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白い影

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「し、知らないよっ。変な事言うなよなぁ、相沢ぁ!」

 耳まで赤くした秀行が、隆哉を睨む。その視線に、隆哉が気のない様子でフイッと顔を逸らせた。

「彼女がそう呼んでるんだよ。君の事」

「俺を?」

「何、ヒデ。お前ちっちゃい頃は、そんなふうに呼ばれてたのかよ?」

 自分を見る彬と顔を見合わせた秀行は、「んな訳あるか」と眉間に皺を寄せた。

「ちっちゃい頃って言っても、『ヒデちゃん』か『ヒデくん』だぜ。いくらなんでも『ひぃちゃん』なんて――」

 呆れたように首を左右に振っていた秀行が、ハタとその動きを止めた。

「いたな、一人」

 半ば呆然と呟いた秀行に、「おおっ」と彬が歓喜の声をあげた。「でもなぁ」と首を傾げる秀行へと、じれったそうに身を乗り出す。

「なんだよ、一気に解決じゃねぇか! 誰だよ、それ?」

「……ばぁちゃん」

 カクリ、と彬の肩が落ちた。しゃがみ込んだままの三人の頭上を、ヒューと冷たい風が吹き抜ける。

「は、あぁ?」

 おちょくってんのか! と目を剥く彬に、秀行は慌てて両手を振った。
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