すみれさんは俺の性奴隷

田中くりまんじゅう(しゃち)

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第二章 すみれさんと温泉街へ

8「旦那からの電話」

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 ぽつりと雨粒が地面に落ちたかと思うと、一気に雨が降りだした。土砂降りだ。
 俺たちは近くのコンビニで雨宿りをし、なかなかやまないとわかると、傘を買って宿へと歩いた。

 宿へ着いた途端、見計らったようにスマホに着信がはいる。高田和史。すみれの旦那だ。
 俺は出ようかどうか迷った末、出ることにした。
すみれが旅行に出ているタイミングで電話にでないと怪しまれるのではないかと考えたのだ。すみれと会っている事を知られたくない。

「もしもし。村上くんですか。高田です。実は少し聞きたいことがあって電話したんだけど」

「はあ。なんでしょう」

「すみれと今、一緒にいるんじゃないか?」

 どきり。心臓が飛び上がるとはこの事を言うのだろう。なんだこの人。エスパーか?

「そうなんだろう? 女友達と旅行なんていうのは嘘で、君と会うために出かけたんだろう。それくらいのことはわかるんだよ。すみれの女友達なんて一人か二人しかいないし、どちらもお忙しい仕事をしているらしいしね。すみれは嘘が下手なんだよ。私でも見破れるくらいに」

「……」

「君に頼みがある。すみれと別れて欲しい。今すぐにだ。今すぐに君は自分の家へ帰り、すみれは私たちの家に帰るんだ。……君だってわかっているだろう? こんな関係、いつまでも続くわけがないと」

「……俺は。今、一人で自分の家で、本を読んでいます。すみれさんとはあれ以来連絡を取っていません」

「……そうか。だったらいいんだ。私の勘違いだったようだ。悪かった。許して欲しい」

「いえ、いいんです」

 それから失礼します、と言って電話は切れた。
 俺は嘘をつき続けている。あの人の言う通りだ。こんな事いつまでも続くわけがない。でも、それでも俺はすみれを愛している。いつ終わるのかわからない関係だけど、この気持ちは本当なんだ。

「電話、終わった? 突然雨が降って来たから濡れちゃった。早く部屋に行きましょうよ」

「うん。そうしよう」


 俺たちの部屋は和室だった。畳の感触が落ち着く。すみれも和室なんて久しぶりだわ、とはしゃいでいた。彼女の家には洋間しかないのだ。
 部屋の奥のベランダのようなところには、家族風呂、と言うのだろうか。この部屋専用の少し大きめの風呂がついていた。これにはすみれも俺も大はしゃぎで、早速入ろう、と言って盛り上がっていた。

 俺の頭の片隅には、さっきの電話のことがあった。すみれの旦那。和史さん。どうやら俺たちの関係を怪しんでいるようだ。バレるのも時間の問題だな。すみれに相談してみようか。いや、こんな事を考えるのはやめよう。今は楽しい温泉旅行だ。楽しめ、俺。

「お風呂のお湯、張れたわよ。私先に入ってるわね」

 俺は考え事をやめて、服を脱ぎ、タオルで一応前を隠して風呂に向かった。

「やあねえ。隠さなくてもいいじゃない? 私とあなたの仲でしょう」

「そうなんだけどさ。なんか恥ずかしいっていうか」

「恥ずかしがらない。えいっ」

 タオルを奪われた。俺は隠すものを失って、裸一貫、寒空の下に立ち尽くした。季節が夏だとはいえ、日がくれてくると肌寒い。俺はぶるっと震えて、急いで湯船に飛び込んだ。

「きゃっ。ちょっと、ゆっくり入って来てよ。お湯が顔にかかるじゃない」

「ごめん、あんまり寒くてさ」

「もう~」
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