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呪いの鎧武者
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それは、あの『ドッペルゲンガー』の一件から、二週間程経った梅雨の終わりの事だった。
いつものように放課後を喫茶店『ストレイ・ラム』で過ごしていると、これもまたいつものように、友也さんの妹の穂積綾香が店に入って来た。いつもと違うのは、その隣にうちの制服を着たポニーテール姿の少女が立っていた事だ。
綾香は俺達の顔を一通り見回すと、テーブル席にいる客にチラリと視線を投げてからこちらに歩いて来た。
「今ちょっと暇かなぁ?」
カウンターに両手をついて身を乗り出し、綾香は自分の兄の顔を下から見上げた。
「暇そうに見えるか?」
眉間に皺を寄せた友也さんが、それでも隣に立つ少女にはやさしい笑顔を見せる。
「いらっしゃい。いつも妹がお世話になって。我儘な奴だから、迷惑をかけてるんじゃないかな?」
「いえ……、そんな――」
大人しそうな彼女は、肩を窄めるようにしてペコリと頭を下げた。
「佐藤由美です。こんにちは」
俺達にも目を向けた彼女は、俺の隣でダルそうに肘をつく松岡保を見止めて、更に肩を窄めた。仕方のない事だが、松岡は目つきが鋭い上にその物憂げな態度から、初対面の相手にはとっつき難いという印象を与えてしまう。
勿論お客にはいつもの営業スマイルを見せるので、そんな印象を与える事はなかったのだが、綾香が連れて来たという事で、彼の中で佐藤は客として認識されなかったようだった。
「もし迷惑なら――」
佐藤の言葉を遮った綾香が、更に身を乗り出して友也さんに囁く。
「もうっ、彼女はお客。『迷える子羊』をご希望よ!」
横目で松岡を睨み付けながら低く声を出した綾香に、友也さんがピクリと眉を動かした。途端にガタンと松岡が立ち上がり、佐藤にニッコリと微笑みかける。
「これは、失礼致しました。どうぞ、お掛け下さい」
カウンター席を示した松岡に、呆気に取られた彼女がそれでも大人しく椅子に腰掛ける。その彼女に水とおしぼりを出した友也さんが、チラリと階段に目を向けた。
「悪いが保。依羅を呼んで来ておくれ。『子羊』がお待ちだと」
心無しか不機嫌そうな声の友也さんに、俺と同様松岡も驚きの表情を浮かべる。俺達の視線を無視した友也さんは、黙って彼女に出す飲み物を用意していた。暫く友也さんの顔を凝視していた松岡だったが、小さく肩を竦めると二階へと階段を上がって行った。
いつものように放課後を喫茶店『ストレイ・ラム』で過ごしていると、これもまたいつものように、友也さんの妹の穂積綾香が店に入って来た。いつもと違うのは、その隣にうちの制服を着たポニーテール姿の少女が立っていた事だ。
綾香は俺達の顔を一通り見回すと、テーブル席にいる客にチラリと視線を投げてからこちらに歩いて来た。
「今ちょっと暇かなぁ?」
カウンターに両手をついて身を乗り出し、綾香は自分の兄の顔を下から見上げた。
「暇そうに見えるか?」
眉間に皺を寄せた友也さんが、それでも隣に立つ少女にはやさしい笑顔を見せる。
「いらっしゃい。いつも妹がお世話になって。我儘な奴だから、迷惑をかけてるんじゃないかな?」
「いえ……、そんな――」
大人しそうな彼女は、肩を窄めるようにしてペコリと頭を下げた。
「佐藤由美です。こんにちは」
俺達にも目を向けた彼女は、俺の隣でダルそうに肘をつく松岡保を見止めて、更に肩を窄めた。仕方のない事だが、松岡は目つきが鋭い上にその物憂げな態度から、初対面の相手にはとっつき難いという印象を与えてしまう。
勿論お客にはいつもの営業スマイルを見せるので、そんな印象を与える事はなかったのだが、綾香が連れて来たという事で、彼の中で佐藤は客として認識されなかったようだった。
「もし迷惑なら――」
佐藤の言葉を遮った綾香が、更に身を乗り出して友也さんに囁く。
「もうっ、彼女はお客。『迷える子羊』をご希望よ!」
横目で松岡を睨み付けながら低く声を出した綾香に、友也さんがピクリと眉を動かした。途端にガタンと松岡が立ち上がり、佐藤にニッコリと微笑みかける。
「これは、失礼致しました。どうぞ、お掛け下さい」
カウンター席を示した松岡に、呆気に取られた彼女がそれでも大人しく椅子に腰掛ける。その彼女に水とおしぼりを出した友也さんが、チラリと階段に目を向けた。
「悪いが保。依羅を呼んで来ておくれ。『子羊』がお待ちだと」
心無しか不機嫌そうな声の友也さんに、俺と同様松岡も驚きの表情を浮かべる。俺達の視線を無視した友也さんは、黙って彼女に出す飲み物を用意していた。暫く友也さんの顔を凝視していた松岡だったが、小さく肩を竦めると二階へと階段を上がって行った。
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