中2女子が夏休みに、異世界を救うことになりました!〜RPGにようこそ〜

さこゼロ

文字の大きさ
98 / 98
第3章(続き)

斬岩刀を持つ漢 11

しおりを挟む
ターニャたちがカタン市の冒険者の詰所に戻ってきたのは、その日の夕方のことであった。

「エリサさん、ただいまー」

アイは受付卓にいるエリサを見つけると、元気よく手を振って挨拶をする。

「あ、皆さん、おかえりなさい」

エリサも手を振って応えると、頭を下げて皆を出迎えた。それからソーっとターニャの横に近付きコソッと耳打ちをする。

「…で、どうだったんですか?」

「ん?ああ…エリサさんの期待には応えれたんじゃないの?」

ターニャはゾンボルに目を向けながら、愉快そうにニヤッと笑う。

視線の先には、横一列に並ぶアイたちと向かい合うように立つゾンボルの姿があった。

「今日のところは某が身を引くでゴザル。もっと修練を積んでからリベンジするので、覚悟しとくでゴザル」

ゾンボルはとても清々しい笑顔を浮かべると、続いておキクの方に視線を移す。

「それとおキク殿の剣は、本当に素晴らしいでゴザル。ターニャ殿に頂いた『斬岩刀』の名は、一時的にその剣に預けとくでゴザル」

「……は?」

おキクはあんぐりと大口を開けて、思わず素っ頓狂な声をあげた。

「いつか必ず取り返しに来る故、それまでは遠慮なく名付けておくといいでゴザル」

ゾンボルはおキクに向けて右手の親指を立てると、右目を閉じてウインクを飛ばす。

その瞬間、つま先から頭の天辺まで、おキクの全身を悪寒がゾワゾワと駆け抜けた。

「い…いりません!」

おキクは全力で拒絶する。

「必ずリベンジするでゴザル」

しかしゾンボルは一切聞く耳もたず、「ハハハ」と高笑いながら爽やかに立ち去っていく。

「いや、だから、いりませんってー!」

おキクの悲痛な叫び声が、詰所のロビーに虚しく響き渡る。

「……効きすぎたみたいだな」

ターニャとエリサはお互い顔を見合わせると、愛想笑いを浮かべることしか出来なかった。

   ~~~

「あ、そういや、良い子にお留守番してたエリサさんにもお土産があるんだ」

ターニャが悪そうな笑顔をエリサに向ける。

「…え?」

「登録証をエリサさんに渡してあげな」

「あ、そうですね」

フランが思い出したように、登録証を取り出した。

(イヤな予感がする…)

登録証を受け取ったエリサは、これまでのアイたちの討伐記録に想いを馳せる。醜態を晒した覚えしかないのは確かだ。しかし…

エリサは「フフッ」と不敵に笑う。

「ターニャさん、私もアイさんたちと付き合い始めてそれなりになります。そう何度も思い通りにはいきませんよ」

「だとイイな」

ターニャは両手を後頭部で組んで、余裕の笑みをエリサに見せる。ターニャとエリサの視線が交差してバチバチと火花を散らした。

しかしエリサは15秒後、醜態を晒すことになる。

   ~~~

PT討伐数
「灰色狼」 4体
「甲殻猪」 4体
「蛭蝙蝠」20体
「死霊鎧」 1体
「装甲猪」 1体

エリサは開いた口が塞がらない。もはや何からツッコんだらいいのかも全く分からない。

そもそも、ひょいと出掛けて行った冒険者が遭遇していいレベルではない。イバキ市の奪還作戦と何ら遜色ないボリュームである。

そしてそれを、たったの5人(おそらく4人)で達成してきたのだ。

「気に入ってくれた?」

「え…ええ、とっても」

エリサは頬をひきつらせながら微笑んだ。

「ただ…」

それから全員の顔をゆっくりと見回す。

「何歩譲ったとしても、死霊鎧だけは納得が出来ません。このメンバーではどうやっても…」

「だろーな」

ターニャがエリサの言葉を遮った。

「オレも呆れるしかなかったからな。コイツらの反則っぷりには…」

ターニャの悟ったような表情を見て、トンデモナイ女の子たちと関わっているという事実を、エリサは改めて実感した。

   ~~~

「今回の報奨金は61万マールになります」

エリサがフランに登録証を返却しながら報告する。

内訳は、

灰色狼 5千マール、4体
甲殻猪 1万マール、4体
蛭蝙蝠 15千マール、20体
死霊鎧 5万マール、1体
装甲猪 20万マール、1体

その金額を聞いて、アイたち3人は表情からサーッと血の気が引いていった。

もはや登録証に入金されている合計額を知るのが怖くて仕方がない。

早くサトーさんから普通のアルバイト代を受け取って、日本の金銭感覚で安心したい。

アイたちは「これで帰る」とターニャとエリサに伝えると、フラフラとした足取りで歩き出した。

「あ、そーだ!」

そのときターニャが声を張り上げた。

「明日の朝もここで待ってるから、オレの用事にちょっと付き合ってくれ」

「あ、はい、分かりました」

振り返ったフランが小さく頷く。

「今日はゆっくり休めよ!」

ターニャは3人に手を振って、後ろ姿を見送った。

「まさか…」

3人が詰所を出た後で、エリサが怪訝な表情を浮かべる。

「問題あるか?」

「まだC級なんですよ?」

「頭が固いなー。これだけの戦果で、何の問題があるってんだよ」

   ~~~

今日の戦闘でおキクのスキルの熟練度が上昇した。

カタパルトを任意の位置に2個まで同時に設置出来るようになった。

それからおキクは月の雫ムーンティアを窓際にそっと置くと、モゾリと自分のベッドに潜り込んだ。
しおりを挟む
感想 13

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(13件)

柚木ゆず
2021.01.23 柚木ゆず

本日は、こちらの作品にもお邪魔をしております。

さこゼロ様が描かれるお話は、魅せ方、がお上手なのですよね(もちろんほかの部分もお上手なのですが)。
前にも書かせていただいたのですが。各話に見せ場があって、読者を飽きさせないんですよね。
ですので、読んでいて楽しい。次、また次のお話と、クリックしたくなるんですよね。

2021.01.23 さこゼロ

おお∑(゚Д゚)
いつも本当にありがとうございます(^^)
全然更新出来なくて、申し訳ないないです。柚木さまの為にも何とか続きを更新したいと思うのですが、待っててくれとか格好いい事も言えませんが、もう少しごめんなさいm(_ _)m

解除
柚木ゆず
2020.08.10 柚木ゆず

本日、読み返しをさせていただきました。

この頃のアイさんおキクさんを改めて見るのも(読むのも)、新鮮味があって面白いです。
自分がよく使う言葉、なのですが。よい作品は何度読んでもよい、ですね。

2020.08.10 さこゼロ

いつも本当にありがとうございます(^^)スランプなのか全く筆が進みません(T-T)いっそ、新作に飛び込んでみようか…とも考えております。
アイとおキクはケータたちとは違い成長の過程が必要となります。コレが難しい…段階的なイベントが思いつかないんですよね(-_-;)多分カメラアプリの二部作を書き上げたことで、若干燃え尽きた感があるのが原因かと思います。引退…はしたくないなー(^^)頑張らないと!!

解除
柚木ゆず
2020.08.05 柚木ゆず

本日、最新話まで拝読しました。

やっぱり、そうでしたか……。
最近、本当に多いんですよね(やはり、自分のPC環境が原因のようです)。
これまではパーツを変えて対応していたのですが、そろそろ限界なのかもしれません。

このたびは本当に、ご迷惑をおかけしました。



2020.08.05 さこゼロ

いつもありがとうございます(^^)高い買い物なので、安易に買えば…とは言えませんが、不具合が頻発するなら替え時なのかも知れませんね。英断を楽しみにしております(^^)

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。