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1 幼なじみ
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「映画のチケットが今日までだから、もし良かったら一緒に行かない?」
高校の同級生で幼なじみのサトミが、玄関の前での別れ際にそう声を出した。
カズヤはドアノブから手を離し、驚いたように振り返る。
紺色セーラーカラーの白い長袖セーラー服に、同じく紺色のスカート姿の幼なじみが、俯いた仕種で2枚のチケットをヒラヒラとさせていた。
艶のあるセミロングの黒髪が覆い被さり、その奥の表情まではハッキリとは確認出来ない。
「何の映画?」
黒の学ラン姿のカズヤが、少し興味深そうに瞳を輝かせた。
「あの、えと…恋愛系」
「え…恋愛⁉︎」
斜向かいの二人の家は、親同士が仲良くなった事もあり、家族ぐるみの付き合いがもう長い。
映画も何度か二人で観た事はあるが、恋愛系とは初めての提案だ。
しかしさすがのカズヤも、そのお誘いの意図には何となく察しが付き……そしてそれは、自分も長らく存分に望んでいた事でもある。
「まーせっかくだし、別に行ってやっても…」
「おいおい、あんまり玄関先でイチャつくなよな」
そのとき玄関が勢いよく開き、灰色パーカーにジーンズ姿の大柄な男が現れた。
「兄ちゃんっ⁉︎」
現在大学4回生の、歳の離れたカズヤの兄だ。
「おかえり、カズヤ。サトミちゃんも」
「あ、はい。こんにちは、マサヤさん」
昔は一緒に遊んだりもしたが、歳が離れている事もあり、次第に疎遠になっていった。
今ではこの大柄な男性を、サトミは少し苦手に感じていた。
「お、その映画、最近話題のヤツじゃないか」
サトミの持つチケットに気付いたマサヤが、興味深そうに覗き込む。
「何でもカップルで観るのがオススメだとか…お前らもしかして」
「ち、違う! そんなんじゃない!」
「でも、観に行くんだろ?」
「別に行かねーよ、じゃーな」
そう言ってカズヤは、真っ赤な顔で玄関の中へと入っていった。
「あらら帰っちゃったよ、素直じゃねーなー」
マサヤは困ったように肩を竦めると、サトミの方に顔を向ける。
「ゴメンな、サトミちゃん。アイツまだまだお子様でさ」
「いえ、良いんです。突然誘った私も悪かったですから」
「でも、せっかくのチケットが勿体ないよな? 俺で良かったら一緒に行くよ」
「あ、お気になさらないでください。元々捨てるつもりでしたから」
「まーまーそんな事言わずにさー。あ、大きい荷物はウチで預かるから、もーこのまま行こ」
マサヤは小柄なサトミの肩を抱き寄せると、学生鞄を奪い取って玄関の中に放り込む。
「マ、マサヤさん。困ります、私…」
「まーまー、いーからいーから」
そうして強引に、駅の方へと歩き始めた。
高校の同級生で幼なじみのサトミが、玄関の前での別れ際にそう声を出した。
カズヤはドアノブから手を離し、驚いたように振り返る。
紺色セーラーカラーの白い長袖セーラー服に、同じく紺色のスカート姿の幼なじみが、俯いた仕種で2枚のチケットをヒラヒラとさせていた。
艶のあるセミロングの黒髪が覆い被さり、その奥の表情まではハッキリとは確認出来ない。
「何の映画?」
黒の学ラン姿のカズヤが、少し興味深そうに瞳を輝かせた。
「あの、えと…恋愛系」
「え…恋愛⁉︎」
斜向かいの二人の家は、親同士が仲良くなった事もあり、家族ぐるみの付き合いがもう長い。
映画も何度か二人で観た事はあるが、恋愛系とは初めての提案だ。
しかしさすがのカズヤも、そのお誘いの意図には何となく察しが付き……そしてそれは、自分も長らく存分に望んでいた事でもある。
「まーせっかくだし、別に行ってやっても…」
「おいおい、あんまり玄関先でイチャつくなよな」
そのとき玄関が勢いよく開き、灰色パーカーにジーンズ姿の大柄な男が現れた。
「兄ちゃんっ⁉︎」
現在大学4回生の、歳の離れたカズヤの兄だ。
「おかえり、カズヤ。サトミちゃんも」
「あ、はい。こんにちは、マサヤさん」
昔は一緒に遊んだりもしたが、歳が離れている事もあり、次第に疎遠になっていった。
今ではこの大柄な男性を、サトミは少し苦手に感じていた。
「お、その映画、最近話題のヤツじゃないか」
サトミの持つチケットに気付いたマサヤが、興味深そうに覗き込む。
「何でもカップルで観るのがオススメだとか…お前らもしかして」
「ち、違う! そんなんじゃない!」
「でも、観に行くんだろ?」
「別に行かねーよ、じゃーな」
そう言ってカズヤは、真っ赤な顔で玄関の中へと入っていった。
「あらら帰っちゃったよ、素直じゃねーなー」
マサヤは困ったように肩を竦めると、サトミの方に顔を向ける。
「ゴメンな、サトミちゃん。アイツまだまだお子様でさ」
「いえ、良いんです。突然誘った私も悪かったですから」
「でも、せっかくのチケットが勿体ないよな? 俺で良かったら一緒に行くよ」
「あ、お気になさらないでください。元々捨てるつもりでしたから」
「まーまーそんな事言わずにさー。あ、大きい荷物はウチで預かるから、もーこのまま行こ」
マサヤは小柄なサトミの肩を抱き寄せると、学生鞄を奪い取って玄関の中に放り込む。
「マ、マサヤさん。困ります、私…」
「まーまー、いーからいーから」
そうして強引に、駅の方へと歩き始めた。
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