すみれさんは俺の性奴隷

田中くりまんじゅう(しゃち)

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第三章 すみれさんとテーマパークへ

15「すみれさん、さようなら」

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 あれから一ヶ月がたった。今日は退院の日だ。この一ヶ月の間、俺とすみれは何度も逢瀬を重ねた。しかし脇腹が痛んで、セックスは一度もできなかった。
 入院している間、すみれは毎日のように見舞いにきてくれた。今日の退院の日も、当然のようにきてくれるものと、俺は思っていた。
 しかし荷物をまとめて病室を出て、看護師さんや医者の先生に見送られて病院の門から出て。それでもすみれの姿はない。
 おかしいな。退院の日時を伝え間違えたかな、それとも都合が悪かったのか? なんて考えながらバスに揺られて、自宅に帰ってくる。
 郵便受けに手紙やチラシが溜まっている。それを一枚ずつ確認していると、送り主が「高田すみれ」となっている手紙が一枚、あった。
 俺は急いで中身を確認する。便箋が一枚。そこにはこう書かれていた。

「勇くんへ

 ごめんなさい。本当にごめんなさい。あなたに怪我を負わせてしまって。そして、退院おめでとう。あなたがよくなって、私も嬉しいです。
 あなたの今回の怪我について、私の夫がしたことは許されることではありません。夫は警察の方に捕まって、刑務所に入ることになりました。
 私は彼の妻です。そんな人間が、あなたの周りにいつまでもいてはいけません。彼がまたいつあなたをおそうとも限らないのです。
 私はあなたの前から消えます。どうかそれを許してください。さようなら」

 俺は便箋に書かれた文章を読んでしまうと、頭の中でそれを整理しようとした。しようとしたが、どうにもそれはできそうになくて。目の前が滲んで何も見えなくなって、次の瞬間、大粒の涙が床にぽたっ、と音を立てて落ちた。それからは涙が溢れて、止まらなくなった。

「うっ、うう、うっ……」

 三十分くらいむせび泣いていた。すみれがもういない。俺は、その空白に耐えられるだろうか。この空白を埋める何かを、俺は探し求めた。机の上に、たぬきのキーホルダーが置いてあった。それを手で掴み、胸の前にかざす。たぬきはブサ可愛い顔で、こちらに笑いかけている。

「また会える、きっと」

 俺はそう自分に言い聞かせる。
 そして泣き疲れて、たぬきのキーホルダーを握りしめたまま、ベッドに倒れこんで眠ってしまった。
 目が覚めたら雨音が聞こえた。カーテンを開けると、外はもう暗くなっていて、街灯の光の中に雨粒が見えた。ポツリポツリと降る雨は、傷ついた俺の心を少しだけ癒してくれた。
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