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第2章
2日目終了 4
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亜衣たちが目を覚ますと、佐藤と水戸がドームの中で並んで待っていた。
「皆んな、お疲れさま」
佐藤がいつもどおりの笑顔で出迎える。
「今朝の話の続きなんだけど…」
「今朝の話?」一同はキョトンとした。全員の表情を察した佐藤が「ああ!」と両手を打った。
「アウェイの話だけど」
それから改めて言い直す。
「あ!」
亜衣たちはやっと思い当たった。そうか、あれは今朝の話になるのか。
「何か分かりましたか?」
フランが緊張した面持ちで反応する。
「セーレーの情報を洗ってみたのだけど、ほとんど出てこないんだ」
佐藤は残念そうに肩をすくめた。
「目撃者が全員死んでいるのか、そもそも姿を現していないのか分からないが、その名を知っているのは今のところ僕たちだけなんだ」
「それって…」
お菊が考え込むように顔を伏せる。
「とても不自然だね」
佐藤も同意見のようで、神妙に頷いた。
「これから言うことは、そういう見方も出来ると言うだけで…気を悪くしないでほしいのだけど」
佐藤がフランと水戸の顔を交互に見る。
「君たちはアウェイに何かを見出され、生命を救われたのかもしれない」
「……!?」
フランと水戸は佐藤の言葉に息を飲んだ。それから何かを言おうと口を開くが、何も言うことが出来なかった。
そこでフランはハッと気付く。
(アウェイがあの場に明け方までいたのは何故?)
明け方にひとりであの場に晒されたとしたら、自分は本当に今日まで生きてこれたのだろうか?
場合によってはあの惨状に絶望して、自害をしていたとしても何らおかしくはない。アウェイへの復讐心が生きる支えになっていたのは、紛れもない事実であった。
それ以前に…あのタイミングでの地盤沈下も不自然極まりない。しかしそれでも、フランはその事実を認める訳にはいかなかった。
フランの瞳から一粒の涙が頬を伝った。それに気付いた佐藤が、慌てて言葉を取り繕う。
「いや、すまない!あまりにも君たちの気持ちを無視した言葉だった」
「いえ……言われてみれば、ひとつ気になることを思い出しました」
そのとき水戸が、難しい表情で口元に手を当てた。
「今まで忘れていましたが、アウェイと対峙した時に言われた言葉があります…『無事に辿り着くんだよ』と」
そう言って水戸は、真剣な眼差しで佐藤の顔を真っ直ぐに見た。
「あれは…どういう意味だったのでしょうか?」
そんなの今となっては、意味はひとつしかない。
しかし…誰もそれを言葉に出来なかった。
~~~
「先程佐藤さんは『ほとんど』と言ってましたが、それなら出てきた情報もあるのですか?」
ここで浅野が少し遠慮がちに口を開いた。
実のところ浅野と坂下には、話の内容に分からないことが多い。しかしこの異世界支援課にとって、重要な案件であると察していた。
「ああ、そうだった」
佐藤はコホンと咳払いをする。
「アウェイ本人の情報ではないのだけど…マイール村という場所を占領している魔物が、アウェイの右腕を名乗っているんだ」
「マイール村?」
初めて聞く地名に、亜衣が小首を傾げた。
「カムカ村よりまだ北にある、小さな村です」
何かを考え込むように、フランが目を細める。
「そう…ヨルド河より北部にあるため、今はまだ行くことが出来ない。しかし問題は別にある」
「アウェイの名前を出している理由…ですね」
佐藤の言葉にお菊が続いた。
「そうなんだ。そしてそれは、その名を知る僕たちに対して以外には考えられない」
佐藤が力強く断言する。
「とはいえ…現状ではどうにも出来ない。焦りは禁物だよ」
「ああ、それなら…」
そのとき坂下が、何かを思い出したように突然口を開いた。
「近々…イバキ市の奪還作戦が、軍の方であるかもしれません」
「皆んな、お疲れさま」
佐藤がいつもどおりの笑顔で出迎える。
「今朝の話の続きなんだけど…」
「今朝の話?」一同はキョトンとした。全員の表情を察した佐藤が「ああ!」と両手を打った。
「アウェイの話だけど」
それから改めて言い直す。
「あ!」
亜衣たちはやっと思い当たった。そうか、あれは今朝の話になるのか。
「何か分かりましたか?」
フランが緊張した面持ちで反応する。
「セーレーの情報を洗ってみたのだけど、ほとんど出てこないんだ」
佐藤は残念そうに肩をすくめた。
「目撃者が全員死んでいるのか、そもそも姿を現していないのか分からないが、その名を知っているのは今のところ僕たちだけなんだ」
「それって…」
お菊が考え込むように顔を伏せる。
「とても不自然だね」
佐藤も同意見のようで、神妙に頷いた。
「これから言うことは、そういう見方も出来ると言うだけで…気を悪くしないでほしいのだけど」
佐藤がフランと水戸の顔を交互に見る。
「君たちはアウェイに何かを見出され、生命を救われたのかもしれない」
「……!?」
フランと水戸は佐藤の言葉に息を飲んだ。それから何かを言おうと口を開くが、何も言うことが出来なかった。
そこでフランはハッと気付く。
(アウェイがあの場に明け方までいたのは何故?)
明け方にひとりであの場に晒されたとしたら、自分は本当に今日まで生きてこれたのだろうか?
場合によってはあの惨状に絶望して、自害をしていたとしても何らおかしくはない。アウェイへの復讐心が生きる支えになっていたのは、紛れもない事実であった。
それ以前に…あのタイミングでの地盤沈下も不自然極まりない。しかしそれでも、フランはその事実を認める訳にはいかなかった。
フランの瞳から一粒の涙が頬を伝った。それに気付いた佐藤が、慌てて言葉を取り繕う。
「いや、すまない!あまりにも君たちの気持ちを無視した言葉だった」
「いえ……言われてみれば、ひとつ気になることを思い出しました」
そのとき水戸が、難しい表情で口元に手を当てた。
「今まで忘れていましたが、アウェイと対峙した時に言われた言葉があります…『無事に辿り着くんだよ』と」
そう言って水戸は、真剣な眼差しで佐藤の顔を真っ直ぐに見た。
「あれは…どういう意味だったのでしょうか?」
そんなの今となっては、意味はひとつしかない。
しかし…誰もそれを言葉に出来なかった。
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「先程佐藤さんは『ほとんど』と言ってましたが、それなら出てきた情報もあるのですか?」
ここで浅野が少し遠慮がちに口を開いた。
実のところ浅野と坂下には、話の内容に分からないことが多い。しかしこの異世界支援課にとって、重要な案件であると察していた。
「ああ、そうだった」
佐藤はコホンと咳払いをする。
「アウェイ本人の情報ではないのだけど…マイール村という場所を占領している魔物が、アウェイの右腕を名乗っているんだ」
「マイール村?」
初めて聞く地名に、亜衣が小首を傾げた。
「カムカ村よりまだ北にある、小さな村です」
何かを考え込むように、フランが目を細める。
「そう…ヨルド河より北部にあるため、今はまだ行くことが出来ない。しかし問題は別にある」
「アウェイの名前を出している理由…ですね」
佐藤の言葉にお菊が続いた。
「そうなんだ。そしてそれは、その名を知る僕たちに対して以外には考えられない」
佐藤が力強く断言する。
「とはいえ…現状ではどうにも出来ない。焦りは禁物だよ」
「ああ、それなら…」
そのとき坂下が、何かを思い出したように突然口を開いた。
「近々…イバキ市の奪還作戦が、軍の方であるかもしれません」
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