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Ⅰ
4
しおりを挟む二人分の服に食料と、両手に荷物を持った僕達は、夕暮れの町を並んで歩く。
並んで歩いていても、絶対的な距離を感じていた。
「早く……再婚しちゃえ」
足を止めて、声に出す。
ちゃんと声に出して言ったつもりなのに、声は掠れて。
僕が止まった事に気付いていない裕文さんには、届いてくれなかった。
――背中が、遠いよ。
「姉さん……ごめんね」
同じ人を、好きになってしまって。
姉さんは一緒に居られないのに、僕なんかが一緒に居てしまって。
「ほんと……ごめん」
キュッと唇を噛んだ僕の背中に、温かな何かが触れた気がした。
『裕文……』
僕を吹き抜ける風の中聞こえたのは、確かに姉さんの声で――。
それが聞こえたのだろう裕文さんも、弾かれるようにして振り返った。
途端。 背中が押される。
「えっ…?」
つんのめった僕の体を、裕文さんが慌てて抱き留めた。
こんな時なのに、ふわりと裕文さんの香りが鼻先をくすぐった事に、赤面する。
「大丈夫?」
驚いた顔で、問いかけてくる。
「大丈夫です! それより聞こえたでしょ? 姉さんの声!」
興奮気味の僕に、「え?」と裕文さんは驚いた顔をした。
「いや。キミの声しか聞こえなかった。呼んだだろう? 裕文さんって。だから俺、振り返って……」
二人でしばらく見つめ合って。
裕文さんの腕に抱き留められたままなのを思い出して、慌てて離れた。
「そんな……僕。お義兄さんの事を裕文さんだなんて、呼んだり……」
「いいよ」
「…………え?」
「呼んでいいよ。裕文って」
「………………」
赤面する僕に、「え? そこまで?」と裕文さんが笑う。
「これは、呼ぶ練習が必要かなぁ?」
クスクス笑った裕文さんに背中を押されて、歩き出す。
背を押してくれている手は一つではないと、確信していた。
「あのね。……大好きですよ! 姉さんの次に!」
「……おや。これは奇遇だね。俺も大好きだよ。由美の次に」
二人で目を向け合って、吹き出して笑う。
そんな僕達を眺めながら、姉さんもきっと、笑っているんだろうな……。
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