111 / 115
呪いの鎧武者
50
しおりを挟む
「そう。お前が最初に言っただろ? 『どうして祠じゃなく学園を建てたのか』ってさ。これがその答え。学園じゃなきゃ駄目だったんだ。鎧武者にとっては、祠なんて有難くもなんともない。彼は守りたいんだから、子供達をさ。五つの封印は鎧武者を閉じ込める為のものじゃない。俺達と鎧武者を守る為の封印だ」
「じゃあ、呪いの噂は――先輩の曾爺さんの事故って……」
「勿論、鎧武者の所為じゃない。言うまでもなく佐藤もな。彼がそんな事をする筈がない。感謝してもいいぐらいだからな、曾爺さんには」
「………そう、だな」
あまりに意外なお宝に、俺の思考は働かず言葉も出なかった。
しかし松岡は至極ご機嫌で、ズボンのポケットに両手を突っ込み肩を震わせた。
「ホント、おもしれぇ学園だな、此処は」
そう言って資料室へと戻った彼は、どんでん返しと書棚を元へと戻した。当然その後の、本を戻すという作業は俺一人がやったが。
「でも、なんで此処に隠し部屋があるって判ったんだ?」
「ああ、『変な感覚』って言ってただろう? あれって、部屋の大きさの事だったんだ。それで下の階の廊下を調べてみた。そしたら、下の階では窓六枚分ある筈の奥行が、この部屋では五枚分しかなかった。つまり一枚分、俺の歩幅でいうなら一歩半分、奥行が短かったんだ。だからこの部屋には窓が無い。窓を作ったら、一発でバレちまうからな。それさえ判れば入口を見つけるなんて簡単だったぜ。間取りから考えて、そのどちらかの書棚の後ろしかないと思ったよ」
「へぇ……」
やっぱりすごいと感心した俺だが、それを口に出すのはや止めにした。俺の表情から、バレてしまっているのに違いないだろうが……。
電気を消し資料室を出る時になって、松岡は振り返り感慨深げに言った。
「この部屋、勿体ないよなぁ。山下」
鍵を掛けた扉に手を置いて、彼はゆっくりと扉を撫でた。
「いつまでいるんだろうな、あいつは此処に」
「そりゃ、この学園が無くなるまでだろ。俺達が卒業しても、また新入生が入って来る。中々忙しいんだぜ、あいつは」
俺の台詞に振り返った松岡は、珍しくふわりとした笑みを浮かべた。
「そっか」
それだけ答えて、暗い廊下を歩き出す。
顔は見えなくても、廊下に響く軽い足取りは、彼がまだ笑っている事を俺に伝えていた。
「じゃあ、呪いの噂は――先輩の曾爺さんの事故って……」
「勿論、鎧武者の所為じゃない。言うまでもなく佐藤もな。彼がそんな事をする筈がない。感謝してもいいぐらいだからな、曾爺さんには」
「………そう、だな」
あまりに意外なお宝に、俺の思考は働かず言葉も出なかった。
しかし松岡は至極ご機嫌で、ズボンのポケットに両手を突っ込み肩を震わせた。
「ホント、おもしれぇ学園だな、此処は」
そう言って資料室へと戻った彼は、どんでん返しと書棚を元へと戻した。当然その後の、本を戻すという作業は俺一人がやったが。
「でも、なんで此処に隠し部屋があるって判ったんだ?」
「ああ、『変な感覚』って言ってただろう? あれって、部屋の大きさの事だったんだ。それで下の階の廊下を調べてみた。そしたら、下の階では窓六枚分ある筈の奥行が、この部屋では五枚分しかなかった。つまり一枚分、俺の歩幅でいうなら一歩半分、奥行が短かったんだ。だからこの部屋には窓が無い。窓を作ったら、一発でバレちまうからな。それさえ判れば入口を見つけるなんて簡単だったぜ。間取りから考えて、そのどちらかの書棚の後ろしかないと思ったよ」
「へぇ……」
やっぱりすごいと感心した俺だが、それを口に出すのはや止めにした。俺の表情から、バレてしまっているのに違いないだろうが……。
電気を消し資料室を出る時になって、松岡は振り返り感慨深げに言った。
「この部屋、勿体ないよなぁ。山下」
鍵を掛けた扉に手を置いて、彼はゆっくりと扉を撫でた。
「いつまでいるんだろうな、あいつは此処に」
「そりゃ、この学園が無くなるまでだろ。俺達が卒業しても、また新入生が入って来る。中々忙しいんだぜ、あいつは」
俺の台詞に振り返った松岡は、珍しくふわりとした笑みを浮かべた。
「そっか」
それだけ答えて、暗い廊下を歩き出す。
顔は見えなくても、廊下に響く軽い足取りは、彼がまだ笑っている事を俺に伝えていた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
光のもとで2
葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、
新たな気持ちで新学期を迎える。
好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。
少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。
それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。
この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。
何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい――
(10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる