中2女子が夏休みに、異世界を救うことになりました!〜RPGにようこそ〜

さこゼロ

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第3章

ヨーケバ城跡の悪魔 6

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ヨーケバ城跡には城だったころの面影は殆どない。大きな石を積み上げた基礎の部分や石造りの厩舎などによって、かつての名残りが伺えるだけである。

ウジル川と並走しながら、荷馬車は次の橋を目指して進む。

ヨーケバ城跡のある小高い丘の麓に、目指す橋の姿が見え始めた。

「上空に魔物を検知。火炎鴉3体です」

ミーコは遠慮せずに声を出した。既にバレたのなら隠しても仕方がない。

火炎鴉。石撃鴉よりも一回り大きな黒い鳥の魔物である。

一同が空を見上げると、火炎鴉3体が同一円状でゆっくりと旋回を続けていた。

恐らくはこちらに気付いているが、現在は高みの見物でもしているのだろうか。一向に攻撃をしてくる気配はない。

ターニャの指示に従い、荷馬車を川辺の樹の下に停めると、全員で馬車を降りた。

「ひとつ、大事なことを言うぞ」

ターニャが真剣な表情で皆の顔を見回す。

「さすがのオレも空は飛べない」

「……え?」

アイたちは虚をつかれポカンとした。

「ま、ソコはなんとかするけどな」

そう言ってターニャは、八重歯を見せて「ニカッ」と笑った。

   ~~~

「カタパルトを使えば、空にも攻撃出来るよね?」

おキクがミーコに顔を向けた。

「空中でのカタパルトは移動に制約が付きます。相手が複数いる場合は賛成しかねます」

「う…」

ミーコの返答に、おキクは言葉に詰まる。

「攻撃きます!」

その直後に、ミーコが警告を発した。

3体の火炎鴉が1列に隊列を組んで降下を始める。そのまま一定距離まで近付くと、石撃鴉と同様に口から火炎弾を吐き出した。

フランが咄嗟に前に出て、盾で全弾受け止めるが、あまりの衝撃に後ろに尻もちをついてしまう。撃ち終えた火炎鴉は、再び上空に舞い上がっていった。

火炎鴉は綺麗な一列編隊を組んでいるため、全ての攻撃が一箇所に集中する。さらに石撃鴉よりも身体が大きいため、撃ち出される火炎弾も比例して大きくなる。フランは何とか全てを弾いたが、その衝撃は計り知れない。

そのうえ弾かれた火炎弾の炎は、すぐには消えずに燃え上がっている。この地が剥き出しの地面であったのが幸いした。緑豊かな草原であったなら、一度燃え移ると地獄と化していたに違いない。

「こんなの何発も受けきれない!」

フランの悲鳴のような声が痛々しく響く。

「いやいや、充分だ」

そのときターニャが、フランの頭を軽くポンポンとはたいた。

「なかなかいい盾だな。あれだけ受けて傷ひとつ付いてない」

そう言ってターニャは、足元の火炎弾のひとつを川の浅瀬に蹴り込んだ。それから火の消えた石飛礫を拾い上げる。

剛雷ガンボルト!」

ターニャが唱えると、握った両手に稲妻が迸った。続いて「瞬雷シエンボルト」を唱えると、両足に電流が駆け巡る。それから野球の投球フォームよろしく、オーバースローで石の飛礫を投げつけた。

電流を帯びた石弾は、空気を切り裂いて真っ直ぐに突き進み、躱す隙も与えずに1体の火炎鴉に命中する。「ゴアッ!」という呻き声とともに、その1体はキリ揉みしながら墜落を始めた。

次の瞬間、ターニャはグッと身を屈めると、稲妻の余韻を残し一瞬で消え去った。同時に墜落していた火炎鴉がバンと弾け飛ぶ。

しかし飛べないターニャは、直後に自由落下に突入した。

2体の火炎鴉は空中で大きく旋回すると、ターニャを攻撃目標に見定める。

「ま、そー来るわな」

ターニャは両手の手のひらを前に突き出すと、電撃を集中させた。すると両手の放電が激しくなり、バチバチと稲妻が迸る。

2体の火炎鴉がターニャに向けて火炎弾を撃ち出したその瞬間、両者の間にフランの盾が割って入り2発の火炎弾を弾き返した。

「ふーーん」

落下するターニャに合わせるように、フランの大盾が付いて来る。それから少し身体を捻って、共に戦うC級冒険者に視線を向けた。

…どうやら思っていたよりも、ずっと役に立ちそうだ。

   ~~~

「フラン」

アイが何かを思い付いたように、ターニャに右手を向けているフランに声をかけた。

「その盾でターニャさんの足場を作れない?」

「…え?」

フランは一瞬戸惑ったが、すぐに意図を理解する。

「乗せて動かすのは無理でも、ただ支えるだけなら出来るかも…」

言いながら、大盾をターニャの足下に移動させた。

   ~~~

「ははっ!」

ターニャは大盾によって突然出来た足場の意図を一瞬で理解した。

「前言撤回。お前らサイコーだ!」

ターニャは身を屈めると再び跳ねた。同時に旋回途中の火炎鴉の1体が弾け飛ぶ。ターニャは再び自由落下に入りながら、最後の1体に目を向けた。

「ここまでヤルとは、全然思ってなかったわ」

ターニャの瞳に映るのは、最後の1体を斬り裂いたおキクの姿であった。
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