すみれさんは俺の性奴隷

田中くりまんじゅう(しゃち)

文字の大きさ
12 / 18
第三章 すみれさんとテーマパークへ

12「すみれさんとテーマパークへ」

しおりを挟む
 すみれと久しぶりに会える。俺はうきうきしていた。出かける準備は万端。たぬきのキーホルダーのついた家の鍵で戸締りをし、駅へと向かう。
 今回落ちあう場所はお互いの家の中間地点あたりにあるテーマパークだ。俺はテーマパークとか遊園地とかいうやつが大好きで、今回のデートを本当に楽しみにしていた。
 しかし駅に着いた俺を待っていたのは、電車が遅れるという案内版だった。
 のっけからついてない。仕方なくすみれに遅れることを電話して、電車を待つことにした。
 電車を待つ間、文庫本を読むことにした。太宰治「走れメロス」。最近太宰先生にハマっているのだ。小学生の頃教科書で読んで以来だったが、今読んでみると、内容をほとんど忘れていることもあってか、新鮮で、面白い。メロスの強い心に胸を打たれた。
 そんなことをしていると電車がきて、慌てて乗り込んだ。一時間ほどまた文庫本を読んでいると、目的地のテーマパークについた。

「勇くん!」

「すみれ! 久しぶりだな」

 テーマパークの入り口まで歩いていくと、すみれが待っていて、俺に駆け寄ってきた。
 俺は彼女を抱きしめようとするが、異変に気づいてやめる。すみれはなんだか怯えているようだ。その原因は、さっきから視界の隅に入っている男、和史さんだろう。

「やあ、こんにちは、勇くん。こうして実際に会うのは本当に久しぶりだね」

「こんにちは。和史さん」

「うん。とりあえず、園内に入らないか? こんなところで立ち話っていうのも……」

 俺とすみれは和史さんについてテーマパークに入っていった。そこには製作者は可愛いと思って作ったのだろう、少しブサイクで、中途半端に可愛い動物の置物が数体飾られていた。どれも雨風にやられて色が薄くなったり、ところどころ壊れたりしている。

 和史さんは俺たちにアイスクリームをおごってくれて、自分はコーヒーを注文してタバコを吸いながらそれをすすっていた。
 唐突に和史さんが口を開く。

「なあ、勇くん、頼みがあるんだが」

「なんですか?」

 何を頼まれるかは分かっている。すみれのことだろう。しかし俺は彼女を諦める気は無かった。

「すみれを返して欲しい」

 やはりそうきたか。俺はこんな問答がいい加減鬱陶しくなってきたので、つい、刺々しい答え方をしてしまう。

「嫌です」

「君は、君たちは、自分たちがやっていることが悪いとは思わないのかね? 例えば僕はどうなる? 妻が他の男と不倫してるなんて、傷つかないとでも思うのかね?」

「……」

「すみれを返してくれ」

 それは外面もプライドも捨てた、必死の懇願だった。大の大人が、涙を流して自分より十歳以上も若い男に頭を下げている。
 しかし俺は、すみれを諦められなかった。

「できません。俺はすみれさんを愛しています」

「……そうか」

 和史さんが突然俺にぶつかってきた。俺は後ろに倒れる。左の腹部が熱い。何事かと手でさする。固い何かが指に当たった。異物が体の中にある感覚。まさか何か刺さっているのか!? びっくりして頭を持ち上げる。すると。
 長いナイフが深々と俺の腹に突き刺さっていた。
 前の晩に選んだお気に入りのバンドのTシャツは真っ赤に染まっていた。もう着れないだろうな、このTシャツ……。なんて考えたのが最後の記憶で、次の瞬間、俺は気を失った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...