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黒い幻影
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階段を上がりきった俺達は、屋上へと続くドアの前で腰を下ろした。バスタオルを敷いてその上に子犬を寝かせてやる。前足の上に頭を乗せて目を閉じる子犬を撫でてやりながら、松岡は俺を上目遣いで見つめた。
「で? 何を思い出したって?」
「ああ、うん」
俺はもう七年も前になる小学生の時の記憶を、ゆっくりと呼び起こしながら話し始めた。
「俺が小学三年の時だったんだけど、すっげぇや嫌な奴がクラスに一人いたんだ。そいつは確か、弁護士の息子で――兎に角、凄く頭のいい奴でさ。でもなんか、俺とは相性悪かったんだよな。毎日ケンカばっかしてたし、とてもじゃないけど『友達』って感じじゃなかった。『お前なんか大嫌いだ』っていつも思ってたし。――でさ。その頃俺、インコ飼ってて」
「インコ?」
「そう。黄色くて、目ぇ見えないヤツだったんだけど。目が赤くて綺麗で……。怖がりなヤツで、外に出してもビビッてずっと俺の肩にしがみ付いてるようなヤツだった。そのくせ、俺が呼んだら声を頼りに飛んで来たりしてさ。俺、すっげぇ可愛がってたんだ。――でも、そいつ。俺の不注意で殺しちまって……。それもさ、俺の背中の下敷きになって死んじまったんだぜ? 有りえねぇだろ?」
ハハッと自嘲の笑いが洩れる。少し沈黙して、俺は話を続けた。
「でもさすがにその時、泣いたんだ、俺。これ以上ないってくらいにさ……」
そんな頃もあったんだな、と今更思う。今ならきっと、一粒の涙も出ない。現に俺は、思い出しもしなかった。
――只。動物を飼うのだけは、なんだか避けていたけど……。
俺の話を黙って聞いていた松岡は、言葉を途切らせた俺をチロリと見ると、再び視線を子犬へと戻した。
「――それで?」
「で? 何を思い出したって?」
「ああ、うん」
俺はもう七年も前になる小学生の時の記憶を、ゆっくりと呼び起こしながら話し始めた。
「俺が小学三年の時だったんだけど、すっげぇや嫌な奴がクラスに一人いたんだ。そいつは確か、弁護士の息子で――兎に角、凄く頭のいい奴でさ。でもなんか、俺とは相性悪かったんだよな。毎日ケンカばっかしてたし、とてもじゃないけど『友達』って感じじゃなかった。『お前なんか大嫌いだ』っていつも思ってたし。――でさ。その頃俺、インコ飼ってて」
「インコ?」
「そう。黄色くて、目ぇ見えないヤツだったんだけど。目が赤くて綺麗で……。怖がりなヤツで、外に出してもビビッてずっと俺の肩にしがみ付いてるようなヤツだった。そのくせ、俺が呼んだら声を頼りに飛んで来たりしてさ。俺、すっげぇ可愛がってたんだ。――でも、そいつ。俺の不注意で殺しちまって……。それもさ、俺の背中の下敷きになって死んじまったんだぜ? 有りえねぇだろ?」
ハハッと自嘲の笑いが洩れる。少し沈黙して、俺は話を続けた。
「でもさすがにその時、泣いたんだ、俺。これ以上ないってくらいにさ……」
そんな頃もあったんだな、と今更思う。今ならきっと、一粒の涙も出ない。現に俺は、思い出しもしなかった。
――只。動物を飼うのだけは、なんだか避けていたけど……。
俺の話を黙って聞いていた松岡は、言葉を途切らせた俺をチロリと見ると、再び視線を子犬へと戻した。
「――それで?」
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