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碧の癒し

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「お前。俊介と、会話したのか?」

 驚きの声をあげた彬に、今度こそ「何を今更」という空気が流れる。

「…………」

 無言。というよりは、閉口したまま固まる無表情な顔に、彬は慌てて言葉を補った。

「じゃなくて、俊介と普通に会話出来たの? 俺ん時みたく、苦しそうなだけじゃなくって。――その、ちゃんと笑ったりしてたのか? あいつ」

 暫くの間を置いて、隆哉は彬から視線を逸らせて気のない様子で頷いた。

「まあね」

「そっか」

 目を伏せた彬が、ヘヘッと笑う。前髪をかき上げ、「そっか」ともう一度口の中で呟いて、つくり笑いのような表情を浮かべた。

 くしゃりと、かき上げたままの前髪を握りしめる。

 嬉しいのか、悔しいのか、自分でも判らない。でも少しだけ、嬉しさが勝っている気がした。

 死んでもあいつは、笑ってたのか。

 あいつは――。

 死んでからも、生前と変わらぬあの人懐っこさで、相沢と『友達』になったんだ。
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