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白い影

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 カラの弁当箱を鞄に収めふうっと息をついた彬は、「これで文句ねぇだろ」と秀行を見据えた。

「それで? なんだって?」

 少々呆れ気味の表情を浮かべた秀行が、窓の外の景色から彬へと視線を戻す。それにチッと小さく舌打ちした彬は、身を乗り出して喚くように言い放った。

「だぁからー、お前の幼馴染かなんかで、死んだ女の子がいねぇかって訊いてんだ」

 少しばかり背を仰け反らせた秀行の眉が、ツイと寄せられる。

 ――意味ワケが、解らない。

 朝会った時の開口一番からして、この台詞だったのだ。

「何故、そんな事を訊くんだ?」

 しつこく繰り返される質問に辟易しながら、秀行は机についた手で顎を支えた。

「お前変だろ、今朝からさ」

 そんな子はいないと言えば、「そんな筈はない」と言い寄られ、理由を訊けば、黙りこくる。

 黙ったかと思えば、睨みつけるようにジッと自分の肩辺りを見つめるのだ。その挙句に、「やっぱり、視みえねぇーッ」と頭を抱えて大騒ぎを始める始末……。
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