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009. かけら
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書物はそれだけで完成するのではなく、全てがパズルのピースのように未完成の状態で、それらが組み合わさって世界を形成している。
「あー、もう今月は新刊が多いなあ、」
もったりとした黒髪に分厚いレンズの眼鏡をかけた司書が頭を抱えていた。パソコンの画面に羅列された情報は今月発売された書籍のリストで、自治会図書館はその中から数種類を選択し、図書館に所蔵することになっている。自治会から提示されている予算は多くない。そのわずかな予算内で新刊を選択するのは司書の役目だった。
「どのジャンルにしましょうか?」
新たに図書館に配属された後輩司書が眼鏡の司書に問いかけた。所蔵図書選択は初めてのようだった。
「ちょっと待ってね!」
眼鏡の司書の喉が唸る。新刊はとりあえず、新刊コーナーに置かれるだろう。しかし、その後である。新刊コーナーから本来のジャンルに配架された際に何が起こるか、それをある程度予測して購入する本の選定を行う必要があった。
慎重にならざるを得ない理由はこの図書館が特区にある図書館だからである。普通の図書館ではない。図書館内にあるすべての所蔵図書は特区に干渉するのである。
この眼鏡の司書も配属当初、好みの本を入荷したことにより特区の下水システムを崩壊させ、東地区を糞尿塗れにした張本人であった。
配架はバランスが重要だ。入荷する新刊、そしてその本をどの本棚に置くのか……。特区に起こる不可思議な事象の一部がこの施設の本の並びにかかっているのである。
入荷する本と特区のへの干渉内容はまったく関連性がないわけではない。眼鏡の司書が配属された際に購入した図書は特区の水生生物海をテーマにした画家の画集であった。つまり、水関連の書籍を選択し、配架するとおそらく特区へのかんしょうは 水に関係することだと予測できる。そんな予測を立てながら、新刊選定をすることが司書に科された任務であった。
「あ、ちょっと待って、」
「どうされました?」
背中を反らせて椅子に座り頭を抱えていた眼鏡の司書が画面内の文字の羅列を見て前のめりになる。
「璃々村先生の新刊が出てる」
「なんですって?」
「璃々村先生をお知りにならない……?」
先輩司書が指さす。璃々村と書かれた今月発売の絵本。薄桃色のカバーにお姫様と王子様と思しき可愛らしい絵が描かれている。子供向けの童話だろうか。
「有名なんですか?」
「私が好きなだけ」
特区外の作家らしく、取り寄せは特区外のブックセンターになっていた。眼鏡の司書は先ほどまで唸っていたのが嘘のように、滑らかな手つきでその本を選択すると配架依頼を出していた。
「いいんですか?」
「いい、いい。あんたも好きな本一つ選んでいいわよ」
新人司書に特区図書館の新刊選定の方法を身をもって教えるのも先輩の仕事ってね。
眼鏡の司書が分厚いレンズをきらめかせてにやり、笑った。
「あー、もう今月は新刊が多いなあ、」
もったりとした黒髪に分厚いレンズの眼鏡をかけた司書が頭を抱えていた。パソコンの画面に羅列された情報は今月発売された書籍のリストで、自治会図書館はその中から数種類を選択し、図書館に所蔵することになっている。自治会から提示されている予算は多くない。そのわずかな予算内で新刊を選択するのは司書の役目だった。
「どのジャンルにしましょうか?」
新たに図書館に配属された後輩司書が眼鏡の司書に問いかけた。所蔵図書選択は初めてのようだった。
「ちょっと待ってね!」
眼鏡の司書の喉が唸る。新刊はとりあえず、新刊コーナーに置かれるだろう。しかし、その後である。新刊コーナーから本来のジャンルに配架された際に何が起こるか、それをある程度予測して購入する本の選定を行う必要があった。
慎重にならざるを得ない理由はこの図書館が特区にある図書館だからである。普通の図書館ではない。図書館内にあるすべての所蔵図書は特区に干渉するのである。
この眼鏡の司書も配属当初、好みの本を入荷したことにより特区の下水システムを崩壊させ、東地区を糞尿塗れにした張本人であった。
配架はバランスが重要だ。入荷する新刊、そしてその本をどの本棚に置くのか……。特区に起こる不可思議な事象の一部がこの施設の本の並びにかかっているのである。
入荷する本と特区のへの干渉内容はまったく関連性がないわけではない。眼鏡の司書が配属された際に購入した図書は特区の水生生物海をテーマにした画家の画集であった。つまり、水関連の書籍を選択し、配架するとおそらく特区へのかんしょうは 水に関係することだと予測できる。そんな予測を立てながら、新刊選定をすることが司書に科された任務であった。
「あ、ちょっと待って、」
「どうされました?」
背中を反らせて椅子に座り頭を抱えていた眼鏡の司書が画面内の文字の羅列を見て前のめりになる。
「璃々村先生の新刊が出てる」
「なんですって?」
「璃々村先生をお知りにならない……?」
先輩司書が指さす。璃々村と書かれた今月発売の絵本。薄桃色のカバーにお姫様と王子様と思しき可愛らしい絵が描かれている。子供向けの童話だろうか。
「有名なんですか?」
「私が好きなだけ」
特区外の作家らしく、取り寄せは特区外のブックセンターになっていた。眼鏡の司書は先ほどまで唸っていたのが嘘のように、滑らかな手つきでその本を選択すると配架依頼を出していた。
「いいんですか?」
「いい、いい。あんたも好きな本一つ選んでいいわよ」
新人司書に特区図書館の新刊選定の方法を身をもって教えるのも先輩の仕事ってね。
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