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第三章 すみれさんとテーマパークへ
12「すみれさんとテーマパークへ」
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すみれと久しぶりに会える。俺はうきうきしていた。出かける準備は万端。たぬきのキーホルダーのついた家の鍵で戸締りをし、駅へと向かう。
今回落ちあう場所はお互いの家の中間地点あたりにあるテーマパークだ。俺はテーマパークとか遊園地とかいうやつが大好きで、今回のデートを本当に楽しみにしていた。
しかし駅に着いた俺を待っていたのは、電車が遅れるという案内版だった。
のっけからついてない。仕方なくすみれに遅れることを電話して、電車を待つことにした。
電車を待つ間、文庫本を読むことにした。太宰治「走れメロス」。最近太宰先生にハマっているのだ。小学生の頃教科書で読んで以来だったが、今読んでみると、内容をほとんど忘れていることもあってか、新鮮で、面白い。メロスの強い心に胸を打たれた。
そんなことをしていると電車がきて、慌てて乗り込んだ。一時間ほどまた文庫本を読んでいると、目的地のテーマパークについた。
「勇くん!」
「すみれ! 久しぶりだな」
テーマパークの入り口まで歩いていくと、すみれが待っていて、俺に駆け寄ってきた。
俺は彼女を抱きしめようとするが、異変に気づいてやめる。すみれはなんだか怯えているようだ。その原因は、さっきから視界の隅に入っている男、和史さんだろう。
「やあ、こんにちは、勇くん。こうして実際に会うのは本当に久しぶりだね」
「こんにちは。和史さん」
「うん。とりあえず、園内に入らないか? こんなところで立ち話っていうのも……」
俺とすみれは和史さんについてテーマパークに入っていった。そこには製作者は可愛いと思って作ったのだろう、少しブサイクで、中途半端に可愛い動物の置物が数体飾られていた。どれも雨風にやられて色が薄くなったり、ところどころ壊れたりしている。
和史さんは俺たちにアイスクリームをおごってくれて、自分はコーヒーを注文してタバコを吸いながらそれをすすっていた。
唐突に和史さんが口を開く。
「なあ、勇くん、頼みがあるんだが」
「なんですか?」
何を頼まれるかは分かっている。すみれのことだろう。しかし俺は彼女を諦める気は無かった。
「すみれを返して欲しい」
やはりそうきたか。俺はこんな問答がいい加減鬱陶しくなってきたので、つい、刺々しい答え方をしてしまう。
「嫌です」
「君は、君たちは、自分たちがやっていることが悪いとは思わないのかね? 例えば僕はどうなる? 妻が他の男と不倫してるなんて、傷つかないとでも思うのかね?」
「……」
「すみれを返してくれ」
それは外面もプライドも捨てた、必死の懇願だった。大の大人が、涙を流して自分より十歳以上も若い男に頭を下げている。
しかし俺は、すみれを諦められなかった。
「できません。俺はすみれさんを愛しています」
「……そうか」
和史さんが突然俺にぶつかってきた。俺は後ろに倒れる。左の腹部が熱い。何事かと手でさする。固い何かが指に当たった。異物が体の中にある感覚。まさか何か刺さっているのか!? びっくりして頭を持ち上げる。すると。
長いナイフが深々と俺の腹に突き刺さっていた。
前の晩に選んだお気に入りのバンドのTシャツは真っ赤に染まっていた。もう着れないだろうな、このTシャツ……。なんて考えたのが最後の記憶で、次の瞬間、俺は気を失った。
今回落ちあう場所はお互いの家の中間地点あたりにあるテーマパークだ。俺はテーマパークとか遊園地とかいうやつが大好きで、今回のデートを本当に楽しみにしていた。
しかし駅に着いた俺を待っていたのは、電車が遅れるという案内版だった。
のっけからついてない。仕方なくすみれに遅れることを電話して、電車を待つことにした。
電車を待つ間、文庫本を読むことにした。太宰治「走れメロス」。最近太宰先生にハマっているのだ。小学生の頃教科書で読んで以来だったが、今読んでみると、内容をほとんど忘れていることもあってか、新鮮で、面白い。メロスの強い心に胸を打たれた。
そんなことをしていると電車がきて、慌てて乗り込んだ。一時間ほどまた文庫本を読んでいると、目的地のテーマパークについた。
「勇くん!」
「すみれ! 久しぶりだな」
テーマパークの入り口まで歩いていくと、すみれが待っていて、俺に駆け寄ってきた。
俺は彼女を抱きしめようとするが、異変に気づいてやめる。すみれはなんだか怯えているようだ。その原因は、さっきから視界の隅に入っている男、和史さんだろう。
「やあ、こんにちは、勇くん。こうして実際に会うのは本当に久しぶりだね」
「こんにちは。和史さん」
「うん。とりあえず、園内に入らないか? こんなところで立ち話っていうのも……」
俺とすみれは和史さんについてテーマパークに入っていった。そこには製作者は可愛いと思って作ったのだろう、少しブサイクで、中途半端に可愛い動物の置物が数体飾られていた。どれも雨風にやられて色が薄くなったり、ところどころ壊れたりしている。
和史さんは俺たちにアイスクリームをおごってくれて、自分はコーヒーを注文してタバコを吸いながらそれをすすっていた。
唐突に和史さんが口を開く。
「なあ、勇くん、頼みがあるんだが」
「なんですか?」
何を頼まれるかは分かっている。すみれのことだろう。しかし俺は彼女を諦める気は無かった。
「すみれを返して欲しい」
やはりそうきたか。俺はこんな問答がいい加減鬱陶しくなってきたので、つい、刺々しい答え方をしてしまう。
「嫌です」
「君は、君たちは、自分たちがやっていることが悪いとは思わないのかね? 例えば僕はどうなる? 妻が他の男と不倫してるなんて、傷つかないとでも思うのかね?」
「……」
「すみれを返してくれ」
それは外面もプライドも捨てた、必死の懇願だった。大の大人が、涙を流して自分より十歳以上も若い男に頭を下げている。
しかし俺は、すみれを諦められなかった。
「できません。俺はすみれさんを愛しています」
「……そうか」
和史さんが突然俺にぶつかってきた。俺は後ろに倒れる。左の腹部が熱い。何事かと手でさする。固い何かが指に当たった。異物が体の中にある感覚。まさか何か刺さっているのか!? びっくりして頭を持ち上げる。すると。
長いナイフが深々と俺の腹に突き刺さっていた。
前の晩に選んだお気に入りのバンドのTシャツは真っ赤に染まっていた。もう着れないだろうな、このTシャツ……。なんて考えたのが最後の記憶で、次の瞬間、俺は気を失った。
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