キミの次に愛してる

Motoki

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 二人分の服に食料と、両手に荷物を持った僕達は、夕暮れの町を並んで歩く。

 並んで歩いていても、絶対的な距離を感じていた。  

「早く……再婚しちゃえ」

 足を止めて、声に出す。

 ちゃんと声に出して言ったつもりなのに、声は掠れて。

 僕が止まった事に気付いていない裕文さんには、届いてくれなかった。



 ――背中が、遠いよ。



「姉さん……ごめんね」

 同じ人を、好きになってしまって。

 姉さんは一緒に居られないのに、僕なんかが一緒に居てしまって。 



「ほんと……ごめん」



 キュッと唇を噛んだ僕の背中に、温かな何かが触れた気がした。



『裕文……』



 僕を吹き抜ける風の中聞こえたのは、確かに姉さんの声で――。

 それが聞こえたのだろう裕文さんも、弾かれるようにして振り返った。



 途端。 背中が押される。



「えっ…?」

 つんのめった僕の体を、裕文さんが慌てて抱き留めた。



 こんな時なのに、ふわりと裕文さんの香りが鼻先をくすぐった事に、赤面する。



「大丈夫?」

 驚いた顔で、問いかけてくる。

「大丈夫です! それより聞こえたでしょ? 姉さんの声!」

 興奮気味の僕に、「え?」と裕文さんは驚いた顔をした。

「いや。キミの声しか聞こえなかった。呼んだだろう? 裕文さんって。だから俺、振り返って……」

 二人でしばらく見つめ合って。

 裕文さんの腕に抱き留められたままなのを思い出して、慌てて離れた。

「そんな……僕。お義兄さんの事を裕文さんだなんて、呼んだり……」

「いいよ」

「…………え?」

「呼んでいいよ。裕文って」

「………………」

 赤面する僕に、「え? そこまで?」と裕文さんが笑う。

「これは、呼ぶ練習が必要かなぁ?」

 クスクス笑った裕文さんに背中を押されて、歩き出す。



 背を押してくれている手は一つではないと、確信していた。 



「あのね。……大好きですよ! 姉さんの次に!」

「……おや。これは奇遇だね。俺も大好きだよ。由美の次に」

 二人で目を向け合って、吹き出して笑う。



 そんな僕達を眺めながら、姉さんもきっと、笑っているんだろうな……。



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