中2女子が夏休みに、異世界を救うことになりました!〜RPGにようこそ〜

さこゼロ

文字の大きさ
26 / 98
第1章

赤の姫君 6

しおりを挟む
夕方になり自主練を切りあげたアイとおキクは、カタン出張所に戻ってきた。そこで建物の入り口前に座り込んでいるフランの姿に気付く。

「フラン!?どうしたの、こんな所で?」

アイは驚いたように、フランに駆け寄る。

「仲間探しは、上手くいかなかったのですか?」

おキクも心配そうに声をかけた。

「アイさん、おキクさん。良かった…また会えた」

フランは安心したように微笑んだ。

「そうだ、フラン。お腹すいてない?」

そのときフランのお腹が「ぐぅー」と鳴った。フランは気恥ずかしそうに顔を赤らめる。そういえば朝から何も食べていなかった。

「決まり!」

アイはフランの手を引いて歩きだした。目的地は市長官邸の食堂である。

「そういえば、何であそこが分かったの?」

アイがフランに不思議そうに尋ねた。

「エルフの目撃情報を辿ったら、割と簡単に分かりました」

良くも悪くもアイは目立っていたのだ。おキク思わず苦笑いになる。

「フランは名探偵だね」

アイは右手の親指を立てて「イイネ」と笑った。

   ~~~

3人が食事を終えた後にひと息ついていると、フランがポツリと口を開いた。

「詰所には屈強そうな冒険者が沢山いてましたよ」

フランは眉間にシワを寄せ強面を作ると「こんな顔した人」と説明を付け足す。

「でも向こうは私のことを、奇異の目で見てくるんです。もちろん何時ものことで、理由も重々承知していますが…でも今日初めて気付いたんです」

フランはアイとおキクに真剣な顔を向けた。

「私が探していたのは強い仲間ではなくて、信頼できる仲間なんだと」

フランは昼間の戦闘を思い出す。あの一戦は、確かに強い信頼関係で結ばれていたと確信している。

「もしお嫌でなければ、私をおふたりのパーティに加えてください」

「全然イヤじゃないよ!」

アイが間髪入れず、声を張り上げた。

「私も大歓迎です!」

おキクも続けて、大きく頷く。

そんなふたりの返事を聞いて、フランはホッとしたような表情になる。それから倒れ込むように、テーブルにドッと突っ伏した。

「あー、スゴく緊張しましたー」

フランの震える声を聞きながら、アイとおキクは思わず笑ってしまった。

そのときフランは思い出す。

それは詰所の帰り際、興味本位で受付に質問したときのことである。30代後半くらいで、長い茶髪を三つ編みにした縁なし眼鏡の女性であった。

「風切鳥?」

「はい」

女性の問い掛けにフランは頷いた。

「あの魔物は結局は体当たりしかしないので、軍から支給されるトリモチを使えば誰でも倒せるわよ」

「では、トリモチを使わないならどうですか?」

「…魔物襲来初期の頃は手を焼いたようですね。あの速度にカウンターを合わせるとなると、かなりの熟練剣士でもないと難しかったようです」

その答えを聞いてフランは身震いする。

そう…普通は剣士でやっとなのだ。それをアイは、確かに見たことのない武器であったが、飛び道具でやってのけたのだ。

自分たちをヒヨッコと自称している、この2人の秘めたる力に、フランは畏敬の念に近いものを感じていた。

   ~~~

アイとおキクは自分たちの方にも話があると、カタン出張所の宿泊部屋にフランを案内した。

3人揃ってアイのベッドに腰掛ける。

「フラン、私ホントはエルフじゃないの」

「え?」

アイの突然の告白にフランは目を丸くして驚いた。

「これから信じられない話をするよ」

アイの真剣な眼差しを受け、フランはゴクリと息を飲む。

「私たちは…別の世界から来た異世界人なんだ」

「…は?」

途端にフランの口が、開いたまま閉じなくなった。

フランの予想通りの反応に、アイも特別驚きはしない。とはいえ、こんな話、どーやったら信じてもらえるのだろうか…

「おキク、コレどうやったら証明出来るかな?」

「さあ?証明なんて出来るのかしら」

アイとおキクは「うーん」と思案顔になる。

「あ、違います。信じてない訳ではありません」

フランは慌てて両手を振った。

「おふたりの言葉なら、私は無条件で信じます」

純血種に出会えた感激が嘘でも、そんな事は全然関係ない。

正直…絶対あり得ないと思っていた『異世界人』に巡り逢えたのだ。

「だけど、こんな幸運…あって良いのでしょうか」

フランの目からポロポロと涙が零れた。

「フラン?」

「ちょっと、大丈夫?」

アイとおキクが慌ててフランに寄り添う。

「全然大丈夫ですよ」

フランは涙を流しながら、「アハハ」と声をたてて笑った。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

僕らの10パーセントは無限大

華子
青春
 10%の確率でしか未来を生きられない少女と  過去に辛い経験をしたことがある幼ななじみと  やたらとポジティブなホームレス 「あり得ない今を生きてるんだったら、あり得ない未来だってあるんじゃねえの?」 「そうやって、信じたいものを信じて生きる人生って、楽しいもんだよ」    もし、あたなら。  10パーセントの確率で訪れる幸せな未来と  90パーセントの確率で訪れる悲惨な未来。  そのどちらを信じますか。 ***  心臓に病を患う和子(わこ)は、医者からアメリカでの手術を勧められるが、成功率10パーセントというあまりにも酷な現実に打ちひしがれ、渡米する勇気が出ずにいる。しかしこのまま日本にいても、死を待つだけ。  追い詰められた和子は、誰に何をされても気に食わない日々が続くが、そんな時出逢ったやたらとポジティブなホームレスに、段々と影響を受けていく。  幼ななじみの裕一にも支えられながら、彼女が前を向くまでの物語。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...