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第1章

異世界へ 2

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玄関を出ると、サカシタとアサノが待ってくれていた。…が、少しイライラしている気配がする。

「遅いぞ、新入り!何をやってた」

「はい!すみません」

突然の強い口調に、ふたりは直立不動で謝った。

しかし今の声が女性のモノだったことに気付き、アイとおキクは少し困惑した表情になった。

「あん?オマエ、アイか?」

ズイッと一歩前に詰め寄ったのは、黒のパンツスーツに身を包んだ格好いい女性だった。肩まで伸びた青味がかった銀髪を白いバレッタで束ねている。

「アサノさん!?」

アイは目をまん丸にして素っ頓狂な声を出した。

「何を驚いてやがる?確かに髪色は変えてるが、オマエほどじゃないだろうがっ!」

アサノはアイにデコピンした。

「あう!」

アイはおデコをさすりながら少し涙目になる。

(問題はそこじゃないよ、アサノさん)

おキクはアイに、ちょっとだけ同情した。

「アサノはコッチに来ると性格変わるからな」

サカシタがボソッと呟く。

サカシタは顔立ちに目立った変更点は見られなかったが、特筆すべきはその服装。真っ赤なジャージに白いマントを羽織っていた。凡人には思いつかないハイセンスな組み合わせである。

「なんか言ったか、サカシタ?」

アサノがギロリとサカシタを睨んだ。

「言ってません!」

サカシタはブンブンと首を横に振った。そして「俺の方が先輩なのに」と悲しそうに呟いた。

   ~~~

4人はカタン市の中心街を市長官邸に向けて歩いていた。人の姿も多くあり、賑やかな大通りである。

市長官邸に近付くにつれ主要な機関が多くなり、人の姿もどんどん増えていった。4人は人波を縫うように進んでいく。

「待ってたよ、アイ」

不意にアイの耳元で、男性の声がした。アイは咄嗟に振り返るが、たくさんの人が歩き去っていく姿があるだけで、声の主の姿は何処にもいない。

「誰?」

アイは声の主に呼びかけた。

「僕は、アウェイ」

再びアイの耳元で囁く。アイも再度振り返るが、やっぱり何処にも姿が見えない。

「赤と白の姫君を見つけるんだ…」

「待って!」

声の主が遠のく気配を感じて、アイは思わず呼び止めた。

「アイ、何してるの?」

そのときおキクが、不思議そうな顔でアイに話しかけてきた。

「そんなとこで、クルクル回って」

おキクから見たら、アイがその場でクルクルと回っているように見えたらしい。

「今誰か、話しかけてこなかった?」

「え…さあ?気付かなかったけど」

「あれ…?」

アイは納得出来ない顔で首を傾げる。

「着いたぞ、オマエら!早く来い」

アサノが大きな声で、ふたりに呼びかけた。

アイとおキクが大慌てで追いついていく。

「市長への挨拶はオマエらだけで行ってこい。私らはこの辺で待ってるからな」

「市長は優しい方だから、そんなに緊張しなくていいよ」

アサノとサカシタに見送られ、アイとおキクは並んで市長官邸に入っていった。
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