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蒼い約束

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「ああ」

 短く答えた隆哉が塀に背中を預け、吐息と共に蒼い空を見上げる。

「どこに行くんだ、俺を置いて」

 その呟きに目を向けた俊介が頭をもたげ、正面から隆哉を見据えた。その瞳には、微かながらも確かに嫉妬の色が浮かんでいる。

「あいつ言ってたのに。『俺が死ぬ瞬間には、お前は傍にいなきゃなんねぇだろ』って」

「――ってか。なんでお前、ここに来たの?」

「……え……」

 見ると、呆れた目をした俊介が自分を見つめている。それを見返した隆哉は、抑揚なくゆっくりと声を出した。

「あんたに会いに来てると思った。残りの時間を、過ごす為に」

「んでそれを、邪魔しに来たってワケ?」

「………」

「ウソつけ」

 クスクスと俊介が笑う。



 ――『彬を助けてくれ』



 変更後の、俊介の依憑。それを叶える為に隆哉は彬に忠告し、共に過ごしてきた筈だった。

 なのに――。

『でも俺は、お前で充分だよ』

 あの台詞。あれを聞いた時から、隆哉は『疑惑』を抱いていたのだ。そして彬が姿を消したと聞いた時、『疑惑』は『確信』へと変わった。


 ――あいつ、『死ぬ気』だ。

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