3年生は毎度の事のように会場から出て行くが、初見の1年生は副会長の指示で生徒会長がステージの奥に連行されているのを口をぽかんと開けながら見送り、放送がかかるまでの間もぬけの殻となったステージを見つめていた。




「お帰りなさいませ、ご主人様っ!」

 時間は午前11時ごろ。
 1-Dでは、現在このメイド喫茶にやってくるお客さんをさばくのに大わらわになっていた。
 開店当初はやはり外見的に近寄り難かったのか、さほどお客さんはいなかった。しかし少ないお客さんがその物珍しさを言い広め、噂を聞きつけて入店した新たなお客さんがまたリピーターに…………というねずみ算方式でどんどん客足が増え始め、今では校内でトップを争う繁盛ぶりとなっている。

「まさかこんなにアタるなんて…………はい、コーヒーとカップケーキ!」
「全くよ!やっぱり『お嬢様』っていう響きがイイのよね!っと……………………お、お待たせしましたーご主人様」

 鈴麗はまだおぼつかない感じなようだが、相手のオッサンにはどストライクなようだ。どうやらリピーターが増えそうである。
 この白宴祭の二日間の間は、例の城門が解放されて校外の一般客も学校内に入る事が出来る。もちろんその分犯罪が起こりやすくなるのだが、それを監視及び取り締まるのがダイアナ・ルベール先輩率いる風紀委員会である。その委員長がかなり癖のある人なのだが、それはまた後の話。そういえば、生徒会の中でまだ名前が出てない人がいたような気がするが、多分気のせいだ。

 そんな話は別として…………。
 そんな一大イベントが全世界に7ヶ所しかない能力専門学校の一つで行われるので、全国のマスコミが本校に集まってくる。そんなマスコミ達が学校内でトップを争う繁盛ぶりを魅せる出店にカメラを向けないはずも無く、1-Dの催し物がきっかけで日本中でメイド喫茶ブームを巻き起こすことになるのだが、そこで働いている1-Dはそんな事など知る由もなかった。


 そして、その喧噪の中で一つの闇が動いていることも。







「…………もしもし、こちら『フクロウ』。予定より混雑が激しいため捜索は難航中。引き続き───あ、チョコクレープひとつ。───失礼、目標の捜索を実行します。」
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