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第三章 すみれさんとテーマパークへ
13「すみれさんの看病」
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次に目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。ピッ、ピッ、と規則正しい機械音が聞こえる。何かの計器に繋がれているようだ。ぼやけていた視界がはっきりしてくると、白い天井が見えた。体を動かそうとすると、その様子に気づいた女性が急いで近づいてきて、俺に抱きついてきた。
「勇くん! 目が覚めたのね! よかった……。よかった……」
すみれだ。抱きつかれたはずみで脇腹が痛んで、俺は顔をしかめた。
「ああ、ごめんなさい。私ったら……。ごめんなさい……」
取り乱し、泣きそうな顔で、何度も謝るすみれ。きっと今俺に抱きついたことだけを謝っているのではないのだろう。彼女の夫が俺を刺したこと。それをも謝りたいのではないのか。そう考えた俺は、口につけられていた酸素マスクを外して、優しい口調でこう言った。
「大丈夫、大丈夫だよ、すみれ。こんなもの、かすり傷さ。こんなたいそうな機械をつけなくっても、病院なんかにこなくっても、俺はピンピンしてるのにさ。でも、俺って自堕落だから、たまには一日中寝て過ごすのも悪くないかな」
すみれは少し笑って、でも真剣な表情で、
「絶対安静よ。今ナースコールをおすわ」
と言ってベッド脇のボタンを押すと、看護師や医師が飛んで来た。俺がそれらの人々と話をしている間に、すみれはいなくなっていた。
それから毎日すみれは見舞いに来た。俺の話し相手をしたり、窓の横に飾ってある切り花の水をかえたり。メロンやなんかのフルーツを持って来てくれて、食べさせてくれたこともあった。
すみれは甲斐甲斐しく世話をしてくれた。そこには、自分の夫が俺に怪我を負わせたことへの、ひけめもあったろう。しかし俺はすみれに毎日会えることが、純粋に嬉しかった。
病院に二週間も入院していると、なんとか体が動かせるくらいには回復してきた。そうすると、健全な男としては性欲をもてあますようになるわけで。
ある日、すみれに命令してみた。
そう、命令。
だってすみれは俺の奴隷だから。
「すみれ、病室の鍵を閉めてくれ」
「え? どうして」
「いいから早く」
小首をかしげて不思議そうにしながらも、素直に俺の言うことに従う彼女。
「閉めたわよ。さあ、何が始まるのかしら?」
「勇くん! 目が覚めたのね! よかった……。よかった……」
すみれだ。抱きつかれたはずみで脇腹が痛んで、俺は顔をしかめた。
「ああ、ごめんなさい。私ったら……。ごめんなさい……」
取り乱し、泣きそうな顔で、何度も謝るすみれ。きっと今俺に抱きついたことだけを謝っているのではないのだろう。彼女の夫が俺を刺したこと。それをも謝りたいのではないのか。そう考えた俺は、口につけられていた酸素マスクを外して、優しい口調でこう言った。
「大丈夫、大丈夫だよ、すみれ。こんなもの、かすり傷さ。こんなたいそうな機械をつけなくっても、病院なんかにこなくっても、俺はピンピンしてるのにさ。でも、俺って自堕落だから、たまには一日中寝て過ごすのも悪くないかな」
すみれは少し笑って、でも真剣な表情で、
「絶対安静よ。今ナースコールをおすわ」
と言ってベッド脇のボタンを押すと、看護師や医師が飛んで来た。俺がそれらの人々と話をしている間に、すみれはいなくなっていた。
それから毎日すみれは見舞いに来た。俺の話し相手をしたり、窓の横に飾ってある切り花の水をかえたり。メロンやなんかのフルーツを持って来てくれて、食べさせてくれたこともあった。
すみれは甲斐甲斐しく世話をしてくれた。そこには、自分の夫が俺に怪我を負わせたことへの、ひけめもあったろう。しかし俺はすみれに毎日会えることが、純粋に嬉しかった。
病院に二週間も入院していると、なんとか体が動かせるくらいには回復してきた。そうすると、健全な男としては性欲をもてあますようになるわけで。
ある日、すみれに命令してみた。
そう、命令。
だってすみれは俺の奴隷だから。
「すみれ、病室の鍵を閉めてくれ」
「え? どうして」
「いいから早く」
小首をかしげて不思議そうにしながらも、素直に俺の言うことに従う彼女。
「閉めたわよ。さあ、何が始まるのかしら?」
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