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第2章 リース領へ

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ボクはヘッドスライディングで飛び込むと、少女を胸元に抱きよせた。轟音と共にオーガの棍棒が地面を打ち付ける。

うおーー!ギリギリセーーフ。

なんとか少女をオーガの攻撃から助け出すことに成功した。

ボクは身を起こすと、オーガの姿を確認する。すると、オーガの棍棒が打ち付けた場所と、さっきまで少女がいた場所が若干ズレていることに気付く。

あ…あれ?もしかして、ギリギリアウトだったんじゃない?

「こらー、ケータ!無茶なことはヤメテよ!」

「ホントだよ!ハルカの結界が無かったらどうなってたか…」

ハハ…、やっぱりアウトだったみたい。

しかし流石はレアモノのスキルだな。防御力も半端ない。あんなゴツい棍棒を弾き返すとは。

「だ、誰…?」

その時、我に返った少女がボクに聞いてきた。

「ボクはケータ…」

「ケータくん、危ない!」

サトコの声に、ボクは咄嗟に少女をお姫さま抱っこで抱きかかえると、その場を離脱する。

その瞬間、オーガの棍棒が轟音と共に地面を再び打ち付けた。衝撃で地面が少し陥没する。こちらの方にも土のカケラが飛んでくるが、ハルカの結界に弾かれた。

「ちょっと掴まってて!」

「う、うん」

少女はボクの首筋に両腕を回すと、ボクにギュッとしがみついた。それを確認してから、ボクは一気に加速する。

「きゃっ!」

急な加速に少女は小さな悲鳴をあげた。

「ハルカ、この子を頼む!」

「任せて」

ボクは少女をハルカに預けると、サトコの方に顔を向けた。

「サトコ、カリューでオーガの気を少しの間そらせて!」

カリューのサイズは10分の1のままだが、負けることはないだろう。

「分かった」

サトコはスマホの「呼出」アイコンをタップした。

「カリュー、お願い!」

「任せておけ」

なんと、いちいち説明しなくても意思疎通が出来てる!やっぱりスゴいスキルだな…

カリューはオーガの周囲を飛び廻り、ブレスをオーガに噴きつける。自分の3倍近い大きさのオーガを相手にカリューは圧倒していた。時間をかければカリューが勝つだろうが、任せっきりには出来ない。

ボクは倒れた兵士のそばに落ちていた槍を、スマホで写真に撮った。長さが1.5メートル程あり、拾い上げると少し重いが、今のボクなら投げられる。

ボクは投げ槍の要領でその槍を投げつけた。

「カリュー、躱せ!」

叫ぶと同時に、ボクは10倍アイコンをタップした。カリューは瞬時に上空に避難する。

その瞬間、投げた槍は太さ1メートル、長さ15メートル程の巨大な槍と化し、その質量でオーガを貫く。そのままオーガを連れて数十メートル飛び、槍は地面に突き刺さった。

槍に貫かれたままオーガは暫く痙攣していたが、やがて力尽き黒い煙となって霧散した。それから紅い結晶が地面をコロンと転がった。

   ~~~

ボクたちは助けた少女を手伝って、散乱していた兵士たちの遺体を綺麗に並べ直した。それから祈りを捧げる少女に倣って、ボクらも黙祷した。

「間に合わなくて、ごめん」

ボクは少女に謝った。

「ううん、お兄ちゃんのせいじゃないよ」

少女はボクに向き直った。

「私、ルー。助けてくれてありがとう」

「ルーちゃんか、ボクは…」

「さっき聞いたよ。ケータお兄ちゃん!」

ルーは頬を赤く染めると、大きな青い瞳でボクを見上げた。

え…?お兄ちゃん?ボクは目をパチクリとさせた。

「ちちち、ちょっと!なに勝手に『お兄ちゃん』とか呼んでるのよ!」

ハルカが焦ったように、ルーに向けて突然吠えた。
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