38 / 98
第2章
ヤータ市防衛戦 1
しおりを挟む「いつまでそうやって寝そべっているつもり?早くお立ちなさい」
ソアラが嘲るようにアイを見下ろす。
アイは警戒しながら立ち上がると、ソアラからゆっくり距離をとった。
「どういうつもり?」
「別に他意はなくてよ」
ソアラが「フフッ」と優雅に微笑む。
「私はアナタを高く評価していますの。だから私を愉しませなさい!」
ソアラは右手の魔法杖をアイに向けて突き出した。
「火炎小銃!」
小さな魔法陣が円を描く様に杖の周りに浮かび上がると、全ての魔法陣から雨のように火炎弾が撃ち出される。
「わわっ!」
アイは慌てて逃げ回るが、数が多くて全てを避けきれない。何発かくらいながら、一際大きな木の陰に逃げ込んだ。一発一発の威力が小さくて、何とか命拾いをしたようだ。
「離れてたら、絶対負ける」
アイの直感が訴えかけた。
「一気に近付いて、零距離で決めるよ!」
「了解しました」
アイは大きく深呼吸をして、ソアラの次の攻撃に備える。
「隠れても無駄よ」
ソアラは魔法杖を顔の前で縦に構えると、一気に上に振り上げた。
「地獄の業火!」
「攻撃きます」
ソアラとセーレーの声が重なった。同時にアイが木陰から飛び出す。その直後、今までアイがいた場所に火柱が噴き上がった。
「えっ!?」
一気に目前にまで詰め寄られ、ソアラの表情が驚きで硬直する。
「いける!」
アイはタックルで組み伏せようと、グッと身を低くして突っ込んだ。
その瞬間、アイの足元の地面が爆発する。
ソアラを中心に、その足下から輝く魔法陣が広がっていた。
アイはモロに吹き飛ばされ、背中から地面に叩きつけられる。
「ゲホッ」
衝撃で呼吸が出来ない。
「な…何が…?」
身体が痺れて起き上がれない。
「どんな気分かしら?勝ちを確信した直後の無様な敗北感は?地雷罠ですわ。これで決めるつもりでしたけど、随分と頑丈なのね」
ソアラは優雅に歩み寄ると、勝ち誇ったようにアイを見下ろした。
「なん…で?」
「言ったでしょう…高く評価していると。アナタ魔法を躱すんですもの、このくらいしてくると思ってましたわ。ただこの私を、他の魔法士と同じように考えたのが、アナタの敗因ね」
ソアラは口元に右手の甲を当てると、愉快そうに微笑んだ。
「さあ、まだ何か手はあるのかしら?もう何も無ければ、終わりにするわよ」
「バカに…するな!」
アイは倒れたまま、短銃を乱射した。
しかしソアラは容易に躱す。
その隙に、アイは何とか立ち上がった。
「アイ、この状況を打破するために、木のバレットを推奨します」
「木?」
「木のバレットは大地属性ですので威力重視になりますが、大地のバレットより威力は低く扱い易い筈です」
「特殊弾はダメ。あの人死んじゃうかもしれない」
「彼女の耐久値は不明ですが、防護魔法も展開しています。生命を奪うことはないと推測します。他に方法はありません」
アイは睨みつけるようにソアラを見つめる。それから小さく息を吐き出すと、先程の大きな木の後ろに再び隠れた。
「まだ何かを、見せてもらえるのかしら?」
ソアラが満面の笑顔で嬉しそうに笑う。
程なくしてアイが再び姿を現した。手に持つ武器が光輝いている。
アイは短銃を両手で構えると、ゆっくりと銃口をソアラに向けた。
「真っ向勝負ね。いいでしょう」
ソアラは右手の魔法杖をアイに向けて突き出した。すると杖の先端に、一際大きな魔法陣が、光を放ちながら浮かび上がる。
「火竜の咆哮!」
ソアラの詠唱に呼応して、魔法陣から大きな炎が吹き出した。その炎が竜の頭を形作ると、大きく開いた口から熱光線を放射する。
同時にアイは短銃の引金を引いた。直径20cm程のエネルギー光線が放射され、竜のブレスとぶつかり合う。
いくら威力が低いとは言え、凄まじい反動がアイに襲いかかった。吹き飛ばされないように、必死に踏ん張る。
ぶつかり合ったエネルギーは、徐々に木のバレットが圧し始め、そしてついに圧倒した。
アイの放ったエネルギー光線は、火竜の咆哮を粉砕し、ソアラの眼前に一気に迫る。
迫りくるエネルギー光線を、ソアラは訳も分からずに、ただ呆然と眺めていた。
「やっぱり、ダメーー!」
アイは咄嗟に、銃口を上に逸らす。
エネルギー光線は軌道を逸れ、ソアラの目前を掠めて天空に消え去っていった。
そのせいでバランスを崩したアイは、反動で後方に吹き飛び、木の幹に叩きつけられる。
次の瞬間、アイの体が光に包まれた。アイの耐久値は、本当にギリギリだったのだ。
「あーあ、負けちゃったか」
アイは自分の身体に目を向けると、そのまま空に舞い上がっていった。
ひとり残されたソアラは、ただ呆然と立ち尽くす。
そのとき不意に、後方で草の鳴る音がした。
ソアラは緩慢に振り返る。
西洋甲冑のような全身鎧姿の魔物が1体、茂みの中から姿を現した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる