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第1章
赤の姫君 5
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カタン市に着くと、アイたちはお礼を言って商人たちと別れた。
そしてフランが冒険者の詰所に向かうと言うので、ミーコの案内のもと一緒について行くことにする。
「フランはどんな用事で詰所に行くの?」
アイは世間話のつもりで質問した。
「そうですね…」
フランは少し思案したあと、アイの顔を覗き見る。
「あまり暗く受取らないで欲しいのですが…仇を討つために強い仲間を探してるんです」
「…ああ、そうなんだ」
アイはまたしても、しまったと後悔した。
微妙な空気になりかけたそのとき、ミーコがひょいとおキクの肩に飛び乗る。それから何やらおキクが頷くと、眼前の建物を指差した。
「着いたみたいよ」
中央に大きな扉があり、両側に小さな部屋がいくつも並んでいる。三階建のまるで中学校のような建物であった。
「少し寂しいけど…ここでお別れだね」
既に歩き出していたフランは、アイの言葉に驚いたように振り返った。
「…え?おふたりは入らないんですか?」
「私たち今日初めて魔物と戦ったようなヒヨッコだから、恐れ多くてこんな所に入れないよ」
アイが「ケラケラ」と明るく笑う。
「強い仲間が見つかることを、私たちも願っていますね」
おキクも少し寂しそうに微笑んだ。
「そう…ですか」
フランは少しの間、アイとおキクの顔を見つめていたが、やがてゆっくりと頭を下げた。
「ここまで、ありがとうございました」
フランが建物に入っていくのを見届けてから、おキクが努めて元気な笑顔を見せる。
「私たちは、自主練に戻りましょう」
「よーし、ガンガンいくぞー!」
アイもガッツポーズを作りながら、努めて元気に振る舞った。
~~~
あの日の夜。
カムカ村は魔王軍の襲撃にあった。住民が100人もいないような小さな村に、何百もの魔物が押し寄せた。
勝ち目など無かった。
たくさん殺された。
そして、生き残りが村の中央広場に集められる。
フランもその中にいた。
やがて、ひとりの青年が姿を現した。
真っ黒な長衣を身に纏い、銀色の腰帯を巻いている。深くかぶったフードの奥から、少しつり上がった鋭い目が覗いていた。
「僕はアウェイといいます。覚えてくれなくて構いません。特別恨みはありませんが、皆さんには死んでもらいます」
アウェイは腰に差している銀色の細身剣をカシャンと鳴らしながら、抑揚のない無機質な声で、そう告げた。
それからアウェイが両手を天にかざすと、その先にまるで太陽のような火球が創りだされる。
見上げた村人たちは、その大きさに自分たちは助からないと理解した。
アウェイが腕を振り下ろすのと同時に、火球が地面に激突する。凄まじい業火に、村人たちは苦しみを感じる暇もなかった。
ところが火球が直撃する寸前に、フランの足元の地面が突然崩落した。フランは避ける間もなく足元の空間に落下し、そのまま気を失った。
フランが意識を取り戻したのは、夜が明けてからのことであった。ヨロヨロと、四つん這いで穴から這い上がっていく。
地上に魔物の姿は既になく、生き残っている人間は一人もいなかった。
「生き残りがいたのかい」
突然背後から声をかけられ、フランの身体が一瞬で硬直する。
広場の横に建つ教会の屋根の上に、コチラを見下ろしながらアウェイが立っていた。フランの全身が恐怖でガタガタと震えだす。
「その強運に免じて、今回は見逃してあげるよ」
アウェイが愉しそうに微笑んだ。
「ぜ…絶対赦さない!いつか必ず…殺してやる!」
フランが必死に、声を吐き出した。
「僕を殺すなら、もっと力が必要だよ。強い仲間を見つけて、復讐しに来るといい」
アウェイの体がフワリと空に浮かび上がる。
「もっとも僕に勝ちたいなら、異世界人くらい見つけてこないと無理だろうけどね」
それだけ言い残すと、空の彼方に飛び去った。
それが…半年ほど前のことであった。
~~~
フランはカタン出張所の入り口横に、身を寄せるように座りこんでいた。いつのまにかウトウトしていたらしい。
空は赤く染まり、夕方に差し掛かっていた。
そしてフランが冒険者の詰所に向かうと言うので、ミーコの案内のもと一緒について行くことにする。
「フランはどんな用事で詰所に行くの?」
アイは世間話のつもりで質問した。
「そうですね…」
フランは少し思案したあと、アイの顔を覗き見る。
「あまり暗く受取らないで欲しいのですが…仇を討つために強い仲間を探してるんです」
「…ああ、そうなんだ」
アイはまたしても、しまったと後悔した。
微妙な空気になりかけたそのとき、ミーコがひょいとおキクの肩に飛び乗る。それから何やらおキクが頷くと、眼前の建物を指差した。
「着いたみたいよ」
中央に大きな扉があり、両側に小さな部屋がいくつも並んでいる。三階建のまるで中学校のような建物であった。
「少し寂しいけど…ここでお別れだね」
既に歩き出していたフランは、アイの言葉に驚いたように振り返った。
「…え?おふたりは入らないんですか?」
「私たち今日初めて魔物と戦ったようなヒヨッコだから、恐れ多くてこんな所に入れないよ」
アイが「ケラケラ」と明るく笑う。
「強い仲間が見つかることを、私たちも願っていますね」
おキクも少し寂しそうに微笑んだ。
「そう…ですか」
フランは少しの間、アイとおキクの顔を見つめていたが、やがてゆっくりと頭を下げた。
「ここまで、ありがとうございました」
フランが建物に入っていくのを見届けてから、おキクが努めて元気な笑顔を見せる。
「私たちは、自主練に戻りましょう」
「よーし、ガンガンいくぞー!」
アイもガッツポーズを作りながら、努めて元気に振る舞った。
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あの日の夜。
カムカ村は魔王軍の襲撃にあった。住民が100人もいないような小さな村に、何百もの魔物が押し寄せた。
勝ち目など無かった。
たくさん殺された。
そして、生き残りが村の中央広場に集められる。
フランもその中にいた。
やがて、ひとりの青年が姿を現した。
真っ黒な長衣を身に纏い、銀色の腰帯を巻いている。深くかぶったフードの奥から、少しつり上がった鋭い目が覗いていた。
「僕はアウェイといいます。覚えてくれなくて構いません。特別恨みはありませんが、皆さんには死んでもらいます」
アウェイは腰に差している銀色の細身剣をカシャンと鳴らしながら、抑揚のない無機質な声で、そう告げた。
それからアウェイが両手を天にかざすと、その先にまるで太陽のような火球が創りだされる。
見上げた村人たちは、その大きさに自分たちは助からないと理解した。
アウェイが腕を振り下ろすのと同時に、火球が地面に激突する。凄まじい業火に、村人たちは苦しみを感じる暇もなかった。
ところが火球が直撃する寸前に、フランの足元の地面が突然崩落した。フランは避ける間もなく足元の空間に落下し、そのまま気を失った。
フランが意識を取り戻したのは、夜が明けてからのことであった。ヨロヨロと、四つん這いで穴から這い上がっていく。
地上に魔物の姿は既になく、生き残っている人間は一人もいなかった。
「生き残りがいたのかい」
突然背後から声をかけられ、フランの身体が一瞬で硬直する。
広場の横に建つ教会の屋根の上に、コチラを見下ろしながらアウェイが立っていた。フランの全身が恐怖でガタガタと震えだす。
「その強運に免じて、今回は見逃してあげるよ」
アウェイが愉しそうに微笑んだ。
「ぜ…絶対赦さない!いつか必ず…殺してやる!」
フランが必死に、声を吐き出した。
「僕を殺すなら、もっと力が必要だよ。強い仲間を見つけて、復讐しに来るといい」
アウェイの体がフワリと空に浮かび上がる。
「もっとも僕に勝ちたいなら、異世界人くらい見つけてこないと無理だろうけどね」
それだけ言い残すと、空の彼方に飛び去った。
それが…半年ほど前のことであった。
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フランはカタン出張所の入り口横に、身を寄せるように座りこんでいた。いつのまにかウトウトしていたらしい。
空は赤く染まり、夕方に差し掛かっていた。
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