君との空へ【BL要素あり・短編おまけ完結】

Motoki

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緋い記憶

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「……そうだな。まだ動けない」

 弱い笑みを浮かべた男に、自分の左太腿を擦りながら隆哉は呟いた。

「俺には解らないよ。俺に解るのは、最初に受けた車の衝撃だけ」

 この男はずっと、ここで死の瞬間の苦しみを繰り返している。たった一人の、その気持ちを知りたいが為だけに――。

「高橋が、あんたの事故の事を引き摺ってるのは確かだ。サッカーをやめたのもその所為だろうから。その線から攻めようと思ったのに、やたらとガードが堅いんだ。少しも心を開かない」

「まずはあいつを、納得させるべきだな。じゃないと何もしゃべらない。ヘタな嘘は逆効果だ。変に勘がいいから、すぐに見破られる」

「んー」

「まあ、日数かけてやってみな。今までずっと待ってたんだ。多少延びても構わない」

「こっちはね」

 のんびりと言葉を継いだ隆哉に、男の目がゆっくりと眇められる。

「……どういう意味だ?」

 低く声を出し、重そうに頭を擡げる。それに対し真っ直ぐな視線を向けた隆哉は、表情も薄く言ってのけた。

「だって、死期が近いもん。あいつ」

「……なん…だと?」

 隆哉の言葉に目を剥いた男の上を、車が無造作に走り抜けて行った。



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