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第2章
ヤータ市防衛戦 1
しおりを挟む「いつまでそうやって寝そべっているつもり?早くお立ちなさい」
ソアラが嘲るようにアイを見下ろす。
アイは警戒しながら立ち上がると、ソアラからゆっくり距離をとった。
「どういうつもり?」
「別に他意はなくてよ」
ソアラが「フフッ」と優雅に微笑む。
「私はアナタを高く評価していますの。だから私を愉しませなさい!」
ソアラは右手の魔法杖をアイに向けて突き出した。
「火炎小銃!」
小さな魔法陣が円を描く様に杖の周りに浮かび上がると、全ての魔法陣から雨のように火炎弾が撃ち出される。
「わわっ!」
アイは慌てて逃げ回るが、数が多くて全てを避けきれない。何発かくらいながら、一際大きな木の陰に逃げ込んだ。一発一発の威力が小さくて、何とか命拾いをしたようだ。
「離れてたら、絶対負ける」
アイの直感が訴えかけた。
「一気に近付いて、零距離で決めるよ!」
「了解しました」
アイは大きく深呼吸をして、ソアラの次の攻撃に備える。
「隠れても無駄よ」
ソアラは魔法杖を顔の前で縦に構えると、一気に上に振り上げた。
「地獄の業火!」
「攻撃きます」
ソアラとセーレーの声が重なった。同時にアイが木陰から飛び出す。その直後、今までアイがいた場所に火柱が噴き上がった。
「えっ!?」
一気に目前にまで詰め寄られ、ソアラの表情が驚きで硬直する。
「いける!」
アイはタックルで組み伏せようと、グッと身を低くして突っ込んだ。
その瞬間、アイの足元の地面が爆発する。
ソアラを中心に、その足下から輝く魔法陣が広がっていた。
アイはモロに吹き飛ばされ、背中から地面に叩きつけられる。
「ゲホッ」
衝撃で呼吸が出来ない。
「な…何が…?」
身体が痺れて起き上がれない。
「どんな気分かしら?勝ちを確信した直後の無様な敗北感は?地雷罠ですわ。これで決めるつもりでしたけど、随分と頑丈なのね」
ソアラは優雅に歩み寄ると、勝ち誇ったようにアイを見下ろした。
「なん…で?」
「言ったでしょう…高く評価していると。アナタ魔法を躱すんですもの、このくらいしてくると思ってましたわ。ただこの私を、他の魔法士と同じように考えたのが、アナタの敗因ね」
ソアラは口元に右手の甲を当てると、愉快そうに微笑んだ。
「さあ、まだ何か手はあるのかしら?もう何も無ければ、終わりにするわよ」
「バカに…するな!」
アイは倒れたまま、短銃を乱射した。
しかしソアラは容易に躱す。
その隙に、アイは何とか立ち上がった。
「アイ、この状況を打破するために、木のバレットを推奨します」
「木?」
「木のバレットは大地属性ですので威力重視になりますが、大地のバレットより威力は低く扱い易い筈です」
「特殊弾はダメ。あの人死んじゃうかもしれない」
「彼女の耐久値は不明ですが、防護魔法も展開しています。生命を奪うことはないと推測します。他に方法はありません」
アイは睨みつけるようにソアラを見つめる。それから小さく息を吐き出すと、先程の大きな木の後ろに再び隠れた。
「まだ何かを、見せてもらえるのかしら?」
ソアラが満面の笑顔で嬉しそうに笑う。
程なくしてアイが再び姿を現した。手に持つ武器が光輝いている。
アイは短銃を両手で構えると、ゆっくりと銃口をソアラに向けた。
「真っ向勝負ね。いいでしょう」
ソアラは右手の魔法杖をアイに向けて突き出した。すると杖の先端に、一際大きな魔法陣が、光を放ちながら浮かび上がる。
「火竜の咆哮!」
ソアラの詠唱に呼応して、魔法陣から大きな炎が吹き出した。その炎が竜の頭を形作ると、大きく開いた口から熱光線を放射する。
同時にアイは短銃の引金を引いた。直径20cm程のエネルギー光線が放射され、竜のブレスとぶつかり合う。
いくら威力が低いとは言え、凄まじい反動がアイに襲いかかった。吹き飛ばされないように、必死に踏ん張る。
ぶつかり合ったエネルギーは、徐々に木のバレットが圧し始め、そしてついに圧倒した。
アイの放ったエネルギー光線は、火竜の咆哮を粉砕し、ソアラの眼前に一気に迫る。
迫りくるエネルギー光線を、ソアラは訳も分からずに、ただ呆然と眺めていた。
「やっぱり、ダメーー!」
アイは咄嗟に、銃口を上に逸らす。
エネルギー光線は軌道を逸れ、ソアラの目前を掠めて天空に消え去っていった。
そのせいでバランスを崩したアイは、反動で後方に吹き飛び、木の幹に叩きつけられる。
次の瞬間、アイの体が光に包まれた。アイの耐久値は、本当にギリギリだったのだ。
「あーあ、負けちゃったか」
アイは自分の身体に目を向けると、そのまま空に舞い上がっていった。
ひとり残されたソアラは、ただ呆然と立ち尽くす。
そのとき不意に、後方で草の鳴る音がした。
ソアラは緩慢に振り返る。
西洋甲冑のような全身鎧姿の魔物が1体、茂みの中から姿を現した。
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