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第3章
ヨーケバ城跡の悪魔 5
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ヨーケバ城跡を目指す荷馬車が、一番南を流れるキーツ川の橋を渡りしばらく進んだころ、おキクの座る横で丸くなっていたミーコが、おキクの肩にひょいと飛び乗った。
「魔物を検知。灰色狼5体です」
ミーコがおキクの耳元でこっそりと告げる。
「なかなか有能なネコだな」
ミーコの警告におキクが反応するより早く、ターニャがおキクを見ながら笑いかけた。
「え?」
おキクが驚いたように振り返る。
「馬車を停めてくれ。どうやらお出迎えのようだ」
言いながらターニャは、荷車の縁を乗り越えてサッと飛び降りた。
「まずはオレの戦い方を見せる。本番までにフォローの仕方を各自考えておくように」
ターニャは荷馬車に残るアイたちに、右手の親指を立てながら笑いかける。それから左足を前に足を前後に開くと、上半身を前に傾けた。
「瞬雷!」
声と同時に、ターニャの足下に魔法陣がパッと広がる。その瞬間、ターニャの両足からパリッと電流が迸った。
「剛雷!」
続いて発したターニャの声に、両手の手のひらの上に魔法陣が浮かびあがる。その魔法陣を握りこむように拳を握ると、ターニャの拳からバチバチと稲妻が弾けた。
「まばたき厳禁、よーく見とけよ!」
パリッと稲妻の余韻だけを残して、ターニャの姿が一瞬で消え去った。
~~~
荷馬車は再びヨーケバ城跡を目指して進み出す。
ターニャの戦いは、正直目で追えなかった。
視界の向こうに姿を現した5体の灰色狼の元に一瞬でたどり着くと、最初の一撃で1体の灰色狼の身体が消滅する。
残りの4体がターニャ目掛けて襲いかかるが、突然その姿を見失った。灰色狼は困惑したようにキョロキョロとするが、直後にもう1体が影と化す。
警戒した灰色狼は後方に飛び退いて散開する。しかしそのうちの1体は、着地をする暇もなく空中で弾けとんだ。
攻撃の瞬間だけ、まるでコマ送りのようにターニャの姿が現れる。
アイもおキクもフランも、援護はおろか、声を発する事さえ出来なかった。
残った2体の灰色狼が逃走を開始する。好戦的な魔物が逃走することなんて殆ど無い。魔物の本能を持ってしても、ターニャの存在は恐怖であった。
しかし2体の逃走先に既に回りこんでいたターニャによって、半ばカウンター気味に強烈な打撃を入れられる。
2体の灰色狼の身体は、なすすべも無く一瞬で消しとんだ。
(この人に…フォローなんているのだろうか?)
アイたちは口をポカンと開けたまま、只々呆然とその戦闘を眺めていた。
~~~
「あの、ターニャさんの職業は何ですか?」
再び荷馬車に揺られながら、アイがターニャに質問する。
「ああ、オレは魔拳士だ」
「魔拳士?」
「そーだなぁ、分かりやすく言うと、魔法で肉体を強化して戦う格闘家だな」
「え?じゃあ、武器は持ってないんですか?」
「オレの武器はコイツだけだ!」
そう言って拳を握りしめると、ターニャは口を開いて「ニカっ」と笑った。トレードマークの八重歯が可愛くのぞく。
「はー、カッコいい」
ターニャを見るアイの瞳がキラキラと輝いた。
「まあ、お前らに無茶をさせるつもりなんか全く無いけど、何があるか分かんねーから気持ちだけは切らすなよ」
「はい、師匠!」
アイがビシッと敬礼する。
「お、いいねー」
ターニャはアイのおデコをコツンと小突くと「期待してるぜ」と楽しそうに笑った。
前の席で一連のやりとりを聞いていたおキクとフランは、顔を見合わせるとやれやれと苦笑いした。
荷馬車の進むその先に、2本目の川「ウジル川」が姿を現す。
その川向こうにある小高い丘の上に、ヨーケバ城の廃墟が徐々に見え始めていた。
「魔物を検知。灰色狼5体です」
ミーコがおキクの耳元でこっそりと告げる。
「なかなか有能なネコだな」
ミーコの警告におキクが反応するより早く、ターニャがおキクを見ながら笑いかけた。
「え?」
おキクが驚いたように振り返る。
「馬車を停めてくれ。どうやらお出迎えのようだ」
言いながらターニャは、荷車の縁を乗り越えてサッと飛び降りた。
「まずはオレの戦い方を見せる。本番までにフォローの仕方を各自考えておくように」
ターニャは荷馬車に残るアイたちに、右手の親指を立てながら笑いかける。それから左足を前に足を前後に開くと、上半身を前に傾けた。
「瞬雷!」
声と同時に、ターニャの足下に魔法陣がパッと広がる。その瞬間、ターニャの両足からパリッと電流が迸った。
「剛雷!」
続いて発したターニャの声に、両手の手のひらの上に魔法陣が浮かびあがる。その魔法陣を握りこむように拳を握ると、ターニャの拳からバチバチと稲妻が弾けた。
「まばたき厳禁、よーく見とけよ!」
パリッと稲妻の余韻だけを残して、ターニャの姿が一瞬で消え去った。
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荷馬車は再びヨーケバ城跡を目指して進み出す。
ターニャの戦いは、正直目で追えなかった。
視界の向こうに姿を現した5体の灰色狼の元に一瞬でたどり着くと、最初の一撃で1体の灰色狼の身体が消滅する。
残りの4体がターニャ目掛けて襲いかかるが、突然その姿を見失った。灰色狼は困惑したようにキョロキョロとするが、直後にもう1体が影と化す。
警戒した灰色狼は後方に飛び退いて散開する。しかしそのうちの1体は、着地をする暇もなく空中で弾けとんだ。
攻撃の瞬間だけ、まるでコマ送りのようにターニャの姿が現れる。
アイもおキクもフランも、援護はおろか、声を発する事さえ出来なかった。
残った2体の灰色狼が逃走を開始する。好戦的な魔物が逃走することなんて殆ど無い。魔物の本能を持ってしても、ターニャの存在は恐怖であった。
しかし2体の逃走先に既に回りこんでいたターニャによって、半ばカウンター気味に強烈な打撃を入れられる。
2体の灰色狼の身体は、なすすべも無く一瞬で消しとんだ。
(この人に…フォローなんているのだろうか?)
アイたちは口をポカンと開けたまま、只々呆然とその戦闘を眺めていた。
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「あの、ターニャさんの職業は何ですか?」
再び荷馬車に揺られながら、アイがターニャに質問する。
「ああ、オレは魔拳士だ」
「魔拳士?」
「そーだなぁ、分かりやすく言うと、魔法で肉体を強化して戦う格闘家だな」
「え?じゃあ、武器は持ってないんですか?」
「オレの武器はコイツだけだ!」
そう言って拳を握りしめると、ターニャは口を開いて「ニカっ」と笑った。トレードマークの八重歯が可愛くのぞく。
「はー、カッコいい」
ターニャを見るアイの瞳がキラキラと輝いた。
「まあ、お前らに無茶をさせるつもりなんか全く無いけど、何があるか分かんねーから気持ちだけは切らすなよ」
「はい、師匠!」
アイがビシッと敬礼する。
「お、いいねー」
ターニャはアイのおデコをコツンと小突くと「期待してるぜ」と楽しそうに笑った。
前の席で一連のやりとりを聞いていたおキクとフランは、顔を見合わせるとやれやれと苦笑いした。
荷馬車の進むその先に、2本目の川「ウジル川」が姿を現す。
その川向こうにある小高い丘の上に、ヨーケバ城の廃墟が徐々に見え始めていた。
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